東京・虎ノ門にある「ホテルオークラ東京」は、前回の東京オリンピックの2年前の昭和37年(1962年)に開業し、最近では国賓として来日したアメリカのオバマ大統領も宿泊するなど、「帝国ホテル」、「ホテルニューオータニ」とともに国内ホテルの「御三家」と呼ばれてきました。
しかし、オープンから半世紀以上がたち建物の老朽化が進んだことや2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催で宿泊客の増加が見込まれることから、ホテルは本館部分を建て替えることを決めました。隣接した別館については本館にあったレストランやバーなどの施設の一部を移したうえで営業を続けるということです。
本館の休業を前にホテルには宿泊客だけでなく大勢の家族連れが訪れ、ホテルを象徴するつり下げ式の照明をバックにロビーで記念撮影するなどして別れを惜しんでいました。本館はこのあと、31日午後11時に休業となり、来月始まる建て替え工事を経て、4年後の2019年に2棟のホテルとして新たにオープンする計画だということです。
本館を巡っては、文化的な価値も高いなどとして海外のメディアなどから取り壊しの見直しを求める指摘も出されていました。
オークラによりますと、本館は「日本の“伝統美”をいかにして現代の国際的なホテルに再現するか」を意識して建てられました。外壁には瓦と瓦の間の隙間に白いタイルを貼り込み、城壁のような「なまこ壁」を模した造りとなっています。また、ロビーには、古墳時代の飾り玉をモチーフにしたつり下げ式の照明を設けたほか、テーブルといすを梅の花に見立てて配置して、日本らしさを強調しています。
日本のモダニズム建築を代表する建物を取り壊すことに対して、外国から、文化的な価値が高いなどとして計画の見直しを求める声もありました。このうち、イギリスの雑誌がインターネット上で取り壊しに反対する署名を集めたほか、近代建築の保存に取り組む国際団体の日本支部が建て替え計画の見直しを求める要望書をホテル側に提出しました。
これに対しホテルオークラは、本館のデザインを設計した故・谷口吉郎氏の長男を建て替えの共同設計者に起用し、「これまでのものも再び利用できるものは利用し、新しい本館でも日本の伝統美を継承したい」と説明しています。
発表によりますと、11階建ての本館を取り壊し、その跡地に41階建てと16階建ての2つのホテルを建設する計画です。客室の数は今の408室を、合わせて510室に増やすほか、広さについても、今の標準的なおよそ30平方メートルを50〜60平方メートルほどに拡大するということです。
建て替え工事は来月中に始め、新しい本館の完成と開業は4年後の2019年になる計画です。