FRBは17日まで2日間、金融政策を決める公開市場委員会を開き、終了後、声明を発表しました。
声明でFRBは、アメリカの景気は緩やかに拡大していると指摘しました。
一方で、中国経済の減速をきっかけにした世界的な株価の急落などを踏まえ、「最近の世界経済と金融市場の動向が景気をいくぶん下押しする可能性がある」とも指摘しました。そして、焦点のゼロ金利政策については今回は解除せずに利上げを見送り、「雇用がもう少し改善し物価が中期的に上昇していくと確信できれば利上げする」というこれまでの方針を改めて強調しました。
今回の決定にあたっては、10人の会合参加者のうち9人が賛成し、1人は反対して利上げを求めたということです。
アメリカ経済は、先月失業率が5.1%となり、FRBが目標としていた水準まで改善するなど、利上げを始める環境が整ったという見方も出ていました。
しかし、物価上昇率はまだFRBの目標を下回っているほか、中国経済の減速や金融市場の不安定な動きが続いていて、FRBは、今回は利上げを見送り、金融市場や海外経済の動向も見極めたほうがよいと判断したものとみられます。
FRBのイエレン議長は会合終了後、会見を行い、「今回、利上げの可能性を議論したが、海外経済の不透明感が高まり、今後の物価の見通しも予想よりやや弱くなっている。会合では、もう少し利上げの根拠がそろうのを待つべきだと判断した」と述べました。また、「中国をはじめ新興国の経済成長の見通しに懸念が高まり、金融市場の変動が大きくなっている」と指摘しました。
一方、ゼロ金利政策の解除の時期について、イエレン議長は「会合参加者の多くは、引き続き年内の利上げが適切だと思っている。10月の会合ももちろん含まれる」と述べ、来月下旬の次の会合も含め、利上げの是非を検討していく意向を示しました。
Federal Open Market Committee statement: http://go.usa.gov/3eGpe #FOMC
FRB: Press Release--Federal Reserve issues FOMC statement--September 17, 2015
Information received since the Federal Open Market Committee met in July suggests that economic activity is expanding at a moderate pace. Household spending and business fixed investment have been increasing moderately, and the housing sector has improved further; however, net exports have been soft. The labor market continued to improve, with solid job gains and declining unemployment. On balance, labor market indicators show that underutilization of labor resources has diminished since early this year. Inflation has continued to run below the Committee's longer-run objective, partly reflecting declines in energy prices and in prices of non-energy imports. Market-based measures of inflation compensation moved lower; survey-based measures of longer-term inflation expectations have remained stable.
Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. Recent global economic and financial developments may restrain economic activity somewhat and are likely to put further downward pressure on inflation in the near term. Nonetheless, the Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic activity will expand at a moderate pace, with labor market indicators continuing to move toward levels the Committee judges consistent with its dual mandate. The Committee continues to see the risks to the outlook for economic activity and the labor market as nearly balanced but is monitoring developments abroad. Inflation is anticipated to remain near its recent low level in the near term but the Committee expects inflation to rise gradually toward 2 percent over the medium term as the labor market improves further and the transitory effects of declines in energy and import prices dissipate. The Committee continues to monitor inflation developments closely.
To support continued progress toward maximum employment and price stability, the Committee today reaffirmed its view that the current 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate remains appropriate. In determining how long to maintain this target range, the Committee will assess progress--both realized and expected--toward its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments. The Committee anticipates that it will be appropriate to raise the target range for the federal funds rate when it has seen some further improvement in the labor market and is reasonably confident that inflation will move back to its 2 percent objective over the medium term.
The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction. This policy, by keeping the Committee's holdings of longer-term securities at sizable levels, should help maintain accommodative financial conditions.
When the Committee decides to begin to remove policy accommodation, it will take a balanced approach consistent with its longer-run goals of maximum employment and inflation of 2 percent. The Committee currently anticipates that, even after employment and inflation are near mandate-consistent levels, economic conditions may, for some time, warrant keeping the target federal funds rate below levels the Committee views as normal in the longer run.
Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Charles L. Evans; Stanley Fischer; Dennis P. Lockhart; Jerome H. Powell; Daniel K. Tarullo; and John C. Williams. Voting against the action was Jeffrey M. Lacker, who preferred to raise the target range for the federal funds rate by 25 basis points at this meeting.
7月の連邦公開市場委員会(FOMC)以降に入手した情報は、経済活動が緩やかなペース(moderate pace)で拡大していることを示唆している。家計支出と企業の設備投資は緩やかに増加し、住宅部門は一段と改善した(has improved further)。しかし、純輸出は軟調だった。労働市場は、堅調な就業者数の増加と失業率の低下を伴って、引き続き改善した。総じて、労働市場の指標は、労働資源の活用不足が今年初め以降に減少したことを示している。インフレ率はエネルギー価格とエネルギー以外の輸入価格の下落を部分的に反映して、委員会の長期的な目標を下回り続けた(has continued to run below)。将来のインフレを示す市場ベースの指標はさらに低くなり、調査に基づいた長期的なインフレ期待の指標は引き続き安定している。
委員会は法律上与えられた責務に従って、雇用最大化と物価安定の促進を目指す。最近の世界経済や金融の動向が経済活動をいくらか抑制する恐れがあり(may restrain economic activity somewhat)、短期的にインフレ率にさらなる下振れ圧力を与える可能性がある(put further downward pressure on inflation in the near term)。それでもなお、委員会は適切な政策緩和によって経済活動が緩やかなペースで拡大し、労働市場の指標は委員会が二大責務と合致していると判断する状態に引き続き向うと予測している。委員会は経済活動の見通しと労働市場にとってのリスクはほぼ安定していると引き続きみているものの、海外情勢は注視している(but is monitoring developments abroad)。インフレ率は短期的には最近の低い水準近くにとどまると予想されるが、委員会は、労働市場がさらに改善し、エネルギーや輸入価格の下落による一時的な影響が消えれば、インフレ率は中期的に徐々に2%に向かって上昇すると予測する。委員会は引き続きインフレ率の動向を監視する。
最大雇用と物価安定に向けて続く進展を支えるため、委員会は本日、現行のゼロから0.25%というフェデラルファンド(FF)金利の目標誘導レンジが適切であるとの見解を再確認した。この目標誘導レンジをどのくらいの期間維持するか決めるに当たって、委員会は最大雇用とインフレ率2%の目標に向けた進展について実績と予測の両方を評価する。この評価は、労働市場の状況に関する指標、インフレ圧力やインフレ期待の指標、金融動向や国際情勢の解釈を含む幅広い情報を考慮する。委員会は、労働市場のさらにいくらかの改善を確認し(has seen some further improvement)、中期的にインフレ率が2%目標に向かって戻るとの合理的な確信が持てた(is reasonably confident)時に、FF金利の目標誘導レンジを引き上げることが適切になると予測する。
委員会は保有する政府機関債とエージェンシー発行モーゲージ債(MBS)の償還元本をMBSに再投資し、米国債の償還金を新発債に再投資する既存の政策を維持する。委員会による長期証券の保有を相当な水準で維持するこの政策は、金融環境を緩和的に保つ上で役立つはずだ。
委員会が政策緩和を解除すると決める時には、最大雇用と2%のインフレという長期目標と合致するバランスの取れた方策を取る。委員会は、雇用とインフレが責務に合致する水準に近づいた後も、経済状況は当面、FF金利の誘導目標を委員会が長期的に正常とみなす水準を下回るレベルに維持することを正当化すると現在想定している。
政策決定の投票で賛成したのは、ジャネット・イエレン委員長、ウィリアム・ダドリー副委員長、ラエル・ブレイナード、チャールズ・エバンス、スタンレー・フィッシャー、デニス・ロックハート、ジェローム・パウエル、ダニエル・タルーロとジョン・ウィリアムズの各委員。反対はジェフリー・ラッカー委員で、今回の会合でFF金利の目標誘導レンジを25ベーシスポイント引き上げることが好ましいと考えた。
Economic Projections of Federal Reserve Board Members and Federal Reserve Bank Presidents: http://go.usa.gov/3eGdh #FOMC
Now available: transcript of Chair #Yellen's opening statement from the #FOMC press conference (PDF): http://go.usa.gov/3eA4R
Now available: video of today's #FOMC press conference: https://youtu.be/Z5-Jc3l42-g
<引き締めを待ち過ぎることは回避>
インフレ率が2%に戻るまで待った場合、そのころまでには失業率がわれわれが自然な水準と見なす水準を下回っていると思われるが、そうした状況になって初めて非常に緩和的な金融政策の引き揚げを開始した場合、(インフレ率は)われわれの目標である2%を大幅に超えて上昇する公算が大きい。
そしてわれわれは、実体経済を阻害する恐れのあるような方法で金融政策の引き締めを行わざるを得なくなる可能性がある。これは望ましい金融政策運営ではない。
<金融市場の混乱>
FRBは市場の上げ下げに反応すべきではなく、そうすることは明らかにわれわれの政策ではない。だが金融市場で著しい動向が発生すれば、その原因を追究することはわれわれの義務である。もちろん、確実とは言えないが、世界経済見通しをめぐる懸念がこうした金融市場の動向を招いているとわれわれは考えている。
これらの動向により、世界経済見通し、そしてそれがわれわれに与える影響を見極める必要が生じるため、われわれにも関係してくる。
また前回会合からこれまで、金融状況の引き締まりがある程度見られた。株価の調整、ドルの小幅上昇、リスクスプレッドの高まりなどは、金融状況の一定の引き締まりを反映している。
<FOMCは利上げを検討>
景気後退(リセッション)からの回復はこれまでのところ著しい進展を見せており、現時点で利上げに踏み切る根拠になるほど国内消費も十分に底堅くなっている。
今回の会合で、こうした可能性について討議した。ただ、海外で先行き不透明感が高まっていること、さらに、インフレの今後の見通しがやや軟調であることを踏まえ、労働市場のさらに幾分の改善など、インフレ率が中期的に2%に上昇していくとのより大きな確信を得るための確証が出てくるまで待つことが適切となると、FOMCは判断した。
<金融政策決定>
グレートリセッションからの回復はこれまで十分前進しているほか、国内支出は十分堅調のようであり、現時点で利上げに向けた議論をすることは可能だ。
われわれは会合でこの可能性を議論した。しかし、海外の不透明感の高まりや若干軟調なインフレ見通しを考慮すると、当委員会はインフレ率が中期的に2%に上昇するとの自信を強めるような、労働市場のさらに幾分の改善を含むさらなる証拠を待つのが適切だと判断した。
現在、私はこれら最近の情勢が示す意味合いを誇張したくはない。それはわれわれの見通しを根本的に変えるものではない。
経済は良好に推移しており、今後もそうした状況が続くとわれわれはみている。
これまでに私が指摘しているように、フェデラルファンド(FF)金利の最初の引き上げの時期は、経済見通しに関する今後の情報の意味合いを当委員会がどのように評価するか次第となる。はっきり言えば、われわれの決定は何らかの特定のデータ、もしくは金融市場の日々の動きに依存するものとはならないだろう。われわれの決定は、幅広い経済・金融指標や、われわれの目標に向けた実質的かつ予想される進展に関して累積された意味合いをどう評価するか次第となるだろう。
<不確実性>
もちろん常に不確実性は存在する。そうした不確実性が完全に払しょくされることは期待できない。
しかし、これまでの情勢や金融市場への影響を考慮すると、米国に及ぼしそうな影響について評価する時間がもう少しほしい。私がこれまでに言及したように、インフレ見通しはやや軟化した。さらに幾分の情勢の進展、すなわち、原油価格の下落やドルの一段高が短期的なインフレに幾分下押し圧力を与えているという状況がある。
われわれは現在、ドルや原油価格のこれまでの動きといった、これら一段の効果は一時的なものになると予想している。しかし、インフレに対する下押し圧力が若干存在する。われわれはさらに幾分の進展を確認したい。重要なのはこの中には、インフレ率が中期的に2%に回帰するとのわれわれの自信を強めるような、労働市場のさらなる改善が含まれるだろうということだ。
<10月利上げの可能性>
これまでも言ってきたとおり、毎回の会合が生きた情報を討議する場であり、FRBは毎回の会合でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を変更する決定を行うことができる。このことは10月の会合にも当てはまる。
これまでも強調してきたことだが、周知のとおり、金利変更の決定を行う時は、記者会見を行う。
10月利上げの可能性は残っている。
<労働市場の緩み>
われわれは、長期失業率の予想中央値に近付いているが、少なくとも私自身の判断としては、とりわけ不本意ながら、パートタイムに従事する労働者の高止まりや、失業率は少なくとも一定度、労働市場の緩みを過小評価していると労働参加率が示唆している点において、一段のスラック(需給の緩み)があると考える。
われわれは近付いている。労働市場は改善している。以前も申し上げたが、金融政策の効果波及には時間差が生じるため、両方の目標を完全に達成するまで引き締めプロセスの開始を待ちたくない。
<利上げの時期>
想定される全体の金利の道筋に比べると、経済にとって、利上げ開始の特定の時期の重要性ははるかに低いということを再度強調したい。緩和解除を開始した後も、経済は緩やかなペースでの利上げのみを正当化する状況で推移すると、われわれは引き続き想定している。
<国内経済>
ご存知のように、私が強調したいのは国内情勢は堅調だということだ。国内需要はしっかりとしたペースで伸びており、労働市場は改善し続けている。もちろん、こうした情勢が続くとのわれわれの期待を確認するために、今後の情報を注視する。そしてもちろん、世界的な金融・経済情勢も注視する。
<国際、市場情勢>
海外情勢の見通しは最近一段と不透明性を増しており、中国やその他の新興国の成長をめぐる懸念が出ていることで、金融市場のボラティリティーが著しく高まった。
7月会合以降、株価下落、ドル高の一段の進展、リスクスプレッドの拡大などにより、全般的な金融情勢が幾分引き締まった。
米国と諸外国の経済・金融上のかかわり合いが相互に大きいことを踏まえると、海外情勢を注視する必要がある。
<インフレ>
インフレ率は、エネルギー価格や輸入価格の下落を背景に、2%の目標を引き続き下回って推移している。
私と同僚は、これらの要因が一時的なものだと引き続き予想している。
だが最近、原油安やドル高が一段と進んだことは、こうした要因が完全に払しょくされるのに、さらにやや時間がかかることを示している。
<成長および労働市場>
先のドル高や外需の減退を反映し、純輸出は上期の純国内総生産(GDP)の伸びの著しい足かせとなった。純輸出による下押しは当面続く公算が大きいが、FOMCは全般的に緩やかなGDPの伸びになると引き続き予想している。
労働市場は今年これまで、最大雇用の目標に向かって一段の前進を見せた。過去3カ月の雇用の伸びは月平均22万人増だ。8月の失業率は5.1%と、6月会合時点で入手した最新の指標から0.4%ポイント低下した。ただ失業率の低下は、労働参加率の低下も伴った。
<米インフレに対する世界情勢の影響>
エネルギー価格や輸入価格の下落を一部反映し、インフレはわれわれの長期目標を下回り続けている。こうした要素によるインフレに対する下向き圧力は次第に薄れていくと引き続き予想しているが、このところの世界的な経済・金融情勢によりインフレに対する下向き圧力が短期的に増大する可能性がある。
これにより米国の活動が幾分抑制される可能性があるが、現時点ではFOMCが米経済見通しを大幅に変えるには至っていない。
<経済見通し>
失業率は低下し、労働市場の全般的な状況も引き続き改善している。だがインフレ率はエネルギー価格や輸入価格の下落を背景に、長期的な目標を引き続き下回って推移している。
これらの要因によるインフレ下押しの影響は、時間とともに弱まるとの予想を依然変えていないが、最近の世界経済、金融動向は、インフレに目先、一段の下向き圧力を加える公算が大きい。こうした状況が米経済の活動も幾分抑制するかもしれないが、現時点ではFOMCの米経済見通しを著しく変えるまでには至っていない。
<住宅市場>
住宅市場のさらなる改善を想定している。住宅市場は依然としてかなり落ち込んでいるが、二世帯が同居するケースはまだ多く、そこに住宅需要はあるはずで、雇用市場が上向き、所得の伸びが改善するなかで住宅需要は顕在化するだろう。
われわれは何を予想するか。住宅は現在、経済の非常に小さなセクターだ。米国の現在進行中の景気回復に関する私自身の見通しでは、住宅は経済の主要なけん引役ではない。住宅は補佐役を担う一方、十分な投資支出見通しに支えられる消費支出が主要なけん引役だ。ただ、私は住宅市場は上向くと引き続き予想している。
われわれの予想通りに物事が推移する場合、短期金利が時間をかけて非常に緩やかに一定程度上昇するとわれわれが想定しており、それがすでに長期金利に織り込まれていることを覚えていてほしい。
<バランスシート>
われわれの正常化の原則は、FF金利の引き上げを開始するまでは投資の削減も廃止も行わないことを示している。原則はまた、正常化のタイミングは経済および金融の状況とそれらに対するわれわれの評価で決まるとしている。
このガイダンスは引き続き機能している。われわれは正常化のプロセスが始まるまで、バランスシートの縮小開始を待ってきたことは確かだ。
われわれが利上げを先送りすれば、おそらくプロセスの開始も遅れることになる。ただ、われわれは決まった時期を示していない。われわれは適切なタイミングについて協議を継続中で、まだ決定を下していない。
<政府機関閉鎖の可能性>
われわれの判断にはまったく影響していない。政府運営に必要な予算案の承認や債務上限への対応は議会の仕事だ。米経済は回復を続けており、議会がその回復を危うくする行動を取るのを目にすることになれば、非常に残念だ。
<2012年の情報漏えい>
下院金融委員会と緊密に連携している。
#FRB #イエレン #利上げ