アングル:大荒れ相場に「制御不能」の恐怖、FRB犯人説も | Reuters
コモディティー(商品)主導で起きた今週の株安は、世界の規制当局に対する新たな警鐘だ。市場はこの1年、断続的に動揺が続いているが、次なるショックは規制当局の手に余るほど深刻なものかもしれない。
2015年も残すところ3カ月となったが、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズによると、今年の市場の変動幅は既に、世界的な金融危機が吹き荒れた2008年以来の大きさとなった。
英イングランド銀行と欧州連合(EU)は先週、それぞれ金融安定化報告を公表したが、歴史的な低金利が市場の変動と歪みを助長していると懸念する国際決済銀行(BIS)に同調する内容だった。
この懸念は早くも、週明け28日に現実のものとなった。この日は、中国国家統計局が発表した8月の中国の工業部門企業利益が前年同月比8.8%減少したことをきっかけに、株式市場と商品が世界的に急落。鉱業優良株のグレンコア(GLEN.L)は30%もの下落率を記録した。
中央銀行は現在、一種のジレンマに陥っている。世界の中銀は2008年以降、金融の安定性を維持するためにより大きな責任を負うようになったが、現在、市場を不安定にさせている最大の要因は、投資家が利上げの可能性にあまりにも神経質になっていることだからだ。
同時に、新たな規制により、銀行は資本増強やリスクテーク抑制、マーケットメーク業務縮小を迫られており、その結果、債券市場の流動性が低下し相場の振幅が大きくなりやすくなるという弊害が出ている。
昨年10月は米国債、今年1月はスイスフラン、4月は独連邦債がマーケットイベントのいわば震源であり、その影響は世界中に広がったが、相場の急変動は1日か2日というごく短期的なものに終わった。
8月24日には再び、中国不安を背景に世界の市場は大荒れとなり、米国株式市場では、ダウ工業株30種指数がわずか数分の間に1000ドルもの下げを演じたが、これもまた長続きはしなかった。
<長期的なショックのリスク>
しかし、次の揺れがより長期的に続いたら、どうなるだろうか。
ベター・マーケッツのシニアフェローで、英中銀の金融政策委員会の元委員であるロバート・ジェンキンズ氏は「問題は市場が上がるのか、下がるのかではない。金融システムがどの程度そうした変動を吸収し、傷口をなめ、回復できるかということが重要」と指摘する。
「(金融危機の引き金となった)リーマン・ショックから7年たった今、銀行システムはなお過剰なリバレッジをかけており、中銀の政策は引き続き、預金者に身の丈以上のリスクを取らせている」と述べた。
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズが主要株価・債券指数のリターンを調べたところ、変動が極めて大きい取引日の日数は今年は42日で、14年の11日から急増。08年は94日だった。
変動幅は外為市場ではさらに大きく、なかでも一部の新興国通貨は史上例がないほどの乱高下を記録した。例えばブレジルレアルは2カ月間で価値の4分の1を失った後、9月24日には6%急伸した。
ステート・ストリートの調査によると、外為市場で振れが極めて大きかった取引日は今年は現時点までで73日だった。その日数は、2014年の倍以上となり、2008年に記録した104日に迫っている。
<FRBが問題の一因との見方も>
米連邦準備理事会(FRB)は今月、利上げを見送ることにより市場のボラティリティーを一段と高めることになった。
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(ロンドン)のグローバルマクロ戦略責任者、マイケル・メトカーフ氏は「FRBはボラティリティーの大きさに困惑したのではないか」と話している。
FRBの行動を予測するのは困難になっており、専門家の多くは、FRBは利上げを見送ることで問題を深刻化させているとみている。
市場が今後、加速度的に下落する事態となった場合、FRBをはじめ世界の中銀の手には負えないかもしれない。金利はすでにゼロかゼロ付近にあり、量的緩和でバランスシートは膨張しきっているからだ。
UBSのプライベートバンク部門(チューリヒ)のグローバル最高投資責任者(CIO)であるマーク・エーフル氏は「市場は、ここからの中銀の戦略が分からないと訴えている」と指摘。「投資家は、FRBが適切な行動を取るかを心配している。それに加えて、日本や中国、欧州の中銀は果たして正しい政策判断を下すのだろうか」と語った。
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