キケロ『法律について』 - les livres lus au clair de la lune
キケロによれば、法は自然の理(ことわり;ratio)に基礎をおくべきであり、善の根拠も自然にある。自然の理が人間においては理性(ratio)である。自然の法則(lex)と人間社会の法律(lex)は同一の原理であり、倫理学と自然学は一致するということになる。いわば、法律や倫理における自然主義の表明である。
次はもっとも愚かな見解である。すなわち、国民の習慣や法によって定められていることはすべて正しいと考えることである。僭主の法でも正しいのか。…(中略)…人間の共同体を一つに結びつけている正しさは一つであり、それを定めたのは一つの法であり、この法は命じたり禁じたりする正しい理性だからである。この法を知らないひとは、この法の書かれているところがどこかにあろうとなかろうと、不正な人である。
— キケロ『法律について』第1巻42