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焦点:EU・トルコ関係に「蜜月」期待、人権より難民問題を優先 | Reuters

1日のトルコ総選挙では与党・公正発展党(AKP)が単独政権の座を奪還、エルドアン大統領の圧勝に終わった。この結果を受けて、欧州連合(EU)の政策当局者は当初こそ落胆したが、今ではEU・トルコ関係の改善につながる可能性もあるとして、希望の兆しを見出している。


EU当局は、トルコで強力な安定政権が誕生することによって、シリアなどからの難民受け入れに関するEUとの約束が果たされるほか、キプロス和平も進展するのではないか、と期待をかけている。


EUでトルコとの交渉を担当しているある高官は「総選挙の結果は、トルコ国民が安定性を非常に重視していることを示した」と指摘。「エルドアン(大統領)はEUとの関係強化を望んでいる」と述べた。


EU関係者は本来、エルドアン大統領が選挙前に実施したクルド人反政府武装勢力への攻撃や、大統領の独裁志向を警戒していた。しかし今では、寄り合い所帯の連立政権の誕生を何カ月も待つよりは、基盤の強固な政権を相手にするほうがまだましであるとの考えに傾いている。


カティ・ピリ欧州議会トルコ担当官は「6月の選挙でAKPが過半数を失ったとき、トルコ野党や欧州当局の一部は(エルドアン大統領の)終わりの始まりではないか、と考えていた」と話す。「しかし、彼は生還した。われわれは現実に直面しなければならない」と強調した。


欧州委員会がまとめたトルコに関するリポートは、エルドアン大統領が法の支配や司法の独立、メディアの自由、市民権を「後退」させている、と批判した。EUは、こうしたトルコの現状を憂慮してはいるものの、同時にトルコ政府と取り組むべき喫緊の課題も抱えている。


その証拠に、ドイツのメルケル首相は総選挙前にトルコを訪問、エルドアン大統領と会談した。EU、なかでも自国のドイツを揺さぶっている難民問題の解決を人権への懸念よりも優先させた格好となった。


EUは先月、トルコに滞在する220万人のシリア難民の欧州流入を防ぐため、トルコに30億ユーロの資金支援を行うことに合意した。


地政学的な利益を優先>


EU首脳は公の場では、大きな混乱なく行われた選挙への称賛と、メディア規制への批判とのバランスを取ろうと苦心している。


トゥスクEU大統領エルドアン大統領に宛てた祝福の手紙で、投票率が高かったことや、民主的な選挙が行われたことに歓迎の意を示した。ただ同時に「厳しい治安状況」「メディア規制強化」にも触れた。


欧州委のユンケル委員長は先週、EU議員らに「好むと好まざるとに関わらず、われわれはトルコと協力しなければならない」と語った。


前述の欧州議会トルコ担当官のピリ氏は、メルケル独首相のトルコ訪問やユンケル委員長の発言について、地政学的な利益を優先させトルコの国内問題から目をそらそうとするかのような危険なメッセージだと批判。「悪い先例だ。欧州議会は目をつぶることはしない」と述べた。


別のEU高官は、AKPの圧勝でトルコの市場志向の経済改革が勢い付き、EUとの通商関係改善につながる可能性があると指摘する。


金融市場も、こうした楽観的な見方に同調しているようだ。市場は、エルドアン大統領の経済政策や中銀への圧力を批判しているが、それでもAKPの勝利で不透明感が払拭されたことを好感、全面高となった。


<EU・トルコ関係は「荒波」に>


ただし、専門家のすべてが先行きの関係改善を見込んでいるわけではない。EUトルコ代表部代表を務めた経験を持ち、今はシンクタンクカーネギー・ヨーロッパ」に所属するマルク・ピエリニ氏は、トルコでは法の支配の悪化が続き、欧州のトルコとの関係は「荒波」にもまれると予想。エルドアン大統領が憲法を改正し、大統領権限の強化に動いた場合、緊張が高まる可能性があるとの見方を示した。


カーネギー・ヨーロッパのトルコ研究者、シナン・ウルゲン氏は、トルコ政府がシリア政策を調整できるかにかかっていると指摘する。


シリアではロシアがアサド大統領を支援するため空爆を開始、内戦が激化している。トルコはアサド大統領の排除などを目指しているが、いずれも実現できておらず、ウルゲン氏は「政策転換の必要があることは明白。ロシアの介入がある今、アサド政権は崩壊しない」とみている。


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