「700個のケーキ」を「800人の避難民」に届ける方法を考える 藤原和博 × 津田久資「思考・読書」対談!!(第2/3回)|あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか|ダイヤモンド・オンライン
【藤原】そうそう。ところが、大学卒業後に入ったリクルートという会社が、まず正解を当てただけではすまないところだった。これが1つめ。
2つめはやっぱり海外に出たのが大きいですね。
【藤原】パリに行きたかったんで、まずは英語に慣れようと思っていたら、榊原清則(さかきばらきよのり)先生っていう元一橋大の先生がロンドンに呼んでくれたんです。そのときに一家で正解主義の日本から逃げて、一度海外で成熟社会を見れたのがすごく大きかった。
【藤原】津田さんが鍛えられたのは、もちろん博報堂の経験もあるかもしれないけど、やっぱりボスコン(ボストン コンサルティング グループ/BCG)なの?
【津田】意外かもしれませんが、まず当時の博報堂はどちらかというと「学ぶ」「正解主義」の世界でした。日本の広告会社ってもともと、外国からメソッドを持ってきていますよね。そうすると、けっこう他人がつくったフレームワークを学んでいさえすれば何とかなる部分が多いんですよ。
【藤原】舶来物の考え方をね。
【津田】ええ。一方、ごく一部の優秀なコピーライターというのはやっぱりいて、彼らは自分でフレームワークをつくっていましたね。ツリーをきれいに描いて100本くらいのコピーを簡単に出してくる。ただ、大多数は海外から持ってきたフレームに当てはめて、それらしいことを言っているような状況でした。いまもそうなのかはわかりませんが…。
一方、BCGは違いました。BCG発のフレームワークって、当時もけっこうたくさんあったんですが、彼らはほとんどそんなもの使わないわけですよ。
【津田】そう、だからじつは誰も使っていなかったんですよ。
そのあたりのことって、実はビジネススクールでは考えられないまま、頭ごなしに「そういうもの」として教えられていますよね。PPMのようなフレームワークをそのまま使うのは全体の80%くらいだとした場合、博報堂だったらそれでなんとかなったんですけど、その80%の人でいる限り、BCGという会社ではやっていけないんで……。
【津田】へえ〜、そうだったんですね。僕は博報堂にいたころから、ビジネス理論みたいなものに対して「なんかおかしいな」っていう思いがあったんです。
その当時、たまたまマッキンゼーのプロジェクトに入る機会があって……。メンバーの中にはハーバード・ビジネススクールとかINSEADの出身者がいたりしましたから、会議では最先端の経営理論みたいなのがバンバン出てくると思って身構えてたんですよ。
【藤原】そんなのばっかりくるだろうな、と。舶来のすごいのが。
【津田】ところがマッキンゼーの人って、全然その手の話をしないんですよね。それで「やっぱり自分がビジネス理論に対して抱いてた違和感って、真っ当なものだったんだな」と実感しました。
【藤原】ああ、そうなんだ。
【津田】いまのビジネス教育を見ると、「それはPPMですね、以上」で結論づけちゃうような傾向にある。言っちゃ悪いですけど「なんちゃってMBA」みたいな人が増えている感じがして、あまりよくない傾向だと思いますね。