フランスでは6日、全国17の州議会の議員選挙が行われ、移民の排斥などを掲げる極右政党の国民戦線がトップに立ちましたが、いずれの州でも得票率が50%を超える政党がなかったことから、今月13日に決選投票が実施されます。
これを受けて、フランスのバルス首相は7日夜、地元テレビのニュース番組に出演し、「極右政党の公約は地域経済に悲劇をもたらし、人々を争わせて分断に導く」と述べて、国民戦線の躍進に強い危機感を示しました。
そのうえで、「国を愛する者なら、利害を越えて責任を果たさなければならない」と述べ、与党の社会党を中心とする左派連合が、国民戦線におよそ20ポイントと大きく引き離された北部と南部の合わせて3つの州から撤退するとし、代わりに、決選投票では、サルコジ前大統領が率いる中道右派の最大野党、共和党に投票するよう支持者に呼びかけました。
今回の選挙は、再来年の大統領選挙の前哨戦とも位置づけられていて、苦戦を強いられているオランド政権としては、これまで争ってきた最大野党に肩入れしてでも極右政党の勢いをそぐ構えです。
焦点:仏主要政党、極右阻止で足並みそろわず 2002年と様変わり | Reuters
6日のフランス地域圏議会選第1回投票での極右・国民戦線(FN)の躍進に対して、オランド大統領率いる左派・社会党とサルコジ前大統領率いる右派・共和党はFN阻止に向けた連携で合意に至らなかった。
FNのマリーヌ・ルペン党首の父親、ジャンマリ・ルペン前FN党首が2002年の大統領選第1回投票で2位につけて有権者の間に衝撃が走り、主要政党が一致団結して極右の台頭を防いだことを考えると、政治情勢が13年間でいかに大きく変わったかが分かる。
今回の選挙では世論調査でも、たとえ社会党と共和党が対応策で合意しても有権者の多くは支持しないとの結果が出ている。
マリーヌ氏のめいで、南東部の選挙区で40.5%を獲得したマリオン・マレシャルルペン氏は6日、「今夜、旧体制は死んだ」と述べた。
マレシャルルペン氏の言葉は正しいのかもしれない。
02年の大統領選では、数十万人が極右阻止の街頭デモを展開。左派の有権者が中道右派のシラク候補の支持に回り、ジャンマリ・ルペン氏は大差で敗北した。
しかし今回の地域圏議会選では13日の第2回投票を前にこうした連携の兆しはみられない。
世論調査機関ビアボイスの責任者フランソワ・ミケマルティ氏は「02年当時とは比較にならない」と話す。「FNはそれほど恐ろしいものではなく、社会党の有権者はサルコジ氏(の共和党)への投票に消極的になっている。人々はFNの主張の受け入れに前向きで、ジャンマリ・ルペン氏が大統領になりかけたときほどの抵抗感は持っていない」という。
FNは第2回投票で1カ所もしくは複数の選挙区で勝利し、2017年の大統領選の足掛かりを得ようとしている。これに対してオランド大統領とサルコジ前大統領は正反対の判断を示した。
社会党は「共和国戦線(フロント・レピュブリカン)」を掲げ、極右の台頭阻止のために少なくとも2選挙区で候補者の第2回投票への進出を取りやめ、共和党候補への支持を呼び掛けたのに対して、共和党はこうした提案は非民主的だとして協力を拒否した。
「共和国戦線」という言葉が最初に使われたのは1956年のアルジェリア戦争時。ジャンマリ・ルペン氏の大衆迎合的な活動に対してフランスの民主主義的な価値を守るのが狙いだった。
一方、2015年の今、FNはマリーヌ・ルペン党首が穏健路線化に取り組み、一般的な有権者が受け入れやすくなっており、こうした連携はもはや説得力がないとの声が多い。
ジュペ元外相は、共和党が一部の選挙区で候補者を引き揚げて社会党候補の支持に回ってもFNが勝利するだろうとの見方を示した。
また北東部の選挙区で社会党候補が第2回投票への進出取りやめを拒否したことからも、主要政党の内部で確執が存在することがうかがえる。
調査会社ハリス・インタラクティブのジャン・ダニエルレビ氏は「左派の内部には政策よりも信念を優先するよう求める圧力が存在する。しかしそれで第2回投票でFNを必ず打破できるとは限らない」と話した。
02年の大統領選とのもう1つの違いは、ジャンマリ・ルペン氏の躍進はまったく想定外で、その後の選挙では勝てなかったのに対して、今回はマリーヌ・ルペン党首の主張が説得力を持ち、主要政党を悩ませている点だ。
レビ氏は「先日の展開は偶然ではない。底深い流れがある」と指摘した。