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金価格が底入れの気配、ドルのピークアウト見込む動き | Reuters

金価格が底入れの気配をみせている。逆相関関係にあるドルが、米利上げを機にピークアウトするのではないかとの見方が広がっているためだ。原油価格の下落傾向が続いており、中国など世界経済の減速に対する警戒感は依然強いが、需要面の影響が比較的薄い金は、市場の変化をいち早く読み取ろうとしている。


<過去の米利上げ時、金は上昇傾向>


金の現物価格XAU=は、9日時点で1オンス=1072ドル。12月3日に一時1045.85ドルと2010年2月5日(1043.75ドル)以来、約5年10カ月ぶりの安値を付けたが、そこから下値を切り上げている。原油安による価格下落圧力に逆らう動きだ。


住友金属鉱山(5713.T)など日本の金関連銘柄は、軟調な全体相場に引きずられ総じて弱含みだが、オーストラリアの金鉱株であるセントバーバラ(SBM.AX)や、レジス・リソーシズ(RRL.AX)などは、切り返し基調にある。シドニー株式市場の金関連株指数.AXGDは11月30日の安値から前日終値まで12.6%の上昇だ。


その背景にあるのは、ドル高のピークアウト観測。「12月の米利上げを機にドルが天井を打てば、金価格の反転が期待できる」(エモリキャピタルマネジメント・代表取締役の江守哲氏)という。ドル建てで取引される金は、ドルと基本的に逆相関関係にある。


過去4回の米利上げ局面をみても、1987年のケースでは金の現物価格が約10カ月後に7.5%高、94年は約8カ月後に2.8%高、99年は3カ月後に30%高、04年は5カ月後に16%高となっている。


その後は下落するケースもあるが、いったんは上昇する傾向がみられる。一方、ドル/円JPY=EBSは、利上げ開始後1年間で平均5.8%の下落だ。


金は産業用や宝飾用などを除けば、実需はそれほど大きくない。原油や銅などと違い需要面よりも、金融面の変化に影響されやすいという特徴を持つ。「先行きを見越した売買が入りやすい」と、ばんせい投信投資顧問・商品運用部ファンドマネージャーの山岡浩孝氏は話す。


<自律反発との見方も>


一方で、テクニカル的な反発に過ぎないとの見方もある。金の現物価格は、2011年9月6日の1920ドルをピークに長期低下トレンドをたどっている。今月前半に約5年10カ月ぶりの安値を付けたのは、原油安の影響でコモディティ市場全般に下落圧力がかかったためだ。あくまで下げ過ぎの反動が出ているだけという可能性もある。


世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールド・シェアーズの信託金残高は減少ペースが鈍ってきているが、依然として増加の兆しは見えない。ピークだった2012年の1353トンから、足元では634トンと半分以下に減っている。


他のコモディティよりも影響が薄いとはいえ、需給減退という重しもある。中国の経済指標は弱く、需要面での増加は期待薄だ。さらに原油価格が下げ止まらなけば、インフレ・ヘッジとしての金需要も高まらない。


また、米利上げ後にドル高が一段と進展するとの見方も多い。日米欧の中で、唯一金融引き締め方向にかじを切っている米国。金融政策のコントラストはドル高に働きやすい構図だ。ドル高傾向が続けば、コモディティ全般への下落圧力は来年も続くことになる。


<日本経済への影響は円高次第>


とはいえ、金を「先行指標」としてと捉えた場合、銅など他のコモディティ価格も今後、リバウンド局面に移行する可能性もある。「来年は世界的な景気回復を背景にコモディティ価格の上昇を見込んでいる」(UBS証券ウェルス・マネジメント本部チーフ・インベストメント・オフィサーの中窪文男氏)との予想も少なくない。


コモディティ価格が上昇に転じた場合、米国ほど経済に占めるエネルギー産業の比率が高くない日本にとって、プラス面よりもコスト増によるマイナス面の方が大きそいとみられている。資源国の経済が持ち直せば輸出面ではプラスだが、その分、資源輸入国である先進国の経済は交易条件の悪化を通じてマイナスになる。


円高が進めば、輸入価格の上昇を相殺することが可能だ。しかし、コモディティ価格底入れがドルのピークアウトを通じて起きるとすれば、それは円安トレンドの変調を意味する。


円高が進み過ぎては、日本経済へのダメージの方がメリットよりも大きくなる。「輸入価格上昇の相殺と輸出産業へのマイナス。トータルでみれば、やはり現時点での円高進行は日本経済にマイナスの影響を及ぼす」(ニッセイ基礎研究所・シニアエコノミストの上野剛志氏)という。


来年のドル/円については、市場でも見通しが大きく分かれているが、ドル安トレンドに入った場合、適度な円高で止めることができるかどうかが、大きな焦点となりそうだ。

#gold