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2005年下期の日銀、量的緩和出口めぐり激論=議事録 | Reuters

日銀は15日、2005年7月から12月に開催した金融政策決定会合の議事録を公表した。小泉純一郎首相(肩書はいずれも当時)による郵政解散や米利上げ観測などを背景に円安・株高が進み、景気回復を背景に日銀は量的緩和政策から金利モードへの出口(量的緩和解除)を模索し始める。


現首相の安倍晋三官房長官中川秀直政調会長など、自民党上げ潮派議員らが量的緩和解除は時期尚早と激しく批判するなかで、緩和長期化によるバブル再燃を懸念する福井俊彦総裁らと、米景気鈍化やデフレ再突入の回避を重視する岩田一政副総裁らが真っ向から対立しつつも、執行部が解除に向け突き進む姿が描かれている。


当座預金残高目標を最大で35兆円とした当時の量的緩和と比べ、黒田日銀による現行の「量的・質的緩和(QQE)」は保有資産が385兆円(1月10日時点)まで膨らんでいる。今後の政策展開を見る上でも、議事録は示唆に富む。


当時は量的緩和政策が5年目を迎えていた。04年に残高を30─35兆円に引き上げたのを最後に政策の据え置きを続け、06年3月に量的緩和を解除し、金利操作によるオーソドックスな金融政策に回帰する。


05年10月31日の会合では「展望リポート」で05年度の物価見通しをマイナス0.1%からプラス0.1%に引き上げ、デフレ脱却の絵を示すことで市場に解除の意志を示し、日銀内外から賛否両論が渦巻くことになる。


<慎重に動き出した解除議論、展望リポートに照準>


当時は金融システム不安の後退とともに、景気が回復に向かい始め、市場では量的緩和の解除観測が台頭する。8月会合で水野温氏委員が「金利先高観が想定したペースよりも早く出てきた」とし、「出口戦略および枠組みを変更した後の政策運営の大枠について、コンセンサスを形成する作業をスピードアップする必要が出てきた」と発言。これを福井総裁が「重要なポイント」と支持し、出口に向けた議論が進み始める。


<福井総裁「異常な政策」、岩田副総裁ら米経済を懸念>


執行部に近い委員は、解除が必要な理由として量的緩和が「流動性対策が大部分」(福間年勝委員、11月会合)「金融システム不安やデフレ・スパイラルに陥る懸念に対応した異例な枠組み」(水野委員、10月11─12日会合)など、銀行救済策の色彩が濃い政策であったとし、所期の効果を果たしたと主張する。


さらに「株価を見ていると、すでにポスト・デフレの世界で動いている」(水野委員、10月11─12日会合)、「東証株式の売買高が45億株と既往最高を記録」「こういうことを繰り返して日本経済は基礎体力を失っていく」(福間委員、12月会合)と、バブル再燃の気配に懸念する声も出ていた。


福井総裁も「(量的緩和は)異例な政策、ないし異常な政策」と表現(11月会合)。これに対して「『異例』にしていただけないか。『異常な政策』という言葉はかなりショッキングな響きを持つ」(中原眞委員)と批判され、「つい極端な表現を使ってしまうのだが。異例な政策だな」(福井総裁)と返答しており、解除を急ぐ姿勢がにじむ。


一方、解除に慎重な委員らは、米国経済の減速による日本経済の失速とデフレに舞い戻ることを懸念。「米国経済にピーク感が出てくる時、量的緩和の出口が重なる可能性もあり、円相場が上昇に転じることも考えられる」「単にCPIの足元および先行きがプラスになったという形式要件のみで、デフレ脱却条件の充足を判断するのは極めて危険」(中原委員、10月31日会合)、「アメリカは危ない」「住宅投資が失速し、住宅価格が下げるとやはり多少弱くなる」(岩田副総裁、11月会合)と警告を発していた。


<物価目標めぐり激論、福井総裁「成長率かさ上げ」を懸念>


解除をめぐる対立に拍車をかけるのが、物価目標導入の是非だ。岩田副総裁らは、解除後の政策運営の目安として、日銀が目標とする物価水準を示すべきとの論陣を張る。「(政策の)先行きがはっきりしないまま量の方をサッサッと下げていった方がよいのか、それでマーケットの期待は安定するのか」(岩田副総裁、12月会合)と主張した。


しかし、福井総裁は「不純な動機─言葉は悪いが─、例えば名目成長率をかさ上げするために、などというような動機が少しでも含まれている場合には、難しい問題が入ってくる」と真っ向から反対する。


物価目標に慎重な委員は「インフレ率を1%なり2%なりと掲げた時に、ではどうやって達成するのか。『それはみなさんが頑張ってやるのだ』と言われても、非常に無責任」(水野委員 12月会合)と述べていた。


<解除に政府圧力、「喧嘩していない」と福井総裁>


解除反対派の委員の背後にあるのが、政府・与党側からの強い圧力だ。10月展望リポートで市場が解除を織り込み始めると、政府側からはデフレ脱却の条件としてGDPデフレータのプラス転換も要件に挙げるなど、日銀にブレーキをかける発言が急増する。


日銀執行部が、政府側出席者をけん制する場面もある。「喧嘩(けんか)はしていない。世の中の誰かは喧嘩しているかもしれないが、私たちはしていない」(福井総裁、12月会合)と予防線を張る。


マイナスが続くGDPデフレーターも考慮すべきとの内閣府出席者の発言に対し、武藤敏郎副総裁は「日本銀行としても、GDPデフレータを見ないなどということは一言も言ったことはない」(11月会合)と反論。出口の接近とともに、政府と日銀の間でデフレをめぐる激しい議論が展開されていくことになる。