シリア情勢を巡って、アメリカとロシアは、過激派組織IS=イスラミックステートなどへの攻撃を除き、今月27日から停戦に入るよう、アサド政権と反政府勢力の双方に呼びかけています。
アサド大統領は24日、ロシアのプーチン大統領との電話会談で、停戦案を受け入れる用意があると伝え、一方の反政府勢力側も、条件つきながら、停戦に応じる姿勢を示しています。
双方は、今月27日からの停戦受け入れを前に、支配地域を広げようと攻勢を強めているものとみられ、このうち、シリア北部にある第2の都市アレッポでは、政府軍が激しい攻撃をしかけています。
アレッポにいる反政府勢力の活動家は、NHKの取材に対し、「24日に、ロシアがアレッポの西側にある町を標的に空爆を行い、およそ10人が死亡して多くの建物も破壊された」と述べ、政府軍とともに、ロシアも攻勢を強めていると説明しました。
これに対し、反政府勢力側も政府軍などへの攻撃を続けているということです。戦闘が激しさを増すなか、シリア北部では、住民たちが町を脱出して隣国トルコに向けて移動していて、シリア側の国境沿いには、すでに20万人近くが避難しているとみられています。
シリア反体制派の主要組織、「2週間の停戦」受け入れる用意 | ロイター
シリア反体制派の主要組織「高等交渉委員会(HNC)」は24日、米ロが呼びかける敵対的行為の停止について、2週間の一時停戦に入る意向を示した。
ロイターが入手した声明によると、HNCは「2週間の一時的な停戦を、相手側がいかに真剣に合意を守ろうとするかを判断する機会と見なす」としている。
米国とロシアは22日、シリア内戦の当事者に対し、27日から一時停戦に入るよう促す計画を発表した。過激派組織「イスラム国」(IS)や国際武装組織アルカイダ系の「ヌスラ戦線」は停戦対象に含まれない。
一方、シリア政府は23日に「戦闘作戦」の停止に合意したと明らかにしている。
シリアを巡っては、アメリカとロシアがアサド政権と反政府勢力に対して、今月27日から停戦に入るよう呼びかけていて、過激派組織ISなどの支配地域を除き、停戦が実現するかどうかが焦点となっています。
こうしたなか、国連の安全保障理事会で24日、人道問題を統括するオブライエン事務次長が報告を行い、先週以降シリア軍に包囲されていた首都ダマスカス近郊の4つの町の6万人余りに、陸路で人道物資を届けたことを明らかにしました。
さらに、ISに包囲されている東部のデリゾールにも24日、航空機を使って上空から21トンの物資を投下し、現地のNGOからの連絡では物資は計画どおり着地したということです。
オブライアン事務次長は、シリア全土で封鎖された地域に暮らす50万人余りのうち34万人に物資が届けられる見通しとなったものの、依然17万人は支援できないとして、「人道支援は政治状況に左右されてはならない」と訴えました。
これに対して、シリアのジャファリ国連大使は「テロリストが引き続き市民を人間の盾にしている」として、封鎖の責任はシリア政府側にはないという主張を繰り返しました。
米大統領 “シリア停戦実現し政権移行”を期待 NHKニュース
内戦が続くシリアでは、アメリカとロシアが呼びかけた今月27日からの停戦受け入れを前に、アサド政権と反政府勢力の双方が支配地域を広げるため攻勢を強めているものとみられます。
こうしたなか、アメリカのオバマ大統領は24日、ホワイトハウスでシリアの隣国ヨルダンのアブドラ国王と会談しました。会談のあとオバマ大統領は記者団に対し、「シリアの状況は厳しい」と述べ、停戦が実現するかどうか注意深く見守る姿勢を示しました。
一方で、「今後、暴力が減少すれば、長期的な停戦を実現する土台ができ、最終的に内戦を終結させるために必要な政権移行を進めることができる」と述べ、停戦が実現し、政権移行につながることに期待を示しました。
さらに、停戦が実現すれば、シリアの反政府勢力に対して空爆を行っているとされるロシアも含め、国際社会全体が過激派組織IS=イスラミックステートとの戦いに集中できると強調しました。
これに対し、アブドラ国王は「アメリカとロシアの呼びかけが、シリアの状況を正しい方向に動かすと期待している」と述べました。