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セブン&アイ鈴木会長を熟知…勝見明氏が語る“引退の真相” | 日刊ゲンダイDIGITAL

 鈴木会長としては、井阪社長をおとしめるつもりは全くなかったでしょう。頭に浮かんだことを、そのまま話したに過ぎないと思います。そういう人なのです。鈴木会長は、井阪社長との経緯をすべてしゃべった。マスコミは驚いたようですが、鈴木会長が話した内容はマスコミが知りたかったことです。井阪社長から見た光景とは違うでしょうが、少なくとも鈴木会長から見た光景は全てしゃべったのだと思います。

 鈴木会長の発想は、常に「未来」に目を向けて、そこから物事を考えるので、過去の経験はすべて否定します。セブン―イレブンが40年以上も好業績を続けているのは、未来から考えて今何をすべきかの視点に立っているからです。井阪社長に対しても十分、評価はしています。井阪氏が社長に就任した09年はセブン―イレブンの経営が苦しい時期でした。販売期限切れが近い弁当などの値引き販売を巡り、公正取引委員会は本部が値引きを「不当に制限した」として排除措置命令を出しています。そんな厳しい時期に井阪社長は女性客や高齢者の獲得、プライベートブランドセブンプレミアム」の投入などで中心的な役割を果たし、成果を挙げています。

 井阪社長に有名なエピソードがあります。セブン―イレブンは新製品を発売するのに鈴木会長の許可が必要です。商品開発を担当していた井阪氏は、開発中の冷やし中華で11回NGを食らってもめげずに、12回目でようやく鈴木会長のOKをもらったという伝説です。井阪社長は課題を与えられると能力を発揮するタイプです。しかし、鈴木会長がコンビニのあり方を「未来」から見たとき、井阪社長で大丈夫か、変化に対応できるのかと考え込んだ。鈴木会長は、そこに物足りなさを感じたのだと思います。

 井阪社長を辞任させるという人事に、創業家はハンコを押さなかった。創業家の信任を得られなかったのは初めてだけに、鈴木会長はこたえたでしょうね。創業家伊藤雅俊名誉会長(91)は、これまで鈴木会長が手掛けたセブン銀行や、米国セブン―イレブンの救済など本音では反対だったのかもしれません。でも、経営に関しては鈴木会長を全面的に信頼し、ずっと任せてきた。今回だけは、他に優先させなければならない事情があった、と察することはできます。

 伊藤名誉会長の次男・順朗氏(57)もセブン&アイの取締役です。想像するに、伊藤家としては、何らかの形で次の世代に受け継いでいきたいという思いは当然あるでしょう。鈴木会長に絡む世襲の噂も耳に入ったはずです。ただ、鈴木会長の頭の中に、次男への世襲は全くなかったと思います。

 実は、康弘氏を取締役に抜擢したのは鈴木会長ではありません。康弘氏は、リアル店舗とネットを融合させるオムニチャネルに取り組んでいます。セブン&アイは、コンビニやスーパー(イトーヨーカ堂)、百貨店(そごう・西武)、外食(デニーズ)など全国に2万近い店舗があります。オムニチャネルとは、たとえば百貨店の商品をネットで注文して、コンビニで受け取るようなイメージです。グループ企業同士がバラバラでは成功しません。オムニチャネルに求められるのはグループの一体感です。そこでオムニチャネル推進室を新設し事業に取り組んだのですが、分かりにくい内容だけにセブン&アイ内部からも否定的な意見が出ていました。このままではうまくいかないと判断したグループ首脳たちが康弘氏をHDの取締役にし、オムニチャネルを加速すべきだと鈴木会長に進言したのです。

 最初、康弘氏は固辞しました。ところが、グループ首脳だけでなく、セブン&アイの顧問からも強く推されたのです。その顧問は「天命であるから受けなさい」と説得した。それで康弘氏は渋々、承諾したといいます。だから、鈴木会長は、何かあればいつでも康弘氏を解任すると言っていたし、頭の中に世襲のせの字もなかったと思います。

 鈴木会長は数年前に「ストア・イノベーションチーム」をつくり、セブン―イレブンの実験店をスタートさせています。たとえば、コンビニでパンストを購入する人は急きょ必要になったはずだから、トイレに着替えの場所を設けたり、お酒売り場では家飲みに対応するため、つまみを充実させた。実験店の売り上げは倍になったといいます。こうしたアイデアは鈴木会長でなく、チームの皆が考えたものです。店ごとに、それぞれの最適な運営の仕方があるのだから、ワイワイガヤガヤとアイデアを出し合う。鈴木会長は、これまでのトップダウン型の経営から、“ワイガヤ”のボトムアップ型に変えようとしていました。これはチェーンストア理論の否定でもあると、鈴木会長は言っています。チェーン本部が一括して商品を仕入れるのではなく、個店ごとに自分たちの意思で店をつくっていく。

 セブン―イレブンだけでなくてイトーヨーカ堂そごう・西武も似たような動きを見せています。オムニチャネルもグループの結束に重要な役割を果たします。今思えば、鈴木会長は自分がいなくなったあとを考えて、こうした取り組みを熱心に進めてきたのかもしれません。カリスマが去っても、グループがきちんと動くように持ってきていたのでしょう。

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