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BNPパリバ社長に聞く、大変革期に生き残る金融機関の条件 フィリップ・アヴリル BNPパリバ証券社長インタビュー|『週刊ダイヤモンド』特別レポート|ダイヤモンド・オンライン

外資系証券が日本から縮小・撤退する動きが加速している。日本の大手証券も海外事業を縮小するなど、証券金融業界は急速な構造転換に見舞われている。30年近くに渡り日本の金融市場を見続け、フランス人ながら合気道3段を持つ「日本通」、欧州金融大手BNPパリバ証券社長のフィリップ・アヴリル氏の目にはどう映っているのか。

銀行を含めた金融業界では今、大きな構造変化が起こっています。振り返れば1980年台の半ばぐらいまでは、金融機関といってもとても伝統的な仕事が中心でした。基本的に「人間対人間」の関係で物事が進んでいました。互いの信頼があれば、お金を預けたり、貸し借りできたりしたからです。


 そこから、金融に数学を利用するという大きな変化が起こります。私も含めて、数学を専攻する人がこぞって金融業界に入りました。ここで金融派生商品など新しい金融商品が生まれ、業界の構図が一変しました。


 ですが、それが行き過ぎたために、2008年のリーマン・ショックが起こりました。金融商品が複雑になりすぎて、誰もそのリスクをコントロールできなくなっていたのです。


 その反省から、世界の政府は規制を強化するようにかじを切りました。その一つに「バーゼル3」があります。世界の規制当局は、国際展開している金融機関が高いリスクをとって利益を得る構造に制限をかけたのです。


 この規制は「行き過ぎ」という意見から「絶対に必要だ」という意見まで賛否両論あります。個人的には規制自体は必要だと思いますが、それでもバランスが必要だと思います。規制が強すぎると流動性がなくなり、金融市場そのものがうまく機能しなくなる懸念があるからです。


 実際、われわれには欧州本国の規制がかかっています。米国に関わる業務も大きいので米国の規制にも従います。その上、日本の規制もあるため、これら三つの規制をしっかり守らないといけない状況です。


 そのため、われわれだけではなく多くの金融機関が高いリスクをとって稼ぐことが難しくなりました。特に欧州、米国はリーマン・ショックを受けて国民の金融機関への反発が強かったため、規制が厳しくなっています。

 われわれのお話をする前に、金融業界には「リージョン(地域)」という考えがあることをお伝えしましょう。


 グローバル展開をしている金融機関がどこを拠点に事業を展開するのか。それにはまず、世界を欧州と米国、アジアに分けます。


 では、アジアの中心はどこか。国際的な金融機関の多くは、東南アジアや中国に注目しています。金融で言えばシンガポールや香港です。国内市場は小さいものの、国際的なハブとしての役割を果たそうと、外資系を呼び込んでいるからです。


残念ながら、日本に今後高い成長が期待できるわけではありません。大きな成熟した市場であることは間違いないですが、国内の銀行や証券会社がとても強く外資系が一から勝負するのはなかなかに厳しいマーケット構造があります。


 そのため、国際的な規制で利益が出にくいなか、経営資源を日本からシンガポールや香港に移すというのも、無理はないというわけです。


 一方で、長年日本で展開してきたわれわれには果たせる役割があると思います。日本に拠点を持ちながらも、世界的な金融ネットワークを持っているからです。現在、国際的な取り引きをする日本企業が増えており、われわれは、そうした日本企業を世界の投資家に橋渡しできるのです。

――証券の中には、富裕層のプライベートバンク化を狙うところもあります。日本の証券会社も顧客の資産管理型ビジネスを重視する動きが顕著ですが、このような展開をお考えなのでしょうか。


いえ、われわれは個人の顧客が狙いではありません。顧客は、海外展開する大企業や機関投資家、事業法人が中心です。


 実は、足元ではかなり海外投資の割合が増えています。われわれの業務の半分以上は、海外向け投資に関するものとなっています。インフラ投資に関心を示す投資家も増えています。

 われわれは、中国経済は最終的に持ち直すと考えています。ただ、構造改革が必要なので、時間がどれだけかかるのかは見通せません。中国が持ち直せば、より市場が開放されればビジネスも活発になるでしょう。


 一方で、成長が期待されるアフリカやインドについてもわれわれは進出していますが、金融の面から見るとやや早いという印象があります。日本から見れば、インドネシアやタイ、ミャンマーの方が有望かもしれません。

――では、そのような中、どのような金融機関が生き残っていくと思われますか。


 まず、規制の影響で銀行の貸し出しなどの伝統的な業務はどんどんと縮小していくと思います。大きなバランスシートを使って、お金を貸し出して利ざやを稼ぐことができなくなるからです。


 そうなると、融資を必要としている企業は銀行ではなく、直接、投資家に頼ることになるでしょう。つまり、企業と投資家の間に立つような、金融仲介モデルのビジネスが今後の中心になっていくということです。


 これは長年、米国で培ってきたビジネスモデルです。もともと大陸欧州といえば、企業の調達金額の3分の2ほどが銀行の融資、つまり間接投資です。一方、米国では直接投資が3分の2ほどであり、欧州が米国モデルに近づいているということになります。


実は今起きている変化は、大陸欧州としては「革命的」とも言える事態なのです。


――日本も、銀行と証券会社が顧客の融通を行うなど「銀証連携」が盛んに唱えられていますし、社債の発行も活発化しています。銀行サイドから証券業界が強みを持っていた領域に入る動きが加速するということでしょうか。


 ええ、日本も同じように進んでいくでしょうね。大陸欧州と日本は似ているところがあると思います。幸いにも、日本はリーマン・ショックの際に、欧米のような金融危機に至らなかったため、その変化は欧州ほど早くはないかもしれません。ですが、全世界的にみれば、融資中心の伝統的なビジネスから、金融仲介モデルへと進む流れは止まらないでしょう。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160501#1462098911