「コンサル料として正式な支払い」招致委元理事長が声明 | NHKニュース
今回の問題を受けて、招致委員会で理事長を務めたJOCの竹田会長と、招致委員会の樋口修資元事務局長は、13日に連名で声明を発表しました。
この中では、フランスの検察当局が捜査の対象としているおよそ2億2000万円の振り込みについて、「サービスに対するコンサルタント料で、監査法人などにより正式に監査を受けたものだ」としています。さらに「招致委員会からの支払い」と明記したうえで、「招致計画作り、プレゼンテーションの指導、ロビー活動など多岐にわたる招致活動の業務委託、コンサル料など数ある中の1つであり、正式な業務契約に基づく対価として行ったものだ。契約した会社は実績のある代理店で、アジア中東の情報分析のエキスパートであり、何ら疑惑を持たれるような支払いではない」と強調しています。
声明では、こうした点をIOC=国際オリンピック委員会にも伝えたことを明らかにしたうえで、「フェアな招致活動で全く潔癖である」と結論づけています。
東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会は、招致活動の中心的な役割を担う組織として2011年9月に設立され、東京都やJOC=日本オリンピック委員会などで構成されました。会長には東京都知事が就任し、実質的な指揮を執る理事長をJOCの竹田恒和会長が務めました。
招致委員会は詳細な開催計画の策定など立候補手続きを進めたほか、国際会議でのプレゼンテーションや国内の支持率向上を図るPR活動を行いました。そのうえで、開催都市を決める投票の投票権を持つIOC委員に支持を広げるため、ロビー活動に詳しいコンサルタントなどの協力を得て、アジアやアフリカのIOC委員を中心に東京の魅力をアピールする活動を展開しました。
2013年9月に東京がオリンピックの開催都市に決定したあと、おととし1月に大会の準備と運営に当たる組織委員会が新たに発足し、招致委員会は解散しました。
招致委員会の活動報告書によりますと、招致活動にかかった費用の合計は、2011年9月から2013年9月までの2年間で89億円に上ります。使用目的の内訳は、「立候補ファイルの策定」が10億円、「国際招致活動」が41億円、「招致機運の醸成」が38億円となっています。
また、招致委員会と東京都の負担の内訳は、招致委員会が54億円、東京都が35億円で、今回問題になっている、招致委員会がコンサルティング料として支払ったおよそ2億2000万円は、この54億円の中に含まれます。招致委員会の負担分は、寄付金や協賛企業からのスポンサー料などで賄われたということです。
2020年夏のオリンピックの東京への招致に関連して、日本側が国際陸上競技連盟に協賛金を支払ったと指摘されている今回の問題は、国際陸上競技連盟のラミン・ディアク前会長らが、ロシア陸上界のドーピングの隠蔽の見返りに賄賂を受け取っていたとされる疑惑の調査や捜査の過程で浮上しました。
ディアク前会長の疑惑については、WADA=世界アンチドーピング機構の第三者委員会によって調査が行われたほか、フランスの検察当局が去年11月、ディアク前会長をドーピングを隠蔽した見返りに賄賂を受け取っていた収賄などの疑いで逮捕するなど捜査を進めてきました。
その結果、前会長の息子の知人とされる男性が代表を務めるシンガポールの会社の口座が、金銭のやり取りに使われていたことが判明し、検察当局は、前会長の息子パパ・マッサタ・ディアク容疑者をICPO=国際刑事警察機構を通じて指名手配しました。
さらにフランスの検察当局は、この会社の口座に2013年の7月と10月の2回にわたって、東京オリンピック招致の名目で日本の銀行の口座から合わせておよそ2億2000万円が送金されたことを去年12月に把握したとしています。そして、2020年のオリンピック開催地の選定を巡っても、容疑者不詳のまま贈収賄などの疑いで捜査中だとしています。
フランスの検察当局によりますと、捜査の対象としている資金は、2013年の7月と10月の2回にわたって、シンガポールに拠点を置く会社の口座に振り込まれたとされています。
この会社について、シンガポールの登記簿には2006年4月に設立され、2年前の2014年7月に事業を停止したと記載されています。また、登記簿によりますと、会社の代表は国際陸連のディアク前会長の息子の知人とされているシンガポール人の男性が務めています。
この会社の所在地として、シンガポール東部にある公営住宅の1室が記載されていて、NHKの取材班がこの場所を訪ねたところ、男性の家族とみられる女性が応対し、男性が住んでいることを認めました。そのうえで、「自宅にはめったに帰ってこない」とだけ話して、それ以上の取材には答えませんでした。また、近所に住む女性は「家族は知っているが男性に会ったことはない。この公営住宅で会社を経営している人がいるなんて聞いたことがない」と驚いた様子で話していました。
オリンピックの招致活動を巡っては、2002年冬の大会の開催都市がアメリカのソルトレークシティーに決まる過程で、IOC委員に多額の金品が贈られるなどの買収疑惑が発覚して複数のIOC委員が処分され、招致活動のルールが見直されました。
ソルトレークシティーオリンピックの招致活動を巡る買収疑惑は、開催都市がソルトレークシティーに決まったあとの1998年に発覚し、開催都市を決める投票の投票権を持つIOC委員やその親族に、招致委員会側から多額の金品が贈られていたことが明るみに出て、20人のIOC委員が処分されました。それまでの招致活動には、明文化されたルールはなく、ソルトレークシティーオリンピックの買収疑惑をきっかけに、その前の長野オリンピックでも、過剰な接待などが繰り返された実態が明らかになり、IOC委員のモラルと、招致活動の在り方が厳しく問われました。
このためIOCは1999年に、立候補都市側がIOC委員を個別に訪問することや、IOC委員が立候補都市を訪問することを原則として禁止しました。そのうえで、IOC委員などで作る評価委員会が立候補都市を視察して開催計画を確認したあと、投票を行うIOC委員が参考にする評価報告書を作成する現在のルールを導入しました。