BS(貸借対照表)ではこの科目を真っ先にチェックしよう|ビジネスにいちばん使える会計の話|ダイヤモンド・オンライン
BS(貸借対照表)は会社の財政状態を表している決算書なので、それぞれの科目をチェックすると、財務的に安全かどうか、つまり倒産の心配がないかどうかがわかります。
また、重要な科目については、その評価額が妥当かどうか、つまり時価(市場で取引されている価格)と簿価(帳簿に記されている価格)の差額がないかどうかを調べるきっかけになります。含み損があるかどうか、外貨建て資産の評価が正しいかどうか、簿価以上で売れる在庫かどうか、などリスクのありかをチェックするための資料になるのです。
BSのなかで何といっても重要なのは「現金及び預金」と「在庫」なので、この二つの残高をつねにチェックすることです。現金及び預金とは、現金、普通預金、当座預金、定期預金などの合計です。在庫は、商品及び製品、仕掛品、原材料及び貯蔵品などの別々の小科目に分かれていて、まとめて「たな卸資産」と呼ばれることもあります。
二つの科目の毎月末の数値を「大ざっぱに何万円程度」と覚えておけば、少しずつ減ってきているとか、売上高との関連比率、たとえば在庫が売上高の何ヵ月分あるかなどの指標(在庫回転期間)も頭に刻まれるはずです。
しっかりチェックしておけば、「現金預金がこれ以上少なくなったら支払いができずに危険だ」とか「在庫がこれ以上増えたら、売れずに不良在庫になる危険がある」などの限度がわかってくるでしょうし、どのような手を打つかという判断も早くなると思います。一般的に、現金預金は多ければよく、在庫は少ないほど販売効率がよいといえます。
在庫は年に一〜二度、実地たな卸を行います。実地たな卸とは、倉庫などの現場に行って在庫をチェックすることで、帳簿に記された在庫数と実際の在庫数に違いがないかを調べます。そのときに「この商品はこの売価で売れる」とか「これは陳腐化したので売価の半分くらいでしか売れない」などと評価します。在庫の大掃除だと考えてください。
在庫は必要なときにだけあって、不必要なときはゼロになるのが理想です。
在庫はお金と同じか、お金が一時的に化けたものですが、長く在庫のまま滞るとお金の価値が少しずつなくなって含み損(売却・処分したら損が出ると思われる金額)を抱えることになります。ですから、それぞれの在庫の適正額を決めておき、その金額以上にならないように管理することです。
一歩引いてBSの全体を見てみると、左側の総資産(資産合計)は「投資資金の総額」と「リスクの大きさ」を表しているととらえることもできます。
「投資資金の総額」というのは、文字どおり会社の総投資額の意味で、この総資産でPLの当期利益を割ると投資対効果をチェックすることができます。つまり、会社がすべての資産を利用して、どれだけの利益を上げているかがわかるのです。この指標はROA(総資産利益率)と呼ばれ、これを経営指標にしている会社も多いです。
次に「リスクの大きさ」というのは、総資産の規模が大きいほど大きなリスクが潜んでいる可能性があるという意味です。