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「もらったお金」は借金より高くつく? WACC(加重平均資本コスト)について学ぶ|あれか、これか ― 「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門|ダイヤモンド・オンライン

ある意味では、自己資本の大きさこそが、お金持ちの指標である。返済する義務のない自己資本がどれほど潤沢であるかが、家計や財務の健全性にとって、大きな目安となるのは間違いない。


大きな資産を持っていても、負債の割合があまりにも大きいと、自己資本がマイナスになってしまうことがある。これを債務超過という。


債務超過の代表格といえば日本だ。財務省が発表した日本国のバランスシートを見ると、資産は約680兆円に対し、負債は約1172兆円あり、492兆円の債務超過となっている(2015年3月31日時点)。国の債務問題で大変なことになっているギリシャのような国もあるため、日本の財政についてはつねに懸念の声がある。


企業経営の世界でも同じような考え方が共有されている。
実際、「あの会社は無借金経営だ」と聞くと、多くの人が「なんてすばらしい会社なんだ」と思うはずだ。


無借金経営の一形態として「名古屋式経営」という言葉を聞いたことがあるだろうか? 名古屋を中心とした経済圏で見られる経営手法で、「石橋を叩いても渡らない」とも揶揄されるほどの、きわめて慎重な経営スタイルだ。借金を嫌い、利益は内部留保として蓄える。事業の急激な拡大や、高収益事業への参入にはとくに慎重で、事業の継続と手堅い収益性が最優先される。


日本中が好況に沸いたバブル景気のころも、この地方の企業は浮利を追うようなことをあまりしなかった。そのため、バブル崩壊後にもそれほど大きなダメージを受けず、ますます無借金経営を賞賛するような風潮が拡大していったのである。


僕も1つの会社を経営しているが、やはり経営者の立場からすれば、なるべく負債は少ないほうがいい。返済しなくてもいいお金(つまり自己資本)をしっかり持っておくことが、企業を存続させるうえでの重要課題なのは間違いがないのだ。


名古屋式経営がいい形で開花した企業の代表格といえば「トヨタ自動車」だ。あの規模を持ちながら無借金経営を貫いている会社は世界的にもきわめて稀である。とはいえ、グループ全体の連結で見ると、トヨタは日本でいちばん負債の大きい会社だったこともあるのだ。


ちなみに、「手元資金に対し借り入れが多い会社」のランキングでは、1位にソフトバンクグループが入っている。有利子負債は10.5兆円。これだけを見ると、めまいがしてきそうな金額である。

今回から数回は、この「借金は悪」という考え方を一変させたMM理論を見ていくことにしたい。まずは、その前提となるWACC(加重平均資本コスト)について説明していくことにしよう。そこで問題。

【問題】
まったく同じ資本を持つ2つの会社がある。どちらがより健全か?
A社 負債20% 自己資本80%
B社 負債80% 自己資本20%

要するに、株主たちは、出資したお金が戻ってこないリスクがあると見込んだうえで投資しているわけだ。


したがって、リスクの低い債権者が要求する金利は相対的に低くなるし、より多くのリスクをとっている株主たちはより高い金利を求める。


債権者が要求する利回りをROD(融資リターン: Return On Debt)、株主が要求する利回りをROE(株式リターン: Return On Equity)と呼ぶ。よって、RODよりもROEのほうが高くなるのがふつうだ。


債権者が求めるRODや株主が求めるROEなどの金利は、企業の経営者からしてみれば、達成しなければならないハードル、言い換えれば、会社経営にとってのコストである。より多くのリスクを取ってくれている株主にはより多く報いなければならないし、それほどリスクをとっていない債権者たちにも最低限の見返りを出さなければならない。


したがって、経営者から見たRODはCOD(負債コスト: Cost Of Debt)、ROEはCOE(株主資本コスト: Cost Of Equity)と呼ばれる。両者は同じものだが、資金の出し手と受け手という立場によって見え方が変わるのだ。

まず、銀行からの借り入れ金に対するコストは200万円(=1億円×2%)、株主資本にかかるコストは1600万円(=2億円×8%)だ。全体で1800万円のコストがかかることになる。


3億円に対して1800万円のコストがかかるので、百分率で表せば6%(=1800万円÷3億円)だ。つまり、あなたは集めた3億円に対して、年間6%のリターンを生み出していくことを求められているというわけだ。


このように計算される平均のコストは、WACC(加重平均資本コスト: Weighted Average Cost of Capital)と呼ばれる。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160517#1463481859