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ある日、突然捨てられる会社〜ユニクロ、マックの失敗は他人事ではありません  人は飽きる——その事実から逃れられる経営者はいない | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]

あんなに光り輝いていたブランドも、消費者の信頼を失うのは一瞬だった。デフレ下で大成功を収めた企業ほど、現在、苦境に喘いでいる。彼らはどこで何を間違ったのか。ビジネスの潮目が変わった。

東京近郊にあるユニクロの中型店舗の店長(20代)の悩みは深い。


「かつては平日でも開店前から行列ができていたと聞いたことがありますが、最近では年末のセール以外、そんな光景はありません。都心の大型店は立地も良く、外国人観光客が『爆買い』していくのでしょうが、郊外店は極めて厳しい。


とにかく新商品が売れなくなりました。最近は有名人とコラボしたTシャツやジョガーパンツ(裾をしぼったズボン)に力を入れているのですが、動きは良くありません。たとえ売れなくても、新商品はどんどん追加されるため、在庫が積み上がる。売り上げを保つために従来品を値下げせざるを得なくなります。そうなると値下げした商品しか売れず、新商品はますます売れない。まったくの悪循環です」

まず要因として挙げられるのは、度重なる商品価格の引き上げだ。


アベノミクスが始まって以降、デフレ脱却の可能性が出たことで、ユニクロは'14年に5%、'15年に10%の値上げを断行し、これが災いしました。ユニクロがこれまで売れてきたのは、安い割に機能性が高かったからです。たとえ価格以上に品質が良くても、安くないユニクロの商品を欲しいと思う消費者は多くないということです」(流通小売り専門の証券アナリスト・佐々木加奈氏)

ユニクロの不振には値上げよりも重大な要因がある。それは、ユニクロというブランド自体が消費者から「飽きられた」という事実だ。いったいなぜなのか。


流通業界の専門誌『2020Value Creator』編集長の田口香世氏は、商品から革新性が失われたことを理由に挙げる。


「たとえばユニクロヒートテックは、これまで女性に『ババシャツ』と呼ばれていた肌着を、おしゃれで機能的な商品に革新しました。素材も東レと一から開発し、それまでにない製品を生み出した。ところが、最近はそういうイノベーションがなくなっています。


ヒートテックもフリースも多くの人はすでに持っています。品質がいいため、頻繁に買い換える必要もありません。新しい商品が出たときは、『十人一色』で、みんなと同じ物でも多くの人が欲しがります。しかし、その商品が行き渡ると消費者の好みは『十人十色』になり、みんなと同じ物はもう欲しくなくなってしまうのです」

「かつてダイエー中内功さんはメーカーが持っていた価格決定権を奪い、『価格破壊』によって流通革命を起こしました。その結果、多くの庶民が欲しいものを安く買えるようになり、暮らしは豊かになった。


ところが、中内さんは徐々に消費者が見えなくなってしまいました。末期のダイエーは『何でもあるけど、欲しいものはない』と揶揄されるようになり、消費者から見捨てられたのです。


大衆はわがままで、消費者は移り気です。かつてのダイエーのように、イノベーションが止まると消費者は離れ、どんなに巨大な企業であっても衰退が始まる危険性に直面するのです」

ダイエーでは、中内さんがカリスマとして君臨し、一人で経営判断をする状況が続きました。そのうちに、後継者問題が出てきて社内が混乱し、最後は組織として機能しなくなった。ダイエーユニクロに限らず、すべての企業は消費者の目線を忘れずに、変化に対応しなければ生き残れない。


言うのは簡単ですが、これが実に難しい。とくにカリスマ経営者がいる場合、目線が消費者とズレてしまうと、修正することが困難なのです。


ダイエーはじわじわと衰退していった印象ですが、今のようにグローバル化が進んだネット社会では、衰退するスピードも早い。勝ち組と賞賛された企業があっという間に立ち行かなくなる事態もありえるでしょう」

株主からの過度の要求も問題だ。経営者は、株主から目先の利益を追求することを強いられ、それを優先することで、結果として消費者のニーズに応えることがなおざりになっていく。城南信用金庫前理事長(現相談役)の吉原毅氏が嘆く。


今のユニクロは拡大することが会社の目的になっているのではないでしょうか。国内市場の伸びがなくなり、海外展開を積極的にするようになって以降、その傾向が顕著な気がします。世界的な同業他社との競争に勝つことが、事業の目的になってしまった。柳井会長は'20年に売上高5兆円、経常利益1兆円を目指すと公言されていますが、そんなことは消費者には関係ないことです。


株主の期待に応えて会社を大きくしたい、もっと稼ぎたい—。そう考えることが経営者として正しいと思っているのだとしたら、残念ながらそれは病的と言わざるをえない。本来、経営者とは消費者にもっと良い物を提供したいということを考えるべきだし、そうした気持ちが一番強い人こそが経営者になるべきなのです


そう言う吉原氏が「飽きられない経営の第一人者」として挙げるのは、トヨタ自動車豊田章男社長である。


トヨタも一時期、利益至上主義に走り、大企業病に陥っていましたが、見事に持ち直しました。彼は社内の誰よりも自動車が好きで、就任後、『もっといいクルマづくり』をスローガンに、社内の雰囲気がガラリと変わったと聞きます。従業員もユーザーに喜んでもらえるいい自動車を作りたいと奮起しますから、消費者にも支持され、結果として業績もついてくる。2年連続で過去最高益を更新しています。


松下幸之助さんも『利益を目的とした経営者は視野狭窄になり、判断を誤る』といった趣旨の発言をしています。事業拡大ばかりを考えている経営者は、この言葉の意味をかみしめてほしい」

ユニクロに先んじて消費者に見捨てられ、今も苦境に喘ぐ日本マクドナルドホールディングス(以下、マック)でも、「飽きられる」プロセスは同様だった。


マックは'15年12月期決算で、過去最悪となる349億円の巨額赤字を計上。わずか4年前に132億円の過去最高益を叩き出した「リーディングカンパニー」は、一瞬で消費者の信頼を失った。


百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏が分析する。


「マックは原田泳幸前社長時代に、消費者の信頼を失う行動を取ってきました。かつてのコアなお客さんは、ハッピーセットのオモチャを子供が欲しがる家族連れでした。ところが、ナゲットに使われている鶏肉の賞味期限切れ問題によって、健康面でミソをつけた。子育て世帯が足を向けなくなり、それは今も続いています。そこでマックは値上げによって客単価を上げる戦略を取ります。すると、学生や主婦など、安い価格で長時間過ごす客の足を遠のかせることになったのです」


その結果、どの顧客に向かってどんな商品を提供するのかが不鮮明になり、客離れが進んでいく。

ビジネスとは何か。その原点に戻ることこそが重要だ。前出の吉原氏は「使い古された言葉かもしれませんが」と前置きをした上で、「感動」をキーワードに挙げた。


「お客様に感動を与えて、いかに喜んでもらうか。経営とは、感動を生む価値を想像し続ける営みと言っていい。それだけが『飽きられない経営』かもしれません。ただ、企業規模が拡大するにつれて、経営者はそうした経営の原点を見失ってしまう。マックも日本に上陸した当初は、大きな感動を日本人に与えました。ところが、収益率の向上を目指すあまり、消費者に利幅の高い商品を買わせることが目的になってしまった。これでは消費者が離れるのも当然です」

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160601#1464777923
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160528#1464431723
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160317#1458211788
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160112#1452595070
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150710#1436525071

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