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ヴェンチャー・キャピタルにとって肝なのは、あらかじめ算定(推定)した当該事業案件の2〜5年後の「企業価値」どおりにそれを持って行き、出来れば可能な限り素早くこれを実現することでマーケットへと手持ちの株式を極力高値で売り払うことに他ならない。つまり「一定の収益を上げるのであれば、どれだけ短い間でそれを実現出来るか」という意味での期間効率こそそこでは命ということになるわけであり、とにかく「早く、早く!」ということになるのである。

そのためヴェンチャー・キャピタリストたちのターゲットには必ず半導体、あるいはITが含まれていなければならないことになる。

ヴェンチャー・キャピタリストは一般に、ヴェンチャー企業を4つのフェーズに分けている。最初のフェーズはそれこそ「事業アイデア」のみのフェーズだ。この段階では製品・サーヴィスすらまともに形になっていないことが多い。次にようやく製品・サーヴィスが出来上がった段階が到来する。しかしまだマーケットへのアプローチが甘い。売れるかどうか分からないのである。そして第3のフェーズがようやくこれら製品・サーヴィスが売れ始めた段階である。ここに至ってようやく、当該企業が類似企業との比較においてどれだけの成長率を見込めるのかが明らかになるため、ヴェンチャー・キャピタルお得意の「将来の企業価値算定」が可能となり、投資が行われることになる。しかしヴェンチャー企業の側はとにかくヒト・カネ・生産設備が足りない。とりわけカネが足りなくなるのは常であり、「ピッチ」と呼ばれる次の資金調達が行われることになる。そして徐々に芽が出て来ると、投資を行うヴェンチャー・キャピタルの規模も大きくなり、かつこれらが合同に投資をし始めるのである。いわゆる「クラブ・ディール」である。そしていよいよ「新規株式公開(IPO)」あるいは「大企業による事業買収(M&A)」が見えてくると、大手金融機関系のヴェンチャー・キャピタルが登場するのである。そしてここに至ってたとえば具体的な上場準備へと作業が移り、ヴェンチャー・キャピタリストはめでたく手持ちの株式を売り抜け、「EXIT」ということになってくる。

しかし、先ほどの「自動車のための熱交換装置を開発しているヴェンチャー企業」についてはどうであろうか。聞くところによると、創業者はかなり癖のある人物であり、ステークホルダーを増やすだけの新規株式公開(IPO)や、あるいは虎の子の技術をみすみす売ることになるM&Aには大反対なのだという。そうなるとヴェンチャー・キャピタリストにとっての「ゴール」が描けない。したがって、彼らが持っているリスク・マネーは永遠にこのヴェンチャー企業の手元には廻ってこないことになる。

そこでヴェンチャー企業経営者たちはあの手この手を使って金策を練ることになる。その際最も使われるのが件の「バラ色のストーリー」を喧伝しては、地場の小金持ちに対して「儲け話」として自らを演出し、資金をひねり出すというやり方なのである。だが、事業案件が技術開発案件(R&D)」であればあるほど、最後の最後に投資分が回収出来るのは下手をすると十年後、二十年後かもしれないのである。そのため、最初はヴェンチャー企業経営者兼最高技術責任者(CTO)が語る熱い情熱にほだされて資金提供をした小金持ちも、次第にしびれを切らし、「いい加減、俺のカネを返せ」「詐欺だ!」と叫び始めることになる。こうした中でヴェンチャー企業経営者兼最高技術責任者(CTO)はリーガルな案件までをも抱え込むようになり、もはや経営どころではなくなってしまうのである。現に私はこの目でこうした悲劇に巻き込まれているヴェンチャー企業経営者たちを我が国で何人も見てきた。それがこの熱交換を巡る最先端技術を巡って、我が国の自動車セクターにおいて多大な雇用を創出することが目に見えていても、事態は全く変わらない。ただひたすら”放置”されているのだ。


「何かがおかしい」のである。マネーは今、量的緩和によって金融機関で、さらには円安誘導で設けた輸出産業を中心に事業会社で、それぞれだぶついているはずなのである。しかし本当に意味あるイノヴェーションを行い、我が国全体にとって、すなわち私たち日本勢の将来的な「食い扶持」になるかもしれない技術の開発を日々粛々と行っている御仁たちには永遠にそのだぶつくマネーが廻って来ることはないのである。それがたとえ将来性に富んでいたとしても、「半導体」「IT」が絡まない以上、従来型のVC(ヴェンチャー・キャピタル)は歯牙にもかけない。他方で金融機関はそもそも相手にせず、最後は地場の篤志家たちによっても「詐欺師」扱いされてしまう。「そんな時だからこそ政治だろう」というかもしれないが、所詮、自分自身で起業経験、あるいは企業経営経験のない政治家たち、あるいは行政官たちにこの苦しみが分かるはずがないのである。結果として金融機関紐付きのシンクタンクが書いたレポートどおりに、「中小企業の資金需要は乏しい」と語り、それで話を終えてしまうのである。政治献金を大量にしてくれるのは大企業であり、中小企業ではないという頭がそこにはある(無論、中小企業はある意味、良いカネ蔓であるが、しかし面倒といえば面倒なことも事実なのだ。「秘書」にでも任せておけばよい)。

いかがであろうか。以上が私たちIISIAが日々、「行軍」するかの様に我が国の各地域を周り、「地域グローバル経営者・起業塾」という柱を立てて廻っていることの本旨なのである。明日は必ず読者の住まわれている地域へと私たちIISIAのキャラバンは訪れる。

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