アメリカのメディアがこのニュースに注目しているのは、「ISISが次なる段階に進んだ証拠」と捉えているからである。今回の人質事件は、組織の中心地であるイラク・シリアを離れたバングラデシュの地での人質事件で起こった。その事件にISISが犯行声明を出していることから、組織が中東だけではなくて、点々と広がりを見せ、国際的なネットワークを持ちつつあることに対する、脅威を説く論調が目立つ。
バングラデシュという国に暮らす1.6億人の多くがスンニ派であり、25歳未満の人口が多くいる。ISISが新たに人員をリクルートするには理想的な「マーケット」なのである。こうして国際的に点々と拡散していくテロを、従来の軍事行動によって止めることができるのだろうか、テロとの戦いは新たな局面に入ったのではないかというニュアンスが目立つ。
「ベンガリ(バングラデシュ人)はいるか」レストランに入った実行犯は、まずはレストラン内の人を二種類に分けた。ベンガリに対しては、「慌てる必要はない。ベンガリを殺すつもりはない。外国人だけを殺す」と述べた。そして、外国人の服装やアルコール対する嗜好などに対して「彼らのライフスタイルを現地人がまねる。イスラム教の浸透を阻害する」と不快感をあらわにした。
「彼らはスマートで、ハンサムで、教育されていた。彼らを見れば、こんな事件を起こすような輩とは信じられないだろう」との証言や、現地軍により鎮圧される直前のところでは、死を決意した実行犯が「僕らはいくよ。天国で会おう」と言い残してレストランのドアを開けたという証言などが載せられている。