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コラム:参院選、日本を変える「静かな転換点」に=永井靖敏氏 | ロイター

今回の参議院選挙は、政権選択選挙ではないため、盛り上がりを欠いた印象がある。メディアの関心が、東京都知事選の行方に向いてしまったこともあり、過去4番目に低い投票率となった。


この背景には、勝敗ラインや争点が分かりにくかったことがありそうだ。勝敗ラインについて、安倍晋三首相(自民党総裁)が「自公合わせて改選過半数を獲得」とした一方、民進党岡田克也代表は「まずは改憲勢力3分の2を阻止」という、異なる基準が設定された。


争点の1つとされていた、アベノミクスの成否をめぐっても、成長のためには構造改革が必要という点で与野党が一致するなか、これまでの成果については、それぞれ具体的な経済指標を挙げて異なる評価を下した。


そもそも、構造改革が経済成長に結びつくまでには時間がかかり、国内経済は、海外経済などの外部環境で左右されるため、経済指標で政策を評価することはできない。与党勝利の主因は、アベノミクスが国民に評価されたことではなく、与党の「野党に政権を任せることはできない」との主張が、野党の「改憲を狙う安倍政権の暴走をこれ以上許すわけにはいかない」との主張よりも、国民の心に響いたことにあったと思われる。


構造改革よりも容易な選択肢>


とはいっても、選挙結果は重要だ。安倍政権は、これまでの政策運営に自信を深め、成長拡大を目指した政策運営を続けよう。「アベノミクスのギアを2段も3段も上げてエンジンをふかす」と主張し、成長と分配の好循環を発生させることで、名目国内総生産(GDP)600兆円経済を目指している。


すでに与党内で、最低でも10兆円超の補正予算を出すべき、との声が出ている。参議院選挙で民意を得たと表明することで、財政政策主導による、従来型の政策運営を続けそうだ。


今回の参議院選挙で、憲法改正に前向きな政党を含めた「改憲勢力」で、非改選と合わせた、憲法改正の発議に必要な3分の2の議席を得たことも、財政政策頼みの政策運営につながると思われる。政治資源が改憲への取り組みに割かれ、構造改革に手が回らなくなる恐れがあるためだ。


その意味で、今後の、安倍政権の政策の優先順位に注目する必要がある。安倍首相は10日夜のテレビ番組で、憲法改正に関して、「憲法審査会で議論をし、国民的な理解が深まるなかで、どういう条文をどう変えていくかについて収斂(しゅうれん)していくことが期待される」と、改憲を意識した発言を行っている。


今回の参議院選挙では、憲法改正自民党の「隠れ公約」であるとして、野党から批判を受けていた。2014年の衆議院選挙用の政策パンフレットでは、「憲法改正」を6つある政策の大項目の1つに掲げていたが、今回のパンフレットでは、大項目を再分類したうえで、その大項目の1つ(「国の基本」)のなかに、盛り込む形で表記している。安倍首相は参議院選挙直後のため、改憲について控えめな発言にとどめたが、今後、政策課題の上位に格上げする可能性がある。


憲法改正は、少なからぬ政治資源の投入が求められる。2013年12月に特定秘密保護法、2015年9月に安全保障関連法案が成立する過程で、国会が紛糾し、構造改革に対する取り組みが遅れた経緯があるが、改憲はその比ではないだろう。財政赤字は、国民の将来不安を高め、世代間不平等を拡大させるなど、様々な問題があるが、安倍首相は、抵抗勢力からの反発が予想される構造改革よりも、政治的には容易に発動できる財政政策に注力する可能性がありそうだ。


<日銀は債券市場の機能回復へ政策転換か>


一方、金融政策については、当面の間、与党勝利の影響はほとんどないと見ていいだろう。政府の財政政策と同時に、日銀が金融政策を実施すると効果的と指摘する向きもあるが、政府が日銀に効果的な政策運営手段が残っていると考えているとは思えない。


安倍政権はすでに日銀と距離を置こうとしているようにも見える。今回の参議院選挙用の自民党の政策パンフレットでも、金融政策に関する表記は削除し、「機動的な財政政策を進めるとともに、成長に資する構造改革を加速」とするのにとどめた。民進党がマイナス金利政策をアベノミクスの失敗と位置付け、マイナス金利の撤回を参議院選挙の重点政策の1つに掲げるなか、自民党は金融政策を選挙の争点から外すことに注力したようだ。


この背景には、マイナス金利の評判が悪いことがある。日銀の積極的な金融緩和は、円安・株高につながっていた段階では、多くの国民から支持されていた。エコノミストの間でも、物価安定目標の早期達成は不可能とした予想が多いなか、これまでのデフレマインドを払拭(ふっしょく)するためには、期待の抜本的な変化を狙い、大胆な政策を発動することが必要としたプラスの評価も少なくなかった。


ただ、物価安定目標の実現性が遠のき、円安・株高も一巡するなか、マイナス金利政策の導入により、「私たちの預金が減る」という誤解が、消費マインドに悪影響を与えている可能性も指摘されている。今後も政府が、日銀に対して追加緩和を要請することはなさそうだ。


逆に、将来的には、安倍政権が積極的な財政政策を打ち出す分、日銀は金融政策を発動する必要性が低下したと考える可能性もありそうだ。これまでの日銀の国債大量買い入れは、政府が財政規律を守ることを前提に実施された。財政が健全化すれば、物価安定目標達成後、買い入れ額を減らしても、長期金利の急騰を避けることができる。


長期金利には本来、財政の健全性に対する評価を示す機能があるが、日銀の国債大量買い入れにより、現在その機能は完全に失われている。日銀は、物価安定目標の早期達成を目指し、当面緩和的な政策運営を続けようが、政府が財政政策に注力するようになれば、将来、債券市場の財政規律に対するチェック機能回復を目指した政策運営に転換する可能性を無視することもできないだろう。


今回の参議院選挙は盛り上がりを欠いたが、改憲の行方とともに、財政・金融政策面でも、日本の将来を左右する一大イベントだったのかもしれない。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160711#1468233255
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160710#1468147228

会談の中でバーナンキ前議長からは「財政政策で名目GDPを上げるとともに、それと協調して金融政策はやるべきで、日銀には金融を緩和するための手段はまだいろいろ存在するという指摘があった」という。


ヘリコプターマネーについては「特段の言及があったとは承知してない」と述べた。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160711#1468233263

なかなか終わらない安倍政権、長寿の秘訣は野党の不在

ロシア科学アカデミー極東研究所、日本調査センターのヴァレリー・キスタノフ所長は、この選挙から説明がつくのは野党の不在と国民が2006年から2012年にかけての首相交代劇に疲れたことの証として次のように語っている。


「次から次へ6人も首相が交代した時代があったが、その時安倍氏も2006年に首相に就任したとたん、翌年2007年には退任していた。このため今日の有権者の気持ちとしては何らかの政治勢力に長く働いてもらい、なんらかの変化を起こしてもらうチャンスを与えようというものではないだろうか。この場合、自民公明連立にそれを託しているわけだ。安倍氏が特別な期待を集めているわけではないことは世論調査の結果示されている。それに内閣支持率もそう高くはない。このため今回に関しては安倍政権の長寿の秘密は安倍氏が成功した政治家であったからではなく、社会面、アベノミクスで大きな成果をあげたからでもなく、単に野党が不在だったからだ。国民は単に投票する先が無かっただけの話で、民進党はかなりポピュリズム的なスローガンを掲げて2009年に政権についたが。3年の間に社会政策でも経済、外交政策でも完全に失敗し、2012年に不名誉な退陣をした。そして2012年の選挙で自民党が得た票は自民党に入れられたものではなく、失敗した結果に対する抗議のしるしとしてのものだった。だが民進党は非常に不運だったことは忘れてはならない。その政権時期に福島の原発事故があったからだ。政権はこのカタストロフィー、その結果を解決できず、これから引き起こされた多くの社会問題の難題をこなすことができなかった。このため国民は仕方なく公明と連立を組んだ自民党に票を入れたのだ。」


キスタノフ氏はこれと同じこと、つまり力強い野党の不在が今も繰り返されているという。キスタノフ氏は野党に見られるのは思想の不一致とぐらつきだとして、さらに次のように語っている。


岡田克也氏率いる民進党は具体的なプログラムを一切提示できなかった。この野党は民進党共産党社民党ともうひとつさらに小政党を内包したものだが、これはこんにち共通で唯一のプログラムを欠いているコングロマリットのようなものだ。ところが安倍氏は今回の選挙の勝利でアベノミクスが期待されたような生活の向上をもたらしていないにもかかわらず3期目の首相就任延長問題を提起できる。参院の3分の2の議席を確保し、衆院でもすでに3分の2の議席を持っている安倍氏憲法見直し問題を提起することができる。だがこのためには国民投票が必要だ。とはいえ世論調査の結果を見ると、国民投票がなされたとしても憲法改正が大きな成功を収める保証は一切無い。このため安倍氏はこの課題を解決するために就任期間のさらなる延長要求を突きつける可能性がある。これは就任第3期に持ち越すために主要なモチーフになりうる。安倍氏には他の野心的目的もある。2020年五輪招致で点数を稼ぎ、歴史に名を残すというものだ。」

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160709#1468061090