https://d1021.hatenadiary.com
http://d1021.hatenablog.com

セブン-イレブンが「売れるはずがない」からヒット商品を創造する秘密|セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問 鈴木敏文|ダイヤモンド・オンライン

こんな時代にあっては、過去の経験則から導き出した戦略を立てても意味がない。もっとも、私に言わせれば、そもそも変化しない世などあり得ない。1932年生まれの私が幼い頃は、少年ならば「将来はお国のために兵隊さんになりたい」と願ったものだが、敗戦によって「国民のための国」になった。活字に飢えていた時代は電波(テレビ)の時代へと変わり、さらにはネットの時代へと変貌しようとしている。


 特に戦中から戦後にかけての変化はすさまじかった。それを肌で感じてきたからか、私は「これから、世の中はどう変わるのか」という目で物事を見ることが、自分の自然な振る舞いになっているし、常に未来を見て、いま何をすべきかに考えを巡らすことが習慣となっている。


 しかし、こうした思考方法に慣れていない人は数多い。

 金の食パンの大ヒットは、パンの市場そのものさえ変えた。街には高品質の食パンを扱う専門店が登場し、大手のNBメーカーも高級食パンを発売するようになった。「高級食パン市場」が定着したのだ。


 だが、製品が発売された当日、私は開発担当者に「すぐにリニューアルに着手するように」と指示を出していた。金の食パンは、限定使用の小麦やモルト麦芽エキス)を使い、製造工程にはあえて大量生産には不向きな工程も入れるなど、細部にこだわり尽くして豊かな食感とおいしさを実現している。実際、際立ってうまいのだ。


ただ、おいしいものを売るときには、「飽きられる」ことを必ず計算に入れておかなければならない。おいしければおいしいほど、お客さまは続けて食べる。そうすると、必ず飽きるのだ。私はセブン&アイの会長をこの春に退任するまで、昼食には必ず自社商品を食べてきた。実際、私だって続けて食べると飽きるから、お客さまの気持ちは良くわかる。

多くの人は、何かを学ぼうと本を読んだり、ライバル社を熱心に研究したりする。しかし、私に言わせれば、何かを真似して成長しようというのは、一番危険なことだ。アメリカのチェーンストア理論の物まねをして、日本のGMSは総崩れになったではないか。

私は、同業のコンビニを視察して回ったことは一度もない。セブン-イレブンの社員たちにも、独自の発想でやるように、同じグループだからといってヨーカ堂のやり方を真似ないようにと厳命した。


ビジネスマンになっても相変わらず、ともすると学校のいわゆる暗記ものや、立派な答案を出すという発想で「勉強」する人は多いのではないだろうか。しかし、成功するビジネスは、これまでになかった発想や視点からしか生まれない。

仮説を立ててそれを実践し、効果を検証することがセブン-イレブンの土台だとお伝えしたが、その前提として、まずは変化の兆しを捉えなければならない。いろんな人たちからよく聞かれる質問の1つに、「どうやって変化を捉えているのですか」といったものがある。


 私のやっていることが、とてつもなく難しいことのように見えるのかもしれないが、私自身はまったく物事を難しく考えるタイプではない。むしろ、これだけ変化している時代にあって、物事を既存の延長線上に無理矢理当てはめて考えることの方が、よほど難しいのではないだろうか。


言うまでもなく変化は常にどこにでもあるし、誰にでも見ることができる。例えば、日本では少子高齢化が進み、老人の割合が増えている。これは新聞やテレビを見ていれば、誰にでも分かることだ。また、商品はどんどん豊富になり、質の競争の時代だから、質は限りなく良くなっていく。食べたいものしか食べない人が増え、贅沢にもなっている。


 そうした世の中の姿は、誰にでも見えているはずなのだ。人口の減少は、従来の仕事の延長で考えればマイナス要因だ。モノが売れなくなる、という議論は今も繰り返しされている。しかし、ここで単にがっかりするのではなく、視点を変えてみれば、チャンスと捉えることもできる。


 人口が減ることで、それに対応するための新しい仕事が生まれるからだ。例えばセブン-イレブンには、「セブンミール」という食事のお届けサービスがある。高齢になれば買い物が面倒になるし、野菜や肉をたくさん買って1人で調理して食べるのも億劫だ。おいしいお弁当を納得のいく価格で届けてもらえるならば、こんな便利なことはない。もちろん高齢者だけに限ったサービスでもない。


 そう仮説を立てて20年ほど前から取り組んでおり、今では1日20万食をお客さまにお届けするまでに成長した。セブンミールもおにぎり同様、最初は誰もが「そんなもの商売にならない」と反対していた。担当に異動を命じられた社員は、まるで島流しにあったかのような感覚で受け止めていたようだ。


 だが、世の中の変化から将来を考えると、ミールサービスという仮説は当然、あってしかるべきではないか。そして、どんなことがあっても事業にしていく執念があれば、必ず事業にできる。


 私がこうした変化を捉えるツール自体は、ごくありふれたものだ。新聞ももちろん読むが、私はよくラジオを聞く。といっても、「この番組を聞きたい」と指定して聞くのではなく、車での移動の最中などに、ラジオ番組を流し聞きするのだ。


聞くでもなく耳を傾けていると、時々、私の頭にパッと入り込んでくるフレーズや単語がある。そしてそれらが、私が探していたテーマに関して新しい視点を教えてくれたり、疑問への答えを導いてくれたりする。


 何かについて疑問を抱いたら、答えを知りたいと探し求める気持ちは良く分かるが、焦るがあまりに、既存の本などから安易に答えを引っ張ってくるようではいけない。私自身は、答え探しを焦らないようにしている。疑問を胸に抱き続けていると、ある日、突然のようにラジオからひらめきが得られたりするものなのだ。


変化に対応し続け、何か問題が起きたらすぐに切り捨てるのではなく、どう再生させるかを考える。私がセブン-イレブンで行ってきたのは、要はこの繰り返しだ。なにか目立つ“金字塔”を目標にして邁進する、というような仕事のしかたを、私はしてこなかった。それは第一線を退いた今も同じで、「引退したらあれをしよう、これをしよう」などという計画を、私は立てたことがなかった。


 変化への対応には、ゴールも終わりもないのだ。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160913#1473762910
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160912#1473676971
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160901#1472726055(まったき真理であり常に公正である神を信じ、信仰に帰依し、人知を超えた難解な問題に対する深い知識を無理に得ようとはしない。)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20130905#1378379673(至極の大乗、思議すべからず。見聞触知皆菩提に近づく。)