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買収者選び 広い裁量権 東大教授 田中亘氏 :日本経済新聞

No.162 人的資本論を原点に日本の会社法学の最前線を切り開く | M&A情報・データサイト MARR Online(マールオンライン)

−− 先生は法制審議会会社法制部会に参画されました。少数株主の救済手段として新たに組織再編の差止請求制度が導入されます。どんな議論がありましたか。


「組織再編の差止めは以前から学説上議論があったところです。現行法上、株主総会決議を省略して行うことができる略式組織再編の場合には、株主総会の代替的な救済措置として差止請求の規定(784条2項)が明示的に設けられているのですが、一般的な組織再編の場合は規定がありません。それで規定がない以上は差止めができないという考え方と、いろいろな解釈論を使ってできるという議論があり、今回、何らかの形で立法的な解決を図ろうとしたのです。審議の過程では、略式組織再編と同じように、対価の適正さ(相当性)に不服がある株主にも差止請求を認めるかどうか議論になりました。これに対しては、企業再編を萎縮させるとか、濫用される恐れがあるとかで経済界の反対もあったのですが、何よりも裁判所の委員から短期間で審理をするのは困難だという意見が出て、議論の方向性が決まったような気がします」

−− 「組織再編の差止めとなると、何百億円、何千億円といった大きな企業価値が問われる。仮処分の手続きでは、原審(1回目)の審理期間は2週間しかない。双方の主張立証に10日ぐらいかかるので、裁判所は3、4日で決定しなければならない」と。議事録をみると、裁判所の方はそうおっしゃっていました。


結局、差止請求をできるのは、組織再編に法令又は定款違反がある場合に限定し、対価の相当性は対象から除くことになりました。相当でない対価を交付することは、取締役の善管注意義務(330条)や忠実義務(355条)に違反するので、法令に含まれるとも解釈できるのですが、部会では組織再編の場合の法令違反には、善管注意義務違反や忠実義務違反を含まないと念押しをしています


−− 法文はまだ見ていませんが、略式組織再編の差止請求では784条2項は1号と2号があり、1号は法令又は定款違反、2号は対価の相当性について規定しています。組織再編の差止請求では1号だけで、2号はないと言うことですか。


「その理解でいいかと思います。2つの条文の比較から、一般の組織再編では略式組織再編のような対価の相当性は争えないと解釈できます。ただ、厳密に考えると不確実な点も残っています」

『会社法』(田中 亘)

P638

『一問一答 平成26年改正会社法〔第2版〕』

P337

『詳解 改正会社法―平成26年改正の要点整理』

P176

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160928#1475058896