「なぜ?」が腹落ちする快感に導かれた出口治明の読書人生・仕事人生 - 今月の主筆 出口治明 ライフネット生命会長 https://t.co/m8AitoehxC
— ダイヤモンド・オンライン (@dol_editors) 2017年4月3日
中学時代に一番心をひかれたのは近松門左衛門の『虚実皮膜論』という芸術論だ。「人生とは何が本当で、何が嘘かは分からない。虚実の薄い膜の間にすべての人生がある」。
僕の運命の岐路は、ここにあったような気がする。同じ司法試験の勉強仲間にT君がいて、彼が「同級生はみんな就職が決まっているが、俺たちも万が一司法試験に落ちたら困るのでちょっと会社回りでもするか」と誘われた。
翌日、セーターにジーパン姿でT君と京阪電車で大阪に出た。T君の下宿が三条京阪近くにあったのだ。京阪の終着駅(京都から見れば。本当は始発駅)の上にあったのが日本生命だった。T君が、「ここも学卒をいっぱい採用しとるぜ」と言いながら、「こんにちは」とアポもなしで人事課を訪ねた。
「僕ら司法試験に合格して正義の弁護士になるつもりですが、万が一ってことがありますから、滑り止めで訪ねてみました」。無礼な奴らである。遠慮も謙遜もなく、相手に対する尊敬すらもない。
そうしたら人事課で対応してくれた人が、「君ら賢そうやから当然司法試験に合格するでしょうが、ダメだったらうちに来てください」と言う。当時の就職戦線は完全な売り手市場だったので、採用する方が敬語なのだ。
司法試験の結果は、2人とも見事に落ちた。そこで、約束通り拾ってもらったのが日本生命だった。
歴史上の人物を見ても、周りの人たちを見ても、偶然に親の後を継いだり、偶然に入社したりするのが普通で、99%の人が自分は何がやりたいのかわからないまま死んでいく。
良い会社というのも、わかるはずがない。上場企業は3500社もあり、アナリストでさえどの会社が良いのかわからないのに、若者に見つけられるはずがない。
「じゃあ、どうすればいいんですか」と食い下がる学生には、「ご縁でいい」と答えている。
要するに先輩に誘われたり、本を読んで面白いと感じた会社があれば訪ねてみて、そこで受付の人の表情とかエレベーターに乗っている人の表情などを見て、楽しそうに思えたり、自分と相性が合うと感じたら、その会社に入社すればよいのだ。
余計なことを考える暇があるなら、勉強したり、本を読んでいる方がはるかにいい。
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