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山中俊治 - 日本デザインコミッティー

膨大な技術と文化の蓄積をベースに、巨大な資本と資源が投入されてなされる近代のものづくり、人類の生産活動には、重い責任がのしかかっている。数億年にわたって生物が蓄積した炭素を掘り尽くし燃やしてしまった責任、環境を改変することなくしては食糧すらも確保できないほど人口をふくらませてきた責任、それでもなおその膨大な人間全てを幸福にしたいという傲慢な願望。本来は恒星の独占物であり、地球上の生態系は決して利用しようとしなかった核エネルギーさえも使って、私たち人類はどこへ行こうとしているのだろう。
この重圧に答えられるもの、いや答えられないかもしれないが、わずかに希望を感じさせるもの、それが、人の美意識なのではないかと思う。美は、ひ弱な個人の中にしか存在しない淡い感覚であるが、傲慢な人類が心の片隅に育んできた、自然に対する畏敬であり、真理に対する渇望であり、幸福への規範である。それ故に今日、デザインは、全てのものづくりの原点となり、私たち人類の心のよりどころなのである。