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せっかくなら継いでから役立つ仕事をしようと、大学卒業後のわずかな期間でしたが当時の富士銀行に入行しました。我々が就職した1960年代頃は、銀行は学びの点からいっても非常に良い職場の代表でしたから。後々、同業者に聞いてみても銀行出身者が意外と多いですね。

虎屋にはたしかに長い歴史があり、その歴史が後ろ盾になってくれている面もあります。しかし、「今までと同じこと」をそのままやっているから今が成り立っているとは思えません。


 私が社長になった時も、あるいは10年前も、常に言い続けていたのは「大切なのは今」という言葉です。時代にはいつでも変化があります。だからこそ、その時々の今という時を大切に考えなくてはなりません。


 ある時までは「伝統は革新の連続である」と言っていましたが、いつからか「いや、待てよ。今やらなければいけないことを、精一杯やっているだけに過ぎないのでは」と思うようになってから、「革新」なんてたいそうな言葉は使わなくなりました。

息子にも言っていますが、年齢はもちろん、自分が育ってきた時代と今の時代は違います。基本的にはその時代の感覚で、その時代に合った人たちと作り上げていけば良いと思います。


 私は30代の時、なんでも「わかっていたつもり」だったのだと、40歳を過ぎてから気づきました。おこがましかったな、と。もちろんその時は最善を尽くしてやっていたことでの結果でしょうけれど、後々になってから、先輩方からかけられた言葉の意味を推し量れるようにもなりました。


 例えば、青年会議所に入っていたときに、東芝の社長・会長を歴任された土光敏夫さんやホンダの創業者、本田宗一郎さんといった方々とお話する機会があったのですが、「若い人をもっと信頼して任せなければいけない」と言われました。当時は心の中で「自分もそう思っている」と感じていましたが、後々になって振り返ると言葉だけではなく本当に任せてみたからこそ、「あの言葉の真意はこうだったのか」と気づくことができましたから。