https://d1021.hatenadiary.com
http://d1021.hatenablog.com


コンビニの店舗数は既存のコーヒー業界とは比較にならないレベルだけに、その影響は少なくない。最大手のセブンは約1万8000店、ローソンやファミマはそれぞれ1万2000店を展開しているのに対し、ドトールの店舗数が1400店であることを考えるとその巨大さが分かる。コンビニ各社のシェアからコンビニ・コーヒー市場全体の規模を推定すると約2000億円となるが、これはかなりの大きさである。


ちなみにスターバックスは情報が公開されていた2014年3月期時点において約1200億円の売上高があった。ドトールは全店売上高を公開していないが、直営店の売上高や加盟店からのロイヤリティ収入などを総合すると2015年2月時点で約1500億円の売上高があったと考えられる。つまり、コンビニ・コーヒーの規模はすでにコーヒー・チェーン大手を上回っているのだ。


コンビニがコーヒー事業に本格的に参入した場合、既存のコーヒー・チェーンが大打撃を受けると多くの人が予想したのもうなずける話である。


ところが不思議なことに、これほどの規模の競合が出現したにもかかわらず、既存コーヒー・チェーンは思ったほどの影響を受けていなかった。少なくとも現時点においては、コンビニ・コーヒーは既存のコーヒー・チェーンの顧客を根こそぎ奪っているという状況にはなっていない。それどころかコンビニ・コーヒーは、外で気軽に珈琲を飲むという習慣を定着させたという意味では、むしろ新しい需要を生み出したと考えてよいだろう。


このコーヒーでの成功体験から、同じように新しい市場を創造できるのではないかと考え、各社がこぞって参入したのがドーナツ市場なのだが、残念ながら今回はそううまくいかなかったようだ。

なぜ「コンビニ・ドーナツ」は失敗したのか。それは、潜在市場規模を見誤ったからである。


ドーナツが売れないのはコンビニだけの話ではない。既存のドーナツ・チェーンも業績不振に苦しんでいる。ドーナツ最大手ミスタードーナツを展開するダスキンの2016年3月期決算は売上高が1652億円、経常利益が67億円と減収減益だった。


ミスドを中心とした外食部門が足を引っ張っており、外食部門単体で見ると15億円の営業赤字になっている。このほか、日本に鳴り物入りで進出し、当初は店舗に長蛇の列が出来ていたクリスピー・クリーム・ドーナツも相次いで店舗を閉鎖している。


言うまでもなく、これまで日本のドーナツ市場はミスドがほぼ独占状態だった。つまりミスドの売上高はそのまま日本のドーナツ市場とみてよい。だが同社の売上高は年々減少が続いており7年で3割も縮小しているのだ。


これは何を示しているのか。


当初、コンビニ側はコーヒー市場と同様、既存のドーナツ・チェーンとの奪い合いにはならず、新しい需要を開拓できると踏んでいた。しかしミスドの全店売上高は914億円しかなく、コーヒーに比べると市場規模の絶対値が小さい。


小規模な縮小市場にコンビニという巨大な鯨が参戦するということになると、さすがにコーヒーの時のようにはいかず、一気にパイの奪い合いになってしまった可能性が高い。これはコンビニにとっても完全な誤算だろう。


ちなみにコンビニの成功モデルの一つとなったフライド・チキンも、ドーナツと同様、既存市場の規模は大きくない。最大手のケンタッキーフライドチキンが高いシェアを占めており、市場規模はおおよそ1200億円。コンビニのフライドチキンは600億円以上の売上高があると推定されるが、ケンタッキーの売上高が減ったわけではなく、市場全体が拡大した。つまり、既存市場の規模が同じでも、ドーナツとフライドチキンでは潜在市場の規模が大きく違っていたことになる。

これまでもコンビニ業界は大手3社の存在感が圧倒的に大きかったが、それでも地域ごとに特色のあるチェーン店が存在しており、商品ラインナップでも差別化を図る動きが続いてきた。しかし、ここまで寡占化が進んでくると、個性的なチェーンの維持はかなり難しくなってくる。近い将来は、どこに行っても同じブランドの店が並び、同じような商品ばかりという状況になっている危険性すら高い。


歴史を振り返ると、昭和の時代、日本でもいわゆる大型スーパーが普及し始めたが、商品価格はメーカーが一方的に決めるという硬直的な市場であった。こうした閉鎖的な状態に風穴を開け、大量調達によって安い商品を提供するというコンセプトで登場してきたのが、イオン(旧ジャスコ)やダイエー(一部店舗はイオンに移行)、セブン旧イトーヨーカ堂だった。


当時、こうした試みは流通革命と呼ばれていたが、思ったような展開はできなかった。日本では大規模小売店舗立地法(いわゆる大店法)の規制があり、安値販売のカギとなる大型店舗の出店が難しかったからである。


そこで庶民に安い商品を大量に提供するという流通革命の理想は諦め、現実路線としてコンビニに舵を切ったのがセブンだった。


折しも日本は人口減少社会に突入したこともあり、彼らは「脱チェーンストア理論」を掲げ、利用者のニーズにあった個性的な店舗運営に舵を切ろうと試みた。


この志自体は間違いではないのだが、現実は、各社横並びの商品ラインナップであり、ややもすると他の業界から顧客を奪うという消耗戦を続けている。一つの成功事例が登場すると、他社が次々にそれを真似るのは、ニーズの多様化に合わせた個性的な店舗運営が困難であることを、コンビニ各社自身が認識しているからにほかならない。


今後は大手による寡占化で画一化に拍車がかかる可能性すらあることを考えると、脱チェーンストア理論は絵に描いた餅かもしれない。


同じく流通革命の担い手として活躍してきた家具大手ニトリ似鳥昭雄会長は、最近のこうした脱チェーンストア理論に異議を唱えている。似鳥氏は工夫次第では、まだまだチェーンストアとしてマス市場を拡大することは可能だと主張している。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20170607#1496831611(逆2乗の法則の発見により、物理学者は何らかの変化を認めたとき、その発生源と発生源との距離の関係を調べ、それらが逆2乗の法則に当てはまるかどうかに関心を持つようになった。)

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20170606#1496745351
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20170505#1493981087
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20170413#1492081427
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20170310#1489142960
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20161216#1481885584
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20161213#1481625392
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160920#1474368196