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この裁判は、神奈川県内の私立病院で勤務していた40代の男性医師が、5年前に解雇されたあと、病院を運営する医療法人に残業代の支払いを求めたものです。


雇用契約では、年俸の1700万円には残業代を含むことが合意されていましたが、このうち、いくらが残業代にあたるのかは明確に示されていませんでした。


医師側は、残業代と通常の労働時間内の賃金が区別されていなければ、労働基準法の基準を満たす残業代が支払われているかどうかを確認することができないとして、合意は無効だと主張しました。


1審と2審は「年俸は相当高額で、残業代がいくらかを判別できなくても不都合はない」として訴えを認めず、医師側が上告していました。


7日の判決で、最高裁判所第2小法廷の小貫芳信裁判長は、年俸などに残業代を含むという契約を結ぶ場合には、通常の賃金と残業代を区別する必要があると指摘しました。そのうえで、「今回の合意では額を確定することすらできず、残業代が支払われたとは言えない」として医師側の主張を認め、東京高等裁判所に審理のやり直しを命じました。


7日の判決は、高額な年俸を得ている医師の契約でも、労働基準法の趣旨を尊重するよう求めたものといえます。

年俸や月給に残業代を含むという契約をめぐっては、これまでも裁判で争われてきました。


昭和63年に最高裁判所は、会社と従業員が基本給に残業代を含めることを合意していても、通常の労働時間内の賃金と残業代を明確に区別していなければ無効になるという初めての判断を示しました。


この背景には、残業代の額があいまいになると、企業に割り増しの賃金を支払わせることで、過重な労働を抑制しようとする労働基準法の趣旨が損なわれるという考え方があります。


その後も、デザイン事務所にコピーライターとして雇われていた人や、人材派遣会社の元社員などが同じような訴えを起こし、通常の労働時間内の賃金と残業代が明確に区別されていない場合には、残業代の支払いを命じる司法判断が定着してきました。


最高裁は7日の判決で、高額な年俸を得ている医師の契約も例外ではないと示すことで、雇用主に対して、労働基準法の趣旨を尊重するよう改めて促しました。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20170704#1499164372