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イラク北部のクルド自治政府は、先月、独立を求めて住民投票を実施し、これに反発するイラク政府は、双方が管轄権を争うすべての地域に部隊を展開して支配下に置くなど緊張が続いています。


自治政府トップのバルザニ議長は、混乱を招いたとして責任を問う声が高まる中、29日、演説を行い、これまで特例によって延長してきた任期をこれ以上延長せず、退任することを表明しました。
そのうえで、「イラク政府の軍事作戦は、もともと計画されていたもので、クルド住民投票を口実にしただけだ」と述べて、住民投票の正当性を強調しました。
一方で、これまでどおりクルド人部隊を率いていくとして、今後も自治政府の意思決定に影響力を行使していく姿勢を示しました。


バルザニ議長としては、12年にわたってとどまり続けたトップの座から退くことで、クルド内の対立の幕引きを図るとともに、イラク政府から一定の譲歩を引き出す狙いがあるものと見られます。

マスード・バルザニ議長は、クルド独立闘争を率いたムスタファ・バルザニ氏を父に持ち、40年近くにわたってイラククルド人社会のかじ取り役を担ってきました。


イラク戦争のあとの新しい国づくりの中で、2005年に正式に認められたクルド人自治区は、自前の部隊による治安の維持と、石油の収益や欧米からの投資による経済力を背景に、事実上の独立国と言われるまでの地位を築いてきました。


こうした「成功」を背景に2009年に再選されたバルザニ議長は、2013年に任期満了を迎えましたが、議会の決定で1度延期されたあと、2015年には、過激派組織IS=イスラミックステートの脅威を理由に再度延長が認められ、トップの座にとどまり続けてきました。


しかし、独立と安定を旗印にしながら独裁色を強めるバルザニ議長の手法に対し、野党は反発を強め、クルド内部での対立も次第に表面化していきます。


バルザニ議長がかねてから主張していた独立の賛否を問う住民投票を先月、強行した結果、イラク中央政府が軍事作戦に乗り出して多くの支配地域を失ったばかりでなく、クルド人自治区は国際社会でも孤立を深め、バルザニ議長の責任を問う声が高まっていました。

クルド自治政府を率いるバルザニ議長がイラクからの独立の賛否を問う住民投票を行う考えを示したのは、3年前、過激派組織IS=イスラミックステートが急速に勢力を伸ばしているさなかでした。


ISが北部の油田地帯のキルクークに攻勢をかけると、撤退を重ねるイラク軍に代わってクルド人の部隊が防衛に当たり、そのまま実効支配を続けました。


ISとの戦闘が激しさを増し、住民投票をめぐって大きな動きはありませんでしたが、モスル奪還作戦が大詰めを迎えていたことし6月、クルド自治政府住民投票を3か月後に実施すると発表します。


これに対し、イラク政府は、「国家の一体性を損なう」として住民投票を中止するよう求め、国内に多くのクルド人を抱える隣国のトルコやイラン、それにISとの戦いでクルド人部隊を支援するアメリカもイラク政府と同様の立場をとりました。


しかし、クルド自治政府は、こうした批判や圧力をはねのける形で、先月25日、予定どおり住民投票を実施し、賛成が9割以上を占めて将来的に独立を求める民意が示されたと主張しました。


これを受けて、イラク政府は、周辺国と連携して国際線の運航停止や国境の閉鎖などで対抗してきましたが、16日からはクルド側が実効支配してきたキルクークの油田地帯をはじめ、双方が管轄権を争うすべての地域に部隊を展開して支配下に置きました。


クルド自治政府イラク政府に対し、軍事作戦の中止と対話を求めるとして、住民投票の結果を「凍結」するとした妥協案を提示しましたが、イラクのアバディ首相は「無効以外は受け入れられない」として拒否しています。
さらに、イラク軍は、石油を輸出するためのパイプラインが通るクルド人自治区のトルコ国境地帯付近まで進軍して圧力をかけ続けていました。

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