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大嶋:会議やミーティングのとき、ノートに書き留める上で何か意識していることはありますか?


織山:見出しをつけて、その見出しに含まれる要素をその下に書いていくということは、意識というより、ごく自然にやっています。ピラミッドストラクチャみたいな感じで、整理しながら書くというのが染みついているんでしょうね。


大嶋:もはや頭の中がそういう構造になっている?


織山:それはあるかもしれません。だから、話を聞きながら、行や段を落として、適当に余白を空けながら書いています。


大嶋:その「余白の空け方」というのは織山さんの感覚の部分で、「頭のいい人のやり方だな」とも思うのですが、「どんな感じで余白を空けるのか」を、もう少し具体的に紐解いてもらえますか。


織山:そんな大げさなことではないんですが、話を聞いていると「ちょっと違う話になったな」とか、「前の部分と繋がらなくて、何か省略されているな」とか感じることはないでしょうか。


 会議をしている場面なら、大前提として「この会議の目的は何?」という部分がありますし、「最終的な成果はどこにあるんですか?」「その根拠は何ですか?」「どういう判断基準によって、そう言ってるんですか?」などいろいろと感じることがあるはずです。


 そういうことが省略されていたり、抜けていたりすると、余白として残しておきます。


大嶋:すると織山さんは、余白として残っている部分を、あとで質問するという感じですか?


織山:そうです。会議やミーティングの場合、余白が埋まっていないというのは、それだけ話が不十分だということですし、ストラクチャになっていないというのは、会議としての質が悪い証拠ですよね。


 私はそういう会議はしないようにしています。


大嶋:会議でとるノートが、書きながらピラミッドストラクチャになっていて、話の構造や不足している要素が見えるようになっているんですね。


織山:そもそも余白もなく、びっしり書いていると、後で「追加したい」と思ったときに書けないし、面倒じゃないですか。そういう意味でも、適度に余白を持たせながら、見出しを立てて、構造的に書いていくというのが私の自然なスタイルです。

大嶋:ピラミッドストラクチャを頭の中でイメージしながら、余白をとりながら書いていくというのは、マッキンゼー時代から始めたものですか?


織山:いや、それは中学の頃からやっているんですよ。ある同級生のT君が日本史の授業のとき、そんな書き方をしていたんです。


 大事な要素は見出しとして書いておいて、残りの要素は枝葉として整理しながら記入していく。そうすると、ノートを見返したときに内容をすぐ理解できますし、覚えやすいんです。これはいい方法だということで、それ以来ずっと続けていますね。


 私は大学は文系だったのですが、何か仮説を立てるとき、1つの項目に付随する要素をその下に3つ書いて、それを一つひとつ検証していました。いわゆるピラミッドストラクチャの考え方、ノートの書き方というのは非常に重宝していたのです。


大嶋:中学生の頃からやっていたというのはすごいですね。それだけ年季が入っていると、確かに、頭の中がピラミッドストラクチャになるわけですね(笑)。


織山:自然に訓練されていたという部分はたしかにあります。でも、それってむずかしいことではなくて、たとえば、エピソード記憶ってありますよね。インデックスをつけて保存しておいて、そのインデックスを思い出すことで、付随する要素も引っ張り出されるというメカニズムです。その仕組みを、そのままノートの上で再現しているだけですから、何回もやっていれば、誰でもできますよ。


大嶋:私たちの記憶のメカニズム自体が、そういうふうになっているんですね。


織山:それをいろいろと応用しているだけの話です。プレゼンの内容を考えるときも、言いたいことを3つ挙げて、それをサポートする要素を3つ挙げて、さらにそれをサポートする要素を3つ挙げる。そうやって「3×3」で9個になれば、プレゼンの下準備は終わりです。

大嶋:織山さんは、どんな場面でも、常にピラミッドストラクチャを意識しながらノートを取っているんですか?


織山:じつはそうではなくて、インタビューやお客様にヒヤリングするときは、ストラクチャとか、見出しとか、そんなことは一切考えず、聞いたことをそのまま書いていきます。


大嶋:聞いた内容を、すべて、そのまま書くんですか?


織山:原則、そうです。インタビューなど、一次情報の収集が目的の場合は、むしろ「まとめない」「整理しない」ということが一番大事になってきます。


大嶋:私も含め、つい構造を考えたり、まとめたくなってしまうのですが、それをしないことがなぜ大事なんですか?


織山:整理しながら書いてしまうと、後で読み返したときに「この人の本当の意図って何だったのかな?」とか、「どんな思考の流れがあったんだろう……」って思い返せなくなってしまうんです。


 たとえば私の場合、住宅を建てて実際にお住まいになっている方にインタビューをして、一緒に作った建物が「どんなふうに暮らしの中で生かされているのか」「どんな気づきがあったのか」などをヒヤリングします。そこで大事なのは、やはり微妙なニュアンスですよね。


 でも、インタビューの際、私がまとめて書いてしまったら、一番大事なニュアンスが抜け落ちてしまう可能性がある。だから、いわゆる一次情報というのは「そのままであること」「まとまっていないこと」がけっこう重要なんですよ。こっちが勝手に要約しちゃうと、説得力がなくなる。


大嶋:自分のフィルターを通してしまうことで、一次情報の生々しさが失われてしまうんですね。


織山:まさにそうです。自分のフィルターとか、自分の頭ってけっこう狭いものだから、その場では、相手の意図やニュアンスを十分にくみ取ったつもりが、あとから見返すと理解できていなかったりすることもあるんですよ。自分の理解を超えた世界ってありますから。


 でも、そのままの情報がノートに残っていれば、後で読み返したとき、「この人は、こういう意図で話していたんだな」「こんなふうに感じていたんだ」とわかることがあります。


大嶋:織山さんのように、頭の中でピラミッドストラクチャが出来上がっている人が、あえてそのまま書く、というのがとても新鮮で、興味深いです。それをきちんと使い分けることが大事なんですね。


織山:自分のわかっていることを再確認したり、整理するときはピラミッドストラクチャを使って、新しい情報を得たい場合には、そのまま書くという感じです。

大嶋:お話を聞いていると、情報を記録したり、まとめたりする場面でノートを使っているようなんですけど、アイデア出しをしたり、イメージを広げるときに、ノートを使いますか?


織山:書きながら考えるというのは、よくやりますよ。ただ、そういう場合は、適当な紙の裏にスケッチみたいに書いちゃいます。


大嶋:その場合、アイデアやイメージを文章で書くんですか? それとも、図とか、チャートですか?


織山:図で書くことが多いです。文章で表現できることって限られていますから。そもそも思考というのは、文章よりも、もっとビジュアルに近いものだと思うんです。たとえば、街で大嶋さんを見かけたとき、頭の中で大嶋さんの情報が文章的に思い浮かんでいるのではなくて、見た目とか、歩き方とか、全体の動きなどをビジュアルとして捉えて判断しているはずなんです。


大嶋:たしかに。では、その思考のイメージをビジュアルのまま、紙に書き出しているという感じなんですね。


織山:考えを書き出すときは、そういうケースが多いです。


大嶋:それを頭の中だけで考えるのではなく「書き出す」というところには、どんな意味や価値がありますか?


織山:頭の中だけで考えるのは限界がありますからね。おそらく、書き出すことで「自分に伝えている」んだと思います。


「おまえが考えていることはこういうことか?」と問いかけて、それを見て「ちょっと違うな」「こういう感じかな」と考え、修正しながらまた書いていく。そんな自問自答ができるところが、思考を書き出すメリットだと思います。頭の中だけだと、そこまで突き放して見ることができませんから。


大嶋:自分一人でありながら、ノートに書き出すことで、他者がいるみたいなやりとりができる。それだけ深掘りができるということですね。


織山:そう思います。「自分という他者」とキャッチボールしている感覚はあるかもしれません。そういう意味では、ノートに書くのは「分身の術」ですね(笑)。

大嶋:織山さんが愛用しているノートや筆記具についても教えてもらえますか?


織山:ノートはコクヨの横罫のものを使っています。罫の幅、大きさがしっくりきていて、ページを手でちぎれるところがいいですね。


 それとコクヨのノートは、ページをめくるとき指が切れないのがいいですね。これってさりげないけど、すごいノウハウがあるんですよ。海外製のカッコイイノートはいくらでもありますけど、案外、指が切れたりしますから。その点、コクヨのノートはいいです。万年筆で書いてもにじまないし。


大嶋:指が切れないというのは、ノート選びのポイントとしては初めて聞きましたけど、大事な要素ですよね。普段は万年筆をけっこう使うんですか?


織山:モンブランの万年筆はもう何十年も使っています。大学に入学したとき、お祝いとして父親にプレゼントされたものなんです。


大嶋:モンブランの万年筆って、そういうストーリーがあると、なおさらいいですよね。


織山:実際にも、太くて書きやすいですから。手紙を書くときは、ほとんどこれですね。


 あと、普段はクロスのボールペンをよく使っています。これも太くて、書きやすいという単純な理由ですね。


大嶋:色ペンなどはあまり使わないんですか?


織山:黒、赤、青くらいは使い分けています。強調したいとき、大事だと思った部分には、色ペンで線を引いたり、マルをつけたりはします。


 まあでも、筆記具については、そんなにいろいろ使わない方だと思います。こだわりというほどではありませんが、「気に入ったペンを長く使う」という感じですかね。


大嶋:最後に、織山さんに取って、ノートとは何ですか?


織山:ノートと言えばコクヨですね。指が切れないから(笑)。


大嶋:なるほど(笑)。では「何のためにノートに書くのか」と問われたら、どう答えますか?


織山:やっぱり「忘れないため」ですよね。シンプルですけど、そういう目的が一番です。

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