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 知的戦闘力を高めるためには、何を学べばいいのでしょうか? テーマは自分の興味や仕事に従って自ずと決まってくるわけで、こちらについてはあまり悩む必要はありません。一方で、どんなジャンルを学んでいくかについては、迷う部分もあるかもしれません。


 ここで共有しておきたいのは、まずは「自分をプロデュースするつもりで、ジャンルを選ぶ」ということです。自分をプロデュースするということはつまり、他の人にはない組み合わせを選ぶ、ということです。

 このクロスオーバー、つまり「掛け算を作る」というのが自己プロデュースのポイントということになります。時代を画するようなクリエイティブな業績を上げた個人や組織を振り返ってみると、その「立ち位置」は、他の誰も立つことができない、ユニークな要素の「掛け算」であることに気づくはずです。

 ここで非常に重要になってくるのが、交差点に立つ場合、掛け合わせるそれぞれの要素は、別にトップクラスでなくても構わないということです。たとえばアップルを取り上げれば、デザインという側面はともかくとして、テクノロジーという側面で世界トップクラスの企業であると考える人はほとんどいないでしょう。


 これは創業者であるスティーブ・ジョブズがいみじくも指摘しているように、アップルという会社は「リベラルアーツとテクノロジーの交差点に立っている会社」だということで、この掛け合わせこそが彼らのユニークなキャラクターの礎になっているんですね。


 ちなみに私自身の「掛け算」はなにかというと「人文科学と経営科学の交差点で仕事をする」ということになります。私のバックグラウンドは哲学・歴史・美術・音楽といった人文科学領域であり、この領域の勉強についてはまったく苦にならない……というよりも好きで好きでしょうがない。


 一方で、私が仕事として取り組んでいるのは組織開発・人材育成の領域であり、これを主に取り扱っている学問ジャンルは、経営学や教育学ということになります。そして、両者の交差点で仕事をすることを戦略としている私にとっては、両方のインプットが必要になるということです。

 どのような掛け合わせを作るかを考える際のヒントを一つ挙げるとすれば、それは「持っているものに着目する」ということ、これに尽きます。


 これはキャリア戦略にも関わることなのですが、多くの人は「自分が持っているもの」を活かそうとせず、「自分が欲しいもの」を追求してしまう。でも、そうやって追求したものが、その人のユニークな強みになるかというと、これはもうまったくならないんですね。


 もっとも大事なのは、「自分がいますでに持っているもの」を、どのようにして活用するかを考えることです。しかし、これがなかなか難しい。

 その人にとっての本当の強み、他の人にはなかなか真似のできない強みというのは、それが本当の強みであればあるほど、本人にとっては「できて当たり前、知ってて当たり前」であることが多いのです。だから、それを「あなたの強みってここですよね」と言われると「はあ、それは私にとっては当たり前なんですけど」と思ってしまう。


 一方で、周囲の人たちにはできるのに自分にはできないことに意識を向けてしまい、いわば「ない物ねだり」をしてしまう。


 しかし、ではその「ない物」を一生懸命に努力して獲得したとしてどうなるかというと、せいぜい「人並み」にしかならないわけです。しかし、これでは厳しい。なぜかというと、「人並み」のものには誰もお金を払わないからです。経済価値が生まれないんですね。