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 ビジネスの世界で成功したいと願う人であれば誰もが考えるであろうこの問いについて、実際に調査したのがスタンフォード大学の教育学・心理学教授のジョン・クランボルツでした。


 そして、クランボルツは調査の結果をまとめ、キャリアの8割は本人も予想しなかった偶発的な出来事によって形成されているということを明らかにしました。逆に言えば、長期的な計画を持って、その目的達成のために一直線の努力をするというのはあまり意味がないということです。


 クランボルツは、キャリアの目標を明確化し、自分の興味の対象を限定してしまうと、偶然に「ヒト・モノ・コト」と出会う機会を狭めることになり、結果としてキャリアの転機をもたらす8割の偶然を遠ざけてしまうと警鐘をならしています。


 クランボルツの調査からは、成功する人は「さまざまな出会いや偶然を、前向きに楽しめる」という共通項があることがわかっています。これを読書術に当てはめて考えてみれば、将来の目標を設定して、その目標から逆引きして読むべき本を決めてそれに集中するというのは、効果的でないどころか、むしろ危険ですらあると言えるでしょう。


「長期的な目標を決め、その達成のために一意専心に頑張るのは危険」という、このクランボルツの指摘は、今後ますます重要性を増すように思います。というのも、世界の変化がこれまで以上に速くなっているからです。

 スティーブ・ジョブズは、ビジネスウィークの記者から「あなたはどうやってイノベーションを体系化したのですか?」と聞かれて、「そんなことはしちゃだめだ」と即答しています。


 経営学の教科書とは逆に、人文科学全般の、あるいは自然科学における過去の大発見の過程は、イノベーションそのものをマネージすることはできないことを示唆しています。


 イノベーションが起こりやすい組織をマネージによって生み出すことはある程度できるかもしれませんが、イノベーションというのは花のようなもので、それ自体を人為的に生み出すことはできないのです。我々ができるのは、花が育ちやすい土壌と環境を整えて十分に栄養と日光を注いでやることだけです。

 ここで重要になるのが「何の役に立つのかよくわからないけれども、なんかある気がする」というグレーゾーンの直感です。これは人類学者のレヴィ・ストロースが言うところの「ブリコラージュ」です。


 レヴィ・ストロースは、南米のマト・グロッソインディオたちを研究し、彼らがジャングルの中を歩いていて何かを見つけると、その時点では何の役に立つかわからないけれども、「これはいつか何かの役に立つかもしれない」と考えてひょいと袋に入れて残しておく習慣があることを『悲しき熱帯』という本の中で紹介しています。


 そして、実際に拾った「よくわからないもの」が、後でコミュニティの危機を救うことになったりすることがあるため、この「後で役に立つかもしれない」という予測の能力がコミュニティの存続に非常に重要な影響を与えると説明しています。

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