ビジネスから、教育、家庭生活まで、あらゆるシーンで成功する人が持つ共通スキルとは? - 世界の一流企業は「ゲーム理論」で決めている https://t.co/Dc0GtUaTXS
— ダイヤモンド・オンライン (@dol_editors) 2017年12月11日
一因は、数学に対する彼らの依存にあったと考えられる。数学は論理と証明の上に築かれるものだ。数学的論証は多くの場面で直感に勝る、経験的観測にも勝る権威がある、と認識されている。しかし、数学が提示する「証明」は、踏まえた仮定や前提しだいでどうにでも変わってくる。現実世界の意思決定に数学を利用したいなら、その分析を補完する力として、世界の仕組みを理解し、展開されているゲームを正確に特定できなければならないのだ。
さらに根深い問題として、数学こそが状況に対する見方を歪めてしまうことがある。ある有名な研究では、被験者の大学生に企業管理者になったと想定させ、業績不振対策として何人の従業員を解雇すべきか考えさせた。業績を表ではなく方程式で説明することで、より「数学的に」提示すると、そうでない場合と比べて、解雇すべきとされる従業員数は多くなった。哲学科専攻の学生ですら、方程式という切り口で判断がゆだねられると、情け容赦ないクビ切り重役に転じたのである。
問題が数学で示されたことにより、解雇に対する視点が変わった。被験者は、そこにかかわる人間ではなく、業績に焦点を置いたのだ。それは正しい判断だと言うビジネスリーダーもいるだろう。感情や仲間意識はビジネスには無用なのだ、と。
いいや、違う。それは完全なる誤りだ。ビジネスで長期的な利益を出せるかどうかは、意欲にあふれる労働力があるかどうか、忠誠心の強い顧客基盤があるかどうか、そして信頼できるサプライヤーネットワークがあるかどうかにかかっている。次の四半期業績だけを見ているようであれば、そうした基盤を育てられるわけがない。
ビジネスを成功させたいなら、リーダーは人と人との関係性に投資しなければならないのだ。だが、具体的にどうすればいいのか。給料をあげれば従業員はもっと効率的に働く気になるのか。安売りをすれば客の愛情を買えるのか。どちらも、そんな都合よくはいかないと私たちは知っている。人は、賃金が低ければ低いほど、意欲に燃えて献身的に働くことがある(慈善団体のボランティアなど)。そして忠誠心の強い顧客ほど、高い価格に進んで財布を開く(MacやiPhoneの愛用者など)。慈善団体やアップルのようなビジネスは、労働者や顧客の情熱をかきたて、活用し、低い労働コストや高い利益を実現する方法を心得ているのだ。
同じ法則が、あらゆるビジネスに当てはまる。扱う商品がどんなに平凡であろうと、従業員や顧客との絆の強さは利益増大を引き出す力になる。だが、そうした関係性を育てるには、相手の真のモチベーションを理解するゲーム認識力が求められるのだ。隠れたプレイヤー、隠れた選択肢、隠れた連鎖関係を先読みできないせいで陥る落とし穴や、演じなくていいはずの失態も、ゲーム認識力があれば回避できる。戦争でゲーム認識を誤れば数千人の命が失われ、国家の運命すら塗り替えられるかもしれないが、ビジネスにおいてゲーム認識を誤る場合も、数百万ドルのコストが生じ、組織が大きく停滞することとなるかもしれない。
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20171208#1512730313
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20170321#1490092811(バーリとミーンズによる研究)