日本電産のM&Aが過去57件すべて大当たりした理由【永守会長に聞く(2)】 - 『週刊ダイヤモンド』特別レポート https://t.co/PXNQ2xotjH
— ダイヤモンド・オンライン (@dol_editors) 2017年12月27日
――日本電産の成長は、積極的なM&A(合併・買収)がけん引してきましたが、創業以来の買収件数は57件に上ります。
今まで買収してきた会社が、伸びる市場に非常にマッチしてきましたね。どれも図星で当たっていて、「これは必要なかった」という会社は1社もないです。それは最近の売り上げの伸びで証明されています。
効果が見えるまでにやや時間が掛かったところもあるので、どれも買収した当時には「なんでこんな会社を買うの?」とずいぶん言われたもんですよ。
例えば、日本電産コパルはカメラのシャッターの会社。デジタルカメラの市場が小さくなり始めたときには、「一体どうする?」のと言われましたが、その技術はクルマ用のカメラに使われ始めて、新しい成長を迎えています。
それから日本電産シンポは減速機の会社。これも「モーターは、サーボ技術で回転を制御するようになるので、いずれ減速機の市場はなくなる」などと言われたものですが、ここへきてロボットに使われる減速機は、モノが足りないくらいで、お客の注文が殺到している状態ですよ。
それから東芝から買収した芝浦電産。家電用モーターで、いまは日本電産テクノモータに名前が変わっていますが、エアコンの省エネ化でモーターが大量に使われるようになった。中国では省エネエアコンに補助金が出るので、ものすごい勢いで注文が来ています。
いわば目先の1〜2年ではなく、5年先、10年先、あるいは20年先をみたとき世の中がどう変わるだろうかと、それに必要な会社を次々に買ってきたわけなんです。
今後は自然エネルギーも広がってくるので、太陽光や風力の蓄電・貯蔵が大事になる。そうした分野にも進出しています。
――特に、自動車の分野では、M&Aはどのように進めてきたのでしょうか。
M&Aは足りない技術を得る手段のほか、クルマの分野では、M&Aがなければ開拓に時間がかかるお客さんを獲得する手段にもなりました。
ホンダさんから買収したエレシスは、モーターには制御装置が必ず付くから買ったのですが、そこで、自動運転、自動停止の技術もすべて手に入れました。自動運転ならハンドルはすべてモーターが回すし、ブレーキもモーターが掛けます。
あとは、EVになれば、同時にセンサー技術が発達して、クルマはぶつからなくなるでしょう。従来のクルマはぶつかることを前提にしているので、分厚い鉄板をプレスしたものを溶接して作っていますが、EVになれば薄い鉄板で済むので、それを一発のプレスでピシャンとすれば、クルマの型ができてしまう。そういうプレスメーカーも買収しましたね。
――2017年は、米エマソンから、フランスと英国の事業を1200億円規模で買収しました。日本電産で最大のM&Aで、産業の分野も強化しています。
エマソンのフランスの会社は、世界一の発電機メーカー。発電機が伸びるということで買いました。それ以前にアンサルド・システム・インダストリーという風力発電用の貯蔵技術を持っている会社を買収していたので、その関連です。
この会社は、車載事業も持っていて、トラクションモーターも小規模だけど出荷実績があったので、今後につながりました。
――産業用のM&Aでは、それぞれがどう繋がっているのですか。
僕らのM&Aってパズルを組むように進めてきた。顔を作っていくなら、まずは目、鼻、口を揃えていく。そして目を買ったらまつ毛もいるなということで、全部関連している会社です。突飛な会社は1社もない。
産業用では、数年前からエレベーターの分野にも進出していて、米キネテックグループに続いて、エレベーター機器のカントンエレベーターを買収しました。エレベーターとキー部品で、完全なエレベーターが出来上がっていく。
それと、プレス機の分野も関連する会社を何社も買収しています。小さなプレス機から大きなプレス機までと、その生産ラインの前後にある装置を揃えている。
最初に買収した日本電産シンポがプレス機の会社で、そこが米国(ミンスター・マシン・カンパニー)を買収した。次に、スペイン(アリサ)と装置メーカー(ヴァムコ)を買収してプレス機関係の会社を揃えてきました。
もともとプレス機はサーボモーターの応用技術ですから、あまり手を広げて買収しているわけではないんです。
――30年の「10兆円企業」に向けて、M&Aはどのように進めますか。
10兆円に向けてのM&Aはぜんぶ決まっていて、これを買ったら次はこれを買う、これが買えなければ同じようなことをやっているこちらを買おうと、道筋がピシッと出来上がっています。
絶えず10〜20件と交渉していますが、われわれは銀行から提案されて買うということはなく、自分たちで買いたいものを決めている。
だから、最初は相手が売る気がないものを「売ってくれませんか」というところから交渉を始めるわけで、みんな3〜5年かかります。下手したら10年かかったものだってあるくらい。日本電産サーボなんて16年かかりましたよ。日立製作所の社長が4人代わってやっと売ってもらった。
大きな会社をどんどん買ってそれで売り上げを伸ばそうとしても無理があります。大きな会社を買ったら、それに関連する小さな高い技術を何社か買収する。あくまで今の技術に関連する会社です。
すべては、技術の複合化やシステム化のためのM&Aで、M&Aありきではありません。基本的にオーガニックの成長が50%、そして残り50%はオーガニックを伸ばすために足りない技術を補完するという考えでやっています。