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PASMOICOCASUGOCAなど各地域でバラバラに導入されている交通系ICカードについて、Suicaに合体するかたちで1枚に集約できるサービスが登場しようとしています。

Suicaの魅力はIC乗車カードとしてだけではなく、駅ナカ、街ナカの買い物に電子マネーとして使えることです。同じフェリカ型の電子マネーにセブングループのnanacoイオングループWAONがありますが、発行枚数はそれらを上回りますし利用頻度も引けを取りません。

Suicaのサービス開始から10年を経過した頃には、首都圏は、世界で最も進んだICカード先進地域といわれるようになっていました。

東京を中心とする首都圏ではJR東日本を中心とした鉄路が網の目のように張り巡らされ、鉄路ばかりでなく、街ナカの店でもSuicaや私鉄のPASMO、さらには楽天Edy、流通系のnanacoWAONといったFeliCa型の電子マネーがたくさん使われていたからです。

この頃にSuicaは、月間1億件という利用件数を記録しています。しかし、ほとんどの日本人はこうしたことを知らず、重要性にも気づきませんでした。

この新しいキャッシュレス世界の出現に目を見張ったのが外国人たちでした。日本に進出している外資系企業の支店や営業所には毎月のように本国から幹部がやってきます。

その人たちが一様にショックを受けるのが、新宿の朝夕のラッシュアワーです。何万人もの通勤客がSuicaをかざして整然と改札を通り過ぎる様子を見て目を丸くします。会社に戻ると、自動販売機にSuicaをかざしてコーヒーを飲む社員を見てまた驚くのです。

電子マネーは欧米で誕生したものですが、実際に普及・活用しているのは日本が一番でしたから、東京の様子を見て度肝を抜かれたのです。

度胆を抜かれた会社の1つがアップルでした。そのアップルが、2014年にSuicaに対してアプローチをかけてきました。

アップルはご存知のようにスティーブ・ジョブスが創業した世界一のスマートフォンiPhoneのメーカーです。そのアップルの幹部がJR東日本接触してきて、「次のiPhoneスマホ決済サービスのApple Payで使える電子マネーとしてSuicaを載せたい。力を貸してくれ」と言ったのです。

載せるといっても、単にアプリの1つとして加えるのではなく、「Suicaファースト」ですべてをSuicaのためにカスタマイズするという破格の条件でした。これに対してJR東日本側は、あまりにも唐突だったので最初は戸惑いましたが、実は願ってもない申し出だったのです。

順調に会員数を増やしているSuicaでしたが、Suicaが採用しているFeliCaは非接触ICの国際標準規格ではなく、日本以外では使えないガラパゴス規格としていずれ淘汰されてしまう運命にあったのです。

アップルにとって誤算だったのは、カード業界の盟主VISAとの話し合いが決裂したため、VISAに変わる信頼できるカード会社を探さねばならなくなったことです。そこで選ばれたのが、iD(ドコモ)・QUICPayJCB)というFeliCaネットワークのポストペイのメンバーたちでした。

Apple Payでは、この2つのブランドが決済全般を管理することになりました。そのためApple Payに入ったカード券面からVISAのマークは消え、新しくiDかQUICPayのマークが付いています。そしてこのマークの加盟店でしか、そのクレジットカードは使えなくなりました。

Apple PayにSuicaが標準装備されるようになれば、Suicaガラパゴスどころか世界中どこでも使えるようになるわけです。将来、Suicaが世界を席巻することもあり得るのです。