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大学の3大ミッションは「教育」「研究」「社会貢献」ですが、教育については、20年後には世界に貢献する高い志を持った学生が満ち溢れているという姿を思い描き、それを実現するために、洞察力や人間力を備えたグローバルリーダーの育成を基軸とした改革を進めることにしました。研究面では未来をイノベートする独創的な研究の推進、社会貢献については校友の力を生かした本学独自の地域貢献や地域との連携などを進めることにしました。本学は、自立した精神を持った市民を日本の隅々にまで送り出すという創立以来の理念があります。地域貢献や地域との連携は本来の使命でもあるのです。約63万人の校友が日本中・世界中で、またあらゆる分野で活躍されていますから、その力を教育研究や大学経営にも生かすことを強く意識したのです。

「Waseda Vision 150」の特色の一つは、「教育」「研究」「社会貢献」に加えて、「大学経営」を4つ目の柱に据えたことです。いくら素晴らしいビジョンであっても、それを実現する体制を整備しなければ意味がありません。大学がグローバル化を目指すならば、大学の組織、経営もグローバルスタンダードに則るべきです。こうした考えのもと、Visionの実現に向けて、財政基盤とガバナンスの強化、意思決定の効率化などを重視しました。これは画期的だったと思います。

「Waseda Vision 150」の策定に際しては、田中先生にも大いにご尽力いただきました。これまでの取り組みを総括し、新たな視点の下で発展的に改善をしていただければと願っています。

私が恵まれているのは、鎌田総長のもとで「Waseda Vision 150」の基盤ができ上がっていることであり、その国内外の評価が非常に高いことです。鎌田総長も言われたように、「Waseda Vision 150」の骨子は、大隈重信が示した早稲田大学の三大教旨である「学問の独立」「学問の活用」「模範国民の造就」に通じています。早稲田以外の教育関係者や、ビジネス界で活躍する早稲田の校友の方たちと話していても、「骨太のビジョンを、私立大学で、それも約50,000人の学生を抱える大規模大学でよくつくりましたね」「数値目標を示したのは日本の大学で初めてで、新鮮ですね」といった多くの高評価をいただいております。策定時には私も教務担当理事として参加しましたが、その理念をしっかりと引き継いだ上で、次のステージへと昇華させていくつもりです。

今後、「Waseda Vision 150」におけるより大きな成果をあげていくためには、プライオリティを明確にすることが肝心になるでしょう。私は特に次の3点を重要視しています。

一つ目は研究のレベル、教育の質をより高めていくこと。特に、既存の教員たちを超える優秀な若手教員の採用に注力します。優秀な学生や研究者を育てることが大学の重要な役割ですから、各分野に優秀な教員を招くことについて、一切の妥協はしません。

二つ目は海外広報の強化です。国内もさることながら、特に海外に向けた情報発信の強化が不可欠で、本学の研究教育や社会貢献活動などを積極的に伝えていくべきでしょう。

三つ目は財政基盤のさらなる強化です。今後は海外からも寄付を募るなど、財源を国内だけでなく、海外にも求める必要があり、この点においても海外向けの広報が果たす役割は大きいと考えています。

教務部長と教務担当理事の計8年間で、欧米やアジア各国の大学と交流を重ねた経験から学んだのは、世界に貢献する大学になるには、“覚悟”を固めることが重要ということです。覚悟とはつまり大学の意思であり、学生の父母や校友なども含めた関係者全員が同じ方向を向くことが必要です。本学が世界に貢献する大学になるには、学部によって方法論は違っても、全学部が同じ目標を目指すことが重要と考えています。最も優れた教授のリクルートと学生の選抜にはエネルギーと時間を惜しまない、という共通の価値観を全ての教職員が共有しているというハーバード大学から示唆を得ました。早稲田大学ハーバード大学と同じ目標を持つ必要はありませんが、早稲田の教職員が現在よりも優秀な教員と学生の確保に関しては、全員が一致して同じ方向を向きさえすれば、早稲田は世界で輝くようになると考えています。

中国の北京大学清華大学復旦大学上海交通大学、また、シンガポール国立大学などが国際的な大学へと急速に発展する様子を見ていると、各大学の覚悟の重要性がよく認識できます。

アジアの大学がランキングを上げる中で私が疑問を持っているのは、知的な力を再生産できるのかということです。世界の優秀な研究者を集めて、論文をどんどん出してランキングを上げても、そこでより優秀な人材を輩出できるのかということですね。それに対して本学が目指すのは、本学の研究を教育に反映させた結果、国籍を問わず、とにかく早稲田で学んだ学生が世界で飛躍することです。

本学の研究の素晴らしさ、教育の質の高さ、社会貢献の強さ、卒業生の活躍を海外に発信して、優秀な教員や学生を集め、優れた業績を残して世界的評価を上げ、それがさらに優秀な人材を呼ぶといった、好循環をつくることが重要です。

鎌田 現在そして今後の社会で求められるのは、未知の問題に果敢にチャレンジして、自分で調査・分析・検証をしつつ、新たな考え方を提案し、実践できる人材です。そういう人たちが、これまで本学から大勢育っていったので、卒業生の活躍が世界的にも高く評価されているわけです。そのためには、多様な個性を持った学生が、自分を磨き、それぞれの個性を自由に伸ばしていくことを許容し、奨励する教育環境が大切だと思います。

入学者の約70%が1都6県の出身者で占められている現実や、大学受験において偏差値が過度に重視されて、いかなる問題にも唯一無二の正解があるという前提の下で知識を覚え込むことに汲々とする受験生が増えていることを考えると、入試の多様化を図り、本学が育てたい人材、本学で学びたい人材を、きちんと集められるシステムをつくっていく必要があると思います。

学生の多様性を確保するためには、受験生のさまざまな能力を正当に評価しうるように、入学者選抜制度のさらなる多様化を図り、首都圏以外の受験生だけでなく、海外からの留学生、さらなる「学び」を求める社会人などが、さまざまなルートで早稲田にやってくるようにすべきです。

田中 入試は、受験生にとって大学を知る窓口であり、大学の教育方針について基本的な考え方を伝えるメッセージでもあります。最近、「政治経済学部が2021年度の入試から数学を入試科目に加える」と発表した際には、大きな反響を呼びました。これらの制度変更には「今後は、本学の各学部ではどのように頭を使うのか、どのように学んでもらいたいのかを示す」というメッセージが込められているのです。今後は、例えば社会科学系の学部で入試に数学を必修にする一方で、人文系のある学部の教育では数学的な頭の使い方を求めていないのであれば、入試に数学科目を必須にする必要はないと思います。未知の問題に挑む“たくましい知性”を育むには、こうした入試改革を通して、社会に本学が目指す教育の在り方を示すことが重要だと考えています。

アメリカのアイビリーグの大学などでは、受験する学生のSAT(大学進学適性試験)の成績はほとんど満点なので、それだけでは学生を選抜できません。そこで「創造力がある」「美的感覚に優れている」「論理性が高い」「社会貢献の意欲が強い」などの観点から、さらに特化した能力を持った学生を選んでいます。

https://d1021.hatenadiary.jp/entry/2018/10/05/200210(循環しないようにしたのは老人。)