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 牧田院長の主張で特徴的なのは、オイルの効用だ。

「パンは、油と一緒に摂ったほうが血糖値の上昇が緩やかになります。パスタも、オリーブオイルをたっぷりと使ったもののほうがいい。特にオリーブオイルは、主成分のオレイン酸ポリフェノールの一種のヒドロキシチロソールに、抗酸化、抗炎症などの作用があって、動脈硬化を防げます。ただし新鮮なエキストラバージンオイルを使ってください。酢と塩を混ぜれば簡単にドレッシングにもなるし、日々の調理油の代わりにも取り入れてほしい」

 一方、バターはダメなのかと思えば、

「バターには、動脈硬化や血管系疾患を招く飽和脂肪酸が含まれているから、避けたほうがいい、というイメージもあります。しかし、昨年の『ランセット』に掲載された大規模な追跡研究の結果、飽和脂肪酸を含む脂肪を摂ったほうが、かえって病気のリスクが減ることがわかりました。国立がん研究センターの研究でも、同じ結果が出ています。ただし、トランス脂肪酸が多く含まれるマーガリンは避けるべきですが」

「脂肪は細胞膜、ホルモン、胆汁を生成する大事な成分で、いくら食べても余ったものは体外に排出されるため、摂りすぎても心配要りません。事実、成人の平均で糖質は1日当たり350グラムも摂っているのに、脂肪は70グラム程度にすぎません」

 そして、こう続ける。

「焼肉で脂身を避けるとか、切り落として調理する必要はないと言えます」

 また、牛肉や豚肉にも飽和脂肪酸が多く含まれるが、先に触れられた「ランセット」の論文の通りなら、これも問題ないということになる。宗田マタニティクリニックの宗田哲男院長は、

「人間は一定量の脂肪を摂ると、食べたくなくなります。霜降りの肉など一定量しか食べられないので、問題ありません」

 と言うのに続けて、

「『ランセット』に載ったのはインパクトの強い論文です。それを受けた牧田医師の、脂肪は心筋梗塞など心血管病での死亡リスクと関連がなく、脳卒中にかぎれば、飽和脂肪酸の摂取量が増えるほどリスクが低下した、という主張は、まったくその通りだと思います」

 と話す。牧田院長もこう明言する。

「肉は食べ方次第では、どれだけ食べても太りません。糖質を含む衣がついたトンカツや唐揚げなどは避けたほうがベターで、しゃぶしゃぶや生姜焼きなど、茹でたり焼いたりするシンプルな調理法が望ましい。でも、調理法を工夫すれば、牛でも豚でも鶏でも、好きなだけ食べて問題ありません」

 問題ないだけでなく、

「牛肉には人間の体内で作れない必須アミノ酸が8種含まれ、筋肉や血液を作って、体内組織が正常に再生するサポートをしてくれます。豚肉は老化防止に高い効果があるビタミンB1が、すべての食品中で抜群の量を誇ります。鶏肉はビタミンB6がAGEの生成を防ぎ、カルノシンという成分に抗糖化作用があることも、最近わかりました」

 まさに若返りのための食材だというのだ。もちろん魚も推奨する。

「糖質がほぼゼロなので太る心配はなく、赤身も白身も健康にいい。特にサンマ、アジ、イワシ、サバなどの青魚は、脳や血管の老化を防いで血液をサラサラにする、DHAEPAなどオメガ3脂肪酸を豊富に含むのでお勧めです。マグロやカツオも、動脈硬化を防ぐタウリン、貧血を予防する鉄分やビタミンB2が豊富なうえ、ビタミンB6も多いので、糖化を防ぐ働きがあります」

 ただし食べる順番が重要。最初に、食物繊維のほかビタミンやミネラルも豊富な、新鮮な葉野菜を食べて胃を満たし、次に肉や魚、最後に糖質という順だと、血糖値が上がりにくいという。

「2015年、動脈硬化学会が食事によるコレステロールの摂取基準を撤廃しました。体内のコレステロールのうち食事が影響するのは1割にすぎないことが明らかになったからで、コレステロールを上げる原因とされてきた卵は、健康な人なら1日に2、3個食べても問題ありません」

 と牧田院長。これも常識が更新された事例だが、間食もそうだ。間食は避けろ、と教わってきた人が多いはずだが、食事はなるべく多数回に分けて食べたほうが、血糖値の上昇を招きにくいというのだ。すると間食も悪くないわけだが、牧田院長のお勧めは、

「ナッツは欧米の研究で心疾患を予防することがわかっています。ほかにはチーズがお勧め。血糖値がまったく上がらないので、間食しても太りません」

 加えて、牧田院長は、世の酒飲みにとってうれしい話をしてくれる。

「赤ワインは抗酸化作用が強いポリフェノールが豊富に含まれているため、動脈硬化やがん、認知症などを予防する効果があることは、よく知られています」

 と言うのに続いて、

「実は白ワインも、04年のドイツでの研究により、ミネラル成分の影響でやせられることがわかっています。ただし、糖質が少ない辛口を選ぶことが大切です。それに、赤にも白にも、抗糖化、抗酸化成分が豊富に含まれ、AGEを減らすことが期待できます。また、お酒に関しては、糖質が多いビールや日本酒は、最初の1杯程度にとどめておいたほうが無難ですが、辛口のワインやウイスキー、焼酎は、いくら飲んでも太る心配はありません」

 ところで牧田院長は、南イタリアのアッチャローリという地区に100歳以上の人が多く、長寿の原因は食生活だと述べた。実は、本誌(「週刊新潮」)は今年1月、この地区を含むチレントと呼ばれる地域を取材し、その食生活を2週にわたって特集した。百寿者たちの食卓を飾っていたのはオリーブオイル、青魚、新鮮な野菜、ワイン、ナッツ類、時に肉。また、彼らは不思議と糖分を控えていた。牧田院長の主張と符合するのである。

https://d1021.hatenadiary.jp/entry/2018/11/24/200522ハーバード大学研究者が指南する体に良いたんぱく質と悪いたんぱく質