優れたリーダーは、常に「先の先の先」まで見通しているということです。 - 二流のリーダーは「剛腕」を振るい、 一流のリーダーは「何もしてない」ように見える https://t.co/UcsaGmx8He
— ダイヤモンド・オンライン (@dol_editors) 2018年1月13日
そのときの自分の実力では対処しきれないような状況に置かれて、「なんとかしなければ」とお尻に火がついてもがくなかで、能力は無理やり広げられる。それが、人間の成長というものではないでしょうか?その意味では、苦しい状況に追い込まれるのは幸運と言うべきなのかもしれません。
私に求められたのは、社長の分身のような役割。社長に上がってくる案件のかなりのものは、いったん私のもとに届きます。そして、社長既読の文書は全部私のところに降りてきました。
毎日、何百枚もの書類にすべて目を通し、不明点や疑問点があれば関係部署に確認。場合によっては、書類の内容がより正確に伝わるように補足メモを付すなどして社長に上げる。家入さんから基本的な質問があったときには、その場で即答できなければ私の存在意義はありません。社長が最短の時間で最高の意思決定ができるように、サポートするのが私の役割だからです。
そして、家入さんの意思決定を受けて、それを関係部署に説明に回るのも私の役割。もちろん、通り一遍の説明や、ましてや社長の威を借りたような態度では反感を買うだけで、心の底から納得してもらえませんから、「理」と「情」を尽くして対処しなければなりません。トップと現場の円滑なコミュニケーションを実現する潤滑油のような役回りですから、地味で目立たない存在であることが基本。正直、気疲れを強いられたものです。
また、国際法律事務所、国際会計事務所、ファイナンシャル・アドバイザーなどの外部のチームと、社内の多くの部門からなる専門家によるプロジェクト・チームが買収プロジェクトの実務を推進していましたから、その事務局も務めなければなりません。数えきれないほどの仕事を同時並行で走らせながら、いつ社長から声がかかるかわからないので、緊張感から解放される暇もありません。
家入さんからマンツーマンでリーダーシップ教育を受けているようなもの。いわば「カバン持ち」のようなものですが、これに勝るリーダーシップ教育はないと言っても過言ではないのです。
学んだことはたくさんあります。
そのひとつが、優れたリーダーは、常に「先の先の先」まで見通しているということです。将棋の素人は2手先、3手先を読むのも一苦労ですが、プロの棋士は何十手も先を読むといいます。それに近いかもしれません。
家入さんは、仕事において「ある状況」が生じたときに、社内外にどのような影響が及ぶかを瞬時に、かつ緻密にイメージしていました。そして、影響が及ぶ関係者に対する「打ち手」を検討。物事をスムースに進めるために、常に「先回り」をしていたのです。
しかし、私にいちいち細かい指示などはしてくれません。
当然のことです。家入さんは、ファイアストンの買収という重要案件のみならず、会社のあらゆる問題について意思決定をするために、365日24時間深く深く考え続けているのですから、私に細かい指示をする時間など無駄。そのくらいのことを自分の頭で考えて対応できないのならば、私が、社長スタッフとして能力不足ということなのです。
まさに、オン・ザ・ジョブ・トレーニング。
先の先の先を読んで行動する上司に貢献するためには、上司のさらに「先」を行かなければならない。指示される仕事をこなしたところで、「プラス・マイナス・ゼロ」の評価にしかなりません。
そして、このときの訓練が、CEOになってからの私をおおいに助けてくれました。
なぜなら、リーダーシップを発揮して改革を推し進めようとすれば、社内には抵抗勢力が立ちはだかるのが常だからです。不用意にコトを進めれば、次々とカベにぶつかる。その結果、改革に膨大な労力と時間を注がざるを得なくなってしまうのです。改革がとん挫してしまうこともあるでしょう。
そのような事態を避けるためには、「先回り」する力が不可欠。先回りして、関係者に納得してもらいながらコトを進めることができなければならないのです。「これを改革しようとすれば、現場で何が起きるだろうか」と何十手も先まで読んで、先手先手で準備を進める。そのような対応を積み重ねることで、周囲が「このリーダーは先見性がある」と認めてくれたとき、「あのリーダーが改革しようとしているのだから、協力したほうがいい」という認識が組織に浸透。不要な軋轢を避け、よりスムースに改革を進める土壌が育まれるのです。
その意味では、ときにヒロイックに報じられる、社内の軋轢を”剛腕”で乗り切って「大改革」を行ったとされるリーダーは、もしかすると、「先見性」に欠けるがために、その改革を成し遂げるためには避けられない軋轢ではなく、避けることができた”不要な軋轢”を起こしただけなのかもしれない。その可能性を考えてみる必要があると私は考えています。軋轢を回避して「大改革」をスムースに成し遂げるリーダーは目立ちませんが、それは「先手、先手」を打つ能力に長けているからなのかもしれない。派手な報道に惑わされず、一見「何もしていない」ように見えるリーダーの手腕に目を凝らす必要があると思うのです。
ともあれ、「先」を見通す力こそが、リーダーシップの重要な要件です。考えてみれば、当然のことです。リーダーとは、メンバーを導く者です。誰よりもしっかりと「先」を見通すことができなければ、リーダーが務まるはずがないからです。
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20171228#1514457114
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20171220#1513767488