このところ教員の間で欲しいですねと言っているのは、たとえば哲学史でカントを1コマで講義するならこう、2コマならこう、とかアプリオリかつ総合的な命題の例はこれがいいとか、そういうかなり領域限定的な、でもそれぞれが相当な時間を費やして悩んでいるトピックについてのFD(もはやFDではない)。
— Kuni Sakamoto (@kunisakamoto) 2018年2月5日
「大学教員の教育能力を高めるための実践的方法」のことであり、大学の授業改革のための組織的な取り組み方法を指す。
戦後ベビーブーマーたちが学んだマスプロ教育では、大学の授業は教授の専門領域が一方的に話されるのみであったが、少子高齢化にともなって、大学が学生のニーズに応える教育をする必要に迫られるなかから、さまざまな試みが行われている。
高度職業人教育を目指して設立されることになった専門職大学院には、ロースクール(法科大学院)やビジネススクール(経営大学院)があるが、専門職大学院の設置基準のなかには大学院教員のファカルティ・ディベロプメントを義務づけていることも、この制度の普及が進む追い風となった。
ハーバード・ビジネススクールでは、講師・助教授・教授の授業風景をビデオで録画し、それを「ファカルティ」メンバーが全員でみて、授業の進行を評価するという仕組みができあがっている。
100人を超える大教室の授業は、大学の収益を支える授業形態であるが、学習者への教育効果は低い。ファカルティ・ディベロプメントに関する事例集などは、そうした大教室での「ちょっとした工夫」を集めたものになりがちだが、教員の自己満足という域をでない。抜本的には、少人数クラスにするか、ティーチング・アシスタントをつける、チュートリアル・クラスによって授業内容のフォローアップをする、といった制度の変革が必要になる。ティーチング・アシスタントは大学院博士課程の学生がなることを前提としているために、スチューデント・アシスタントという名称で学部学生を授業補助に使う大学も出ている。
下記の参考文献(洞口治夫 『ファカルティ・ディベロプメント』。)では「添削」を重視しており、日本の教育のなかで軽視されてきた基本的な教育方法であることに注意を喚起している。 また、実践的な方法として、拡張学習の方法を提唱している。合宿、工場見学、インターンシップ、インターゼミナール、社会人に向けたプレゼンテーションなどによって、学生の社会性を増し、論文にまとめて発表の機会を与える方法である。