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 明らかにマシンの不具合によって負けたときも、彼は一度もマシンのせいにしようとはしなかった。そして、最高のレースをして勝利を収めたあと、他のレーサーがレース場を去ったあとも、マシンについて100%納得できるまで技術スタッフと議論を重ねるとともに、レースでボロボロになったタイヤの状態を黙々とチェックし続けていました。彼は天才的なドライバーでしたが、その天才性を生んだのは努力であることを目の当たりにしたのです。


 彼は、まさにプロフェショナルでした。
 彼が思い描く「理想のドライビング」を実現するために、できうる限りの合目的的な努力をする。うまくいかなかったときも、「誰か」のせいにするのではなく、常に「自分の問題」として改善を続ける。0.01秒を競い合うとともに、ほんの少しのミスが命にかかわる事故を招くF1です。彼は、鋭敏に研ぎ澄まされた「繊細さ」をもって、自分の理想を実現するために、常に真剣勝負をしていたのです。


 そして、彼は常に仲間に対する配慮を忘れない人物でもありました。だからこそ、彼の「理想のドライビング」を求めて不断の努力をする姿に共感するメンバーは、きわめて高いモチベーションでチームワークを発揮していたのでしょう。彼はF1レーサーでしたが、もしもビジネスの世界に飛び込んでいたら、非常に優れた経営者になったに違いないと思ったものです。


 本書を書きながら、私は何度もシューマッハの姿を思い出しました。そして、こう確信するに至りました。「繊細さ」を束ねるのはプロフェショナリズムだ、と。私が思うプロフェショナリズムとは、「理想」を実現するために合目的的に必要なありとあらゆる努力をする精神。この精神が発揮されたとき、私たちの心に備わっている「繊細さ」「小心さ」などが総動員されるのだと思うのです。


 そして、プロフェショナリズムの源泉は、「理想を実現したい」という願いです。この思いの強弱が、プロフェショナリズムの有無を決定づけるのです。だから、現役世代のビジネスパーソンの皆様にも、「こんな仕事がしたい」「こんな会社にしたい」「こんな世の中にしたい」という心の底にある思いを何よりも大切にしてほしいと願っています。そして、その理想を実現するために、合目的的に努力する。そのとき、あなたの「繊細さ」は自然と束ねられ、「強靭なリーダー」へと成長し始めるのです。

 リーダーシップとはスキルではありません。理想を胸に合目的的に努力するなかで自然とつくり出されるものなのです。そして、それが生まれた結果として、豊かな人生が立ち現れるのだと思います。

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