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今月6日、都内で行われた日大と関西学院大の定期戦で、日大の選手が、ボールを投げ終えて無防備な状態だった関西学院大の選手に後ろからタックルし、この反則行為で関西学院大の選手は右ひざなどのけがで全治3週間と診断されました。


この問題で、けがをした選手が21日に警察に被害届を出して受理されたことを受けて、父親の奥野康俊さんが午後7時から大阪市内で記者会見しました。


奥野さんは、被害届を出した理由について「反則行為をした日大の選手が、なぜあそこまで追い込まれたのか、その1点を日大の監督にひと言、言っていただきたかった」と話し、そのうえで「きっちり奥深いものを解決しないうちは、日大の選手の皆さんもつらい思いをする」などと説明しました。


また、「真相解明をしていただき、アメリカンフットボールがフェアで安全なスポーツにしてもらうことが本当の願いです」と話しました。


この問題で、辞任した日大アメリカンフットボール部の内田正人前監督は19日、けがをさせた選手や父親などに直接謝罪しましたが、反則行為の指示については明言を避け、今月24日をめどに関西学院大に回答したいとしています。


内田前監督は62歳。日本大学を卒業後、母校に就職してアメリカンフットボール部のコーチを務め、2003年には監督に就任しました。


選手の育成に定評があり、関東学生アメリカンフットボール連盟の強化委員を務めた経験もあります。


2015年に一度退任しましたが、去年監督に復帰し、復帰1年目で学生日本一を決める甲子園ボウルでチームを27年ぶりの優勝に導きました。今回の問題を受けて今月19日にアメリカンフットボール部の監督を辞任しました。


内田前監督は現在大学の人事担当の常務理事を務め、また学内で体育会を意味する「保健体育審議会」の局長を務めています。


大学の関係者によりますと内田前監督は「人事を担当する常務理事で、人事権を握っているため、今回の問題で大学の職員は誰も意見を言えない」ということです。また「大学では理事長に次ぐ、実質大学のナンバーツーにあたり、理事長から最も信頼されている人物」ということです。

今回の問題のあと全体練習を休止している日本大学アメリカンフットボール部の選手たちは、21日夜、東京・世田谷区にあるキャンパスでミーティングを行い今後の方針などについて話し合いました。


今回の問題で、日大アメリカンフットボール部の春の試合はすべて中止となり、チームは全体の練習を行わず選手たちは自主的にトレーニングを続けています。


こうした中、チームのコーチや選手たちは21日午後6時ごろからキャンパス内に集まってミーティングを行いました。


NHKの取材に対し、ミーティングに参加したチーム関係者は、具体的な内容は明らかにしなかったものの、はじめにチーム全体で集まったあとポジション別に分かれて今後の方針などについて話し合ったということです。


またミーティングに内田前監督は参加せず、選手たちにはいまだ、辞任についての説明はないということです。


選手の1人は全体練習の再開時期について「見通しが立っていません」と話していました。


 テレビが繰り返し流す映像を見る限り、その行為は「反則」というより「犯罪」に近い。アメリカンフットボール日本大学関西学院大学の定期戦。試合開始直後、投げたパスが通らず空を仰ぐ青いユニフォームの関学クオーターバック(QB)に、赤いユニフォームの日大選手が背後から全力疾走で迫る。プレーが終わり、すっかり気を緩めている関学QBの背中に、日大選手は猛烈なタックルを見舞った。不意をつかれた関学QBは激しく仰け反り、頭は激しく地面に打ち付けられた。

 その後の報道によると、日大チームの他選手は「あのプレーは監督の指示だった」「(反則を犯した選手は監督に)試合に出たいなら(関学大の)QBを壊してこい、と言われていた」と証言している。日大の内田正人監督は、選手に猛練習を課す厳しい指導で知られる。悪質タックルのあった試合の直後も日刊スポーツの取材に対し、「うちは力がないから、厳しくプレッシャーをかけている。あれぐらいやっていかないと勝てない。やらせている私の責任」と悪質タックルを容認する発言をしている。


 悪質タックルがそれを命じたであろう監督と遂行した選手だけの問題ではないのは、当該選手がベンチに下がったシーンを見ればよく分かる。内田監督以外のコーチや仲間の選手たちが「よくやった」と言わんばかりに当該選手のヘルメットを撫でているのだ。相手選手を再起不能にしかねない悪質タックルがこのチーム内では「許容範囲のプレー」と認められているかのようだった。


 もしも相手チームの司令塔を壊した(怪我を負わせた)仲間を「よくやった」と褒めることが常識になっていたとすれば、日大アメフト部はまさに集団狂気に陥っていたと言わざるを得ない。

 まったく同じシーンに出会ったことがある。東芝粉飾決算を取材していた2015年、私は都内の某所で東芝原子力事業部門で働く現役の部長に会っていた。彼は匿名を条件に自分たちの部署でも決算を改竄し、利益を水増しした手法を明かした後、驚くべき発言をした。


「上に言われて利益を水増しした書類を提出したのですが、その時は罪悪感を感じませんでした」


 ではどんな気持ちだったのか。


「むしろ、自分の部を守った、会社に貢献した、という達成感を感じていました」


 悪質タックルを見舞ってベンチに戻った選手がヘルメットを撫でられたのと同じように、粉飾決算に手を染めた東芝のエリートサラリーマンたちも「グッジョブ!」と褒められたのだろうか。だとしたら、すべてが狂っている。

 冒頭の回答の中で、負傷した選手に対する謝罪を求めた関学大に対して、日大側はこのように釈明していた。


「ルールに基づいた『厳しさ』を求めたが、指導者の指導と選手の受け取り方に乖離が起きていた」


「『あれぐらいやっていかないと勝てない。やらせている私の責任』(日刊スポーツ)という試合後の内田監督のコメントは、選手に『厳しさ』を求めて発したもの。反則行為を容認する発言と受け取られかねないものであり、本意ではないため撤回する」


 言い訳の仕方も「チャレンジ」と称して社員に粉飾をけしかけたとされる東芝の経営陣とよく似ている。東芝粉飾決算東芝は「不正会計」と表現している)で被った損害の賠償を求めて西田厚聰佐々木則夫、田中久雄の歴代3社長(西田氏は死去)と2人の財務担当役員を訴えている。この裁判の中で佐々木氏はこう主張している。


「社長月例(社長と事業部責任者の会合)において『チャレンジ』と称される目標の伝達が行われる場合もあった。その意味合いはコーポレートからカンパニーに対する努力目標であり、その必達が要求されるものではなかった」


 田中氏も「チャレンジは『もっと頑張れ』という社長からの叱咤激励であり、経営者として当然の行為。それをしないのは経営者の怠慢」という旨の発言をしている。「『厳しくやれ』とは言ったが『相手に怪我をさせろ』とは言っていない」という日大の主張と酷似しているではないか。

 東芝で実際に出されていた指示は「頑張れ」というような生易しいものではなかった。


 東芝の利益水増しについて調査した第三者委員会の報告書によると、2012年9月27日の社長月例で佐々木氏はパソコン事業の担当役員に対し、同年上期(2012年9月期)の同事業の営業損益を「120億円改善せよ」と命じている。期末まで残り3日の時点で営業利益を120億円も押し上げることなど、まともな手段ではできようはずもない。


 要は「粉飾せよ」と言っているのであり、実際、担当役員は翌日「営業利益を119億円にする」と報告している。


 これは佐々木氏と担当役員の間で交わされた謀議ではなく、白昼堂々、浜松町にある東芝本社ビルの会議室で、大勢の役員、社員が見守る中で行われた「業務」である。たった3日で119億円の金が降って湧くという摩訶不思議を何十人もの人々が目撃していたのに誰も「おかしい」と言わなかった東芝の役員・社員と、誰が見ても相手の選手生命を奪い兼ねない危険なプレーをしたのにその選手を誰も咎めなかった日大ベンチの人々は、同じことを考えていたはずだ。


「組織(チーム)のためにやったのだから、仕方ない」

「One for All. All for One(1人はみんなのために。みんなは1人のために)」


 アメフトではなくラグビーでよく使われるフレーズだが、日本の組織ではこの理念が歪んで用いられることがある。


「全社一丸。滅私奉公」


 「私、ご本人(選手)とご両親から依頼を受けております。このような顔を出した形でお話をするということは異例かと思います」


 《弁護士の一人がマイクを握り、会見の趣旨や、会見に至るまでの経緯を話し始めた。通常は弁護士を伴っての会見を認めない日本記者クラブだが、選手が二十歳になったばかりの学生であること、社会的な影響などを考慮して弁護士の同席が許されたという》


「5月15日になって、(宮川選手の)お父さんが私のところに相談に来ました。この日、関学大の申し入れ書に対する日大の回答が出た。これを受けて、お父さんとしては謝罪をしたいけれども認められない、報道を見る限りは、監督やコーチからの指示があったことは否定されている。あまつさえ、本人が(指示はなかったと)否定しているとの報道さえありました。それをごらんになって、このままでは事実が明らかにならない。本人が勝手に突っ込んでけがをさせたことになってしまう。謝罪そのものが認められないのは納得がいかない。早めに実現させたいとして、私のところに相談にこられたわけです」


 「この日も実戦練習は外されました。練習後、コーチから『監督にお前をどうしたら試合に出せるか聞いたら、相手のクオーターバックを1プレー目で潰せば出してやるといわれた。クオーターバックを潰しに行くので、僕を使ってくださいと監督に言いに行け』と言われました」


 「つづけてコーチから『相手のクオーターバックと知り合いなのか』『関学との定期戦がなくなってもいいだろう』『相手のクオーターバックがけがをして、秋の試合に出られなかったらこっちの得だろう』『これは本当にやらなくてはいけないぞ』と念を押され、髪形を坊主にしてこいと指示されました」


 「(同じ)ポジションの先輩からコーチに『宮川にアライン(戦術上の隊形やポジション)はどこでもいいから、宮川に1プレー目からクオーターバックを潰せといっとけ』といわれた旨を告げられました。相手を潰すくらいの強い気持ちでやってこいという意味ではなく、本当にやらなくてはいけないのだと追い詰められて悩みました」


 「いろいろ悩みましたが大学でのフットボールにおいて、ここでやらなければ後がないと思って、試合会場に向かいました。試合のメンバー表に私の名前はありませんでした。その後、試合前のポジション練習時に井上コーチに確認したところ『今行ってこい』といわれたので、私は(内田)監督に対して直接『相手のクオーターバックを潰しに行くんで使ってください』と伝えました」


 「監督からは『やらなきゃ意味ないよ』と言われました。戻った私は、コーチに監督を話をしたこと、監督から『やらなきゃ意味ないよ』といわれたことを伝え、さらにコーチに対して『リード(本来のプレー)をしないで、クオーターバックに突っ込みますよ』と確認しました。コーチからは『思い切り行ってこい』と言われました。このことは、同じポジションの人間は聞いていたと思います。その後、試合前の整列の時に、コーチが近づいてきて『できませんでしたじゃ、すまされないぞ。分かってるな』と念を押されました」

 「試合後、スタメンと4年生が集められたとき、監督から『こいつのは自分がやらせた。こいつが成長してくれるんならそれでいい。相手のことを考える必要はない』と話がありました。その後、着替えて全員が集まると、監督から『周りに聞かれたら、俺がやらせたんだといえ』という話がありました。コーチからは、私が退場になった後、上級生リーダーが、私に相手クオーターバックをけがさせる役目をさせたことを済まなく思って『自分にもやらせて欲しい』と申し出たという話を紹介して『お前にそれが言えるのか』『お前のそういうところが足りないといっているんだ』といわれ、退場後に泣いていたことについても『優しすぎるところがダメなんだ。相手に悪いと思ったんやろ』と責められ、さらに気持ちを追い詰められました」


日大アメフト部 けがをさせた選手が会見【ノーカット】


関西学院大アメリカンフットボール部の鳥内秀晃監督は「選手が話した内容は非常に具体的で真実を語ってくれたと感じた。がく然としている。このようなことがスポーツの場で起きたこと自体信じられない。この事案はスポーツの範ちゅうを超えていると改めて感じた。今後は警察の捜査にも委ねられるだろう」というコメントを発表し、日大からの次の回答を待って部の対応を決めるとしています。


また日大の選手に対しては「行為そのものは許されることではないが、勇気を出して真実を語ってくれたことには敬意を表したい。立派な態度だった」とコメントしました。


スポーツ関係の法律に詳しい西脇威夫弁護士は「スポーツの試合中の行為で刑事責任が問われるのは非常に珍しい。ルールの範囲内ならば、たとえけがをしても刑事責任は問われないが、今回はボールを持っていない選手にタックルをしている。故意なら傷害罪や暴行罪に当たる可能性があり、警察の捜査が必要だと思う」と話しています。


そして「タックルをした選手は経験上、相手がけがをする危険性は認識できていたはずだ」と指摘し、「監督が選手に指示を出していたなら共犯や教唆にあたる可能性がある。選手への言い方やニュアンスチーム全体の雰囲気に加え、選手と監督の関係性なども考慮する必要があり、捜査する場合は幅広い関係者に話を聞くことが必要だ」としています。


さらに「ここ数年、スポーツ界で体罰やセクハラ、パワハラなどの問題がたびたび起こっているが、今後、今回のような問題が再び起きないように何ができるのかについても考えていかなければならない」と話していました。

実務における正犯性判断の課題 愛媛大学法文学部講師 田川靖紘