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 独裁傾向を強める反米左派、マドゥロ大統領の下で、月間インフレ率が50%超に上るハイパーインフレーションが続く南米ベネズエラ。市中に出回る紙幣が少なく、人々が日々の現金支払いに支障をきたす中、世界的に拡大するスマートフォンの決済アプリが急速に利用者を増やしている。クレジット、デビットカードよりも簡単な操作で利用できるアプリのビジネスは、混乱した同国経済の「陰の勝ち組」ともいえ、先進国に先駆けて「キャッシュレス社会」をもたらす可能性を秘めている。

 市内の市場で野菜などを売る店を構えるバージニア・ヘルナンデスさん(34)は、「ビッポの利用者は最近増え続けている。クレジットカードは支払いシステムが駄目だから」と説明する。店にはビッポでの支払いができることを示す表示があり、クレジットカードや現金での支払いをする客はほとんどいないという。


 インフラが老朽化し、通信事情が悪化しているベネズエラでは銀行間などでの決済システムに不具合が起きることがたびたびあり、クレジットカードでの支払いにも障害が出るのだ。

 マドゥロ政権は価格統制を進めたが外貨不足で物資の輸入が減少、医薬品や食料などが不足して物価が高騰し、看板政策の配給制度は崩壊状態に陥っている。


 財政的裏付けのない社会主義的バラマキ政策もあり、昨年11月以降ハイパーインフレーションが続き、今年1〜3月の月間インフレ率は約80%。国際通貨基金IMF)は今年のインフレ率(年平均)を1万3865%と予測したが、このまま続けば年率は10万%を上回る見通しだ。


 品薄の国営スーパーに比べ、富裕層向けの大型スーパーには、まださまざまな食料品や雑貨が並ぶとはいえ、値段が高くて一般労働者には手が届かない。


 紙幣は、技術低下、紙不足から印刷が国内でできないため海外に発注している。しかし、供給が超インフレに追いつかない。今月4日に予定されていた通貨ボリバルの単位を千分の1に切り下げるデノミネーション(通貨呼称単位の変更)も新紙幣の準備が整わず2カ月延期された。


 ボリバルの価値が低下する中、外貨不足を補うため政府は独自の仮想通貨「ペトロ」の流通を発表したものの、実際の流通を疑問視する声も出ている。


 不足した紙幣を市民が奪い合うような状況になっており、市中の現金自動預払機(ATM)には早朝から長蛇の列ができる。引き出し上限額は一度に2万ボリバル程度で日本円では約28円にすぎず、希少な現金が「商品」と化し、高値で取引される現象も出ている。

 カラカス市内の真新しいビルにあるビッポのオフィス。社員は思い思いのテーブルでパソコンを広げ、開放的な雰囲気が漂う。ランチスペース、社員の休憩用なのかハンモックもあり、殺伐とした外の世界とは隔絶されたような空間だ。


 「ビッポ登録利用者は昨年30倍に増えた。今年1〜5月は900%の伸びだ」


 最高経営責任者(CEO)のミゲル・レオン氏(62)は胸を張る。


 2015年に会社を立ち上げ、順調にアプリが利用できる企業などを増やしてきた。当初は小さなレストラン、商店などだったが、米国系のハンバーガーチェーンやピザチェーンなどにもサービスを拡大。アプリの登録者は約2万人、約2千の企業・店舗で利用可能になっているという。


 「現在利用できるのは主にカラカス市内だが、今後は全国に(サービスを)展開する」と鼻息は荒い。


 海外に比べ技術者の賃金が安く、電気代もほぼ無料であるなど、ベネズエラにはITベンチャーにとりいくつかの好条件がそろう。


 ただ、ネックなのは人材の確保だ。混乱や生活苦から逃れるため多くの人が国外脱出する中で、技術者たちも例外ではない。


 そのためビッポは、大学生を技術者としてリクルートし、国外へ出るまでにより高い技術力を習得させることを約束して人材を確保しているという。

 一方で、経済の専門家の見方は懐疑的だ。ベネズエラコンサルタント会社「エコアナリティカ」のシニアエコノミストジーン・ポール・ライデンツ氏(28)は「現金などに比べるとアプリ上の決済は全体の2〜2・8%にすぎない。利用者がすごい勢いで増えない限り、(全体への)影響はない」とする。

 ベネズエラの決済アプリ「ビッポ」の最高経営責任者(CEO)のミゲル・レオン氏が産経新聞のインタビューに応じ、「われわれが(インフレによる紙幣不足の)解決策となる」と述べ、新たな決済システムの将来性を力説した。一問一答は次の通り。


 −−ビッポのアイデアはどこから


 「私がショート・メール・サービス(SMS)の会社でCEOをしていたとき、株主の一人がテキストメッセージを使って税金を支払うというアイデアを出してきたのが原点。2011年のことだった。中南米諸国では銀行に口座を持っている人が少なく、ベネズエラで口座を持つ人は50〜55%だ。だが携帯端末は普及している。口座を持っていない人にも送金・決済サービスを提供する。このアイデアからスタートした」


 −−利用者数は


 「利用者数、登録店舗は増え続けている。利用先をさらに増やすよう努力しており、駐車場やモールも魅力的だ。(街中で)新聞などを売る売店は現金がなくて店を閉じているが、ビッポでそれを変えたい」


 −−アプリの急速な成長に驚きはあるか


 「これまでやってきて驚きはない。だが、今後も高い成長率があると期待している。巨大チェーン店(での利用拡大)は大きな成長を促すことになるし、(サービスは)社会全体に及ぶことになるだろう」


 −−紙幣不足は日々悪化している。ビッポにとっては好機か


 「(ビッポという)われわれの解決策は、使いやすいということ。そこが他の決済手段とは違うところだ。クレジットカードを使うには個人の秘密情報を入力しなければならないが、ビッポではそれをしないで済む」