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 「空気がいい、景色がキレイ」「山頂に立った時の感動が忘れられない」――。8月11日は「山の日」。日常生活では味わえない爽快感や達成感を求めて、人は山の頂上を目指す。だが最近、一部の山に人が集まりすぎるなどして、新たな問題も出てきているという。人と山は共存できるのか。日本山岳遺産基金の前事務局長で、各地の山の事情に詳しい久保田賢次さんが語る。

 心を痛めた地元の山岳愛好家らが立ち上がり、2014年、「携帯トイレ」の普及活動に乗り出した。携帯トイレは、用便を持ち帰るための凝固材入りビニール袋のようなもので、値段は1枚数百円。登山専門店などで買うことができる。


 用を足す際に必要な簡易ブースの設置を、地元の人々が環境省に提案して認められ、維持管理は地元の山岳団体で作る「美瑛富士トイレ管理連絡会」が担うこととし、2015年から3年間、試験的に運用した。


 2017年には、携帯トイレを持参し忘れた登山者のために小屋に常備するなどの施策も実施。効果はてきめんで、「トイレ道」などの周辺環境は大いに改善されたという。


 以上は、北海道「山のトイレを考える会」の仲俣善雄事務局長から寄せられた報告だ。この活動がきっかけとなり、今年7月、環境省、北海道、周辺市町などで構成する連絡協議会が「大雪山国立公園携帯トイレ普及宣言」を発表するなど、環境改善に向けた動きはさらなる広がりを見せている。

最近の山を巡る問題は、そうした開発主体というより、むしろ、自然の素晴らしさを認める人たちの行動が原因の一つになっている面がある。自然の価値を認め、積極的に親しもうとする人々の活動が、皮肉にも自然環境への脅威となってしまうのだ。


先述の例で言えば、外来植物の繁茂は、一部の人気エリアに登山者が集まりすぎる「オーバーユース」が一因と考えられている。


 そうした地では、登山靴などに付着して持ち込まれる種子が相当な数に上るうえに、遊歩道や登山道が傷んでコースを外れる人も出て、山林や草地に種子が落ちる可能性が高まるという悪循環だ。


 シカなどによる食害も、林道などを補強する目的で周辺に植えられた外来植物が、山の植生を変えてしまったのが誘引となった面もある。やはり、人の活動が山の生態系に影響を与えたことは否めない。

 一方的に「山に入るな」というのもダメなら、一方的に「どんどん山へ」というのもよくない。人と山の関係は、微妙なバランスの上に保たれている。

 「山の日だから登山」と思い立つ人は少なくないと思う。もちろん、山の素晴らしさを体感するのはとても有意義なことだ。しかし、それは祝日の趣旨の半分でしかない。山の恩恵に思いをはせ、人と山との関係を考えること、山の環境や生態系について知ることも重要なテーマなのだ。