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https://d1021.hatenadiary.jp/entry/2019/01/13/200430(萬平さんも屈した 「人質司法」が変わらぬわけ 勾留理由開示(下) )

1月11日、東京地検特捜部が日産の前会長さんを会社法違反(特別背任)で追起訴した、とメディアで報じられています。また、併せて処分保留とされていた金商法違反(有価証券報告書の虚偽記載)についても、法人としての日産とともに追起訴したそうです。日産は、前会長さんを告訴したこと及び法人としての日産が追起訴されたことを受けて、同日、適時開示のリリースを出しました。

しかしながら、どういうわけか日産は午後4時30分のリリースを、わずか40分後である5時10分に訂正しています。

有価証券報告書に虚偽の内容を記載したことは証券市場における開示情報の信用性を大きく損なう」「事案の背景に存在するガバナンスの不全を重大な問題ととらえている」などの記載を削除した

しかし、ある金融関係の方から、当ブログにコメントをいただきました。その方は、別の箇所が訂正されていることに着目して、この告訴内容(≒起訴事実)では、そもそも新生銀行との契約上の地位を(前会長資産管理会社から日産へ)移転したとしても、日産には損害が発生する余地はないので前会長さんは無罪である、との意見をいただきました。

日産自動車東証の適時開示サイトに、2019年1月11日付で「本日の起訴について」というリリースを行っています。内容は起訴と同日付で刑事告発を行ったというものです。16:30にリリースを行い、17:10にその「訂正」を行っていますが、見比べると「訂正」というより「情報隠ぺい」と言うべき内容になっています。16:30版では何について刑事告発を行ったかが記載されていますが、17:10版では刑事告発の詳しい内容が全て削除されています。株式市場では情報で相場が乱高下するので、情報を流す会社には重い責任があるのですが、これでは、訂正前と訂正後のどちらが本当なのか分からない状況です。是非見比べていただきたいと思います。

さて「訂正前」によれば、特別背任の対象となるデリバティブ取引は「クーポンスワップ契約」とありますが、これでは「日産に損失は発生しなかった」ばかりでなく、「どう転んでも日産に損失が発生する余地はなかった」ということになります。

「クーポンスワップ契約」とは「毎月一定額の円を一定額のドルに固定レートで交換することを一定期間(12か月とか24ヶ月とか)行う契約」で、ゴーン氏が言っていた通り「給料をドルで受け取るため」であって、投機のためではなかったことを裏付ける内容となっています。そしてクーポンスワップ契約の「評価損」とは、「円高になった場合、もっと少ない円で同額のドルを買うことができたのに、それができず儲けそこねた金額」のことを言い、「儲けそこねた金額」ですので、単なる「評価上」「観念上」の金額です。1ドル=100円のスワップを組んだ後、相場が1ドル=80円になった場合、「80円でドルを買えるのに、100円で買うことになって20円損したね」というのが「評価損」です。「評価損」を支払う必要はなく、満期まで毎月の交換を行えばそれで終わりです。もちろん「1ドル=100円で満足しているので、20円損したとは思わない」と言えばそれまでの話で、クーポンスッワップの「評価損」というのは「気もちの問題」「評価上の問題」です。

では、銀行がなぜ「評価損」を問題にするのかというと、「中途解約」をされた場合、銀行に損失が発生するためです。1ドル=80円のときに、ゴーン氏に1ドル=100円でドルを売れるなら、銀行としては20円儲かっているのですが、中途解約されると20円が消えてしまいます。このため「中途解約」は禁止になっていて、解約した場合「違約金」として1ドル当たり20円を払わせることになっています。つまり「違約金」が「評価損」と同額になっているのです。銀行としては「中途解約しないこと」の保障が欲しかったのであって、そのために日産の名前が使われたのです。

日産から見れば、「中途解約がなければ、違約金=評価損の支払い義務はない」「ゴーン氏が中途解約しないことを知っている」ので、「何のリスクもない取引」「どう転んでも損が出ない取引」となります。検察が「中途解約すれば日産に損が出る可能性があった」と主張したところで、ゴーン氏が「給料をドルに変える取引なので、中途解約するつもりは一切なかった」と証言すれば、無罪判決になるとしか思えません。