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江藤淳は、『南洲残影』で、西郷の全的滅亡を、「 歌」を中心軸に描いている。たとえば、軍隊の行進曲「 抜刀隊」の歌、「 皇女白菊の歌」、「 一かけ、二かけ 、三かけて」という童歌。それらに勝海舟の「 城山 」という薩摩琵琶歌を加えてもよい。不思議なことに、いづれも西郷の全的滅亡を、哀愁を込めて歌っている。軍隊から庶民、婦女子、幼児まで、近代の日本国民の多くは、「逆賊 」である西郷の悲劇を歌ってきたと言っていい。そこに、江藤淳は注目する。何故か。おそらく、歴史学者や大衆作家たちが描く「 勝者の歴史」から、抜け落ちてしまった「 もう一つの歴史」が、そこにあるからではないか。

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