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世界でも有数の農業大国フランスは、ことし、熱波に加え、記録的な干ばつにも見舞われました。

フランス中央部を流れる国内で最も長いロアール川では雨不足から水位が大幅に下がり完全に干上がる場所も出ています。

この水不足の直撃を受けたのがロアール川沿いに広がるトウモロコシ畑です。

乳牛や豚など家畜の飼料として広く栽培されていますが、葉が枯れたり、真っ白で栄養のない実に育ったりする被害が相次いでいます。

西部のアンジェ近郊でトウモロコシを栽培するジョエル・リムザンさんはことしの収穫量が半分近くに減るとみていて、不安を感じています。

リムザンさんは「熱波の発生時期がどんどん早くなっている上に気温が急激に上昇して植物が対応しきれない」と話していました。

また異常な暑さは、乳牛などの家畜にも影響を与えています。
乳牛は気温が高くなると体温の上昇を抑えるため呼吸の回数が増え食欲もなくなるなどして牛乳の生産量や質が下がるということです。

西部のアンジェ近郊で酪農を営むドニ・マランジュさんは、120頭の乳牛を飼育していますが、熱波によって生産量が20%程度、減少したということです。

マランジュさんは暑さ対策として牛舎に新たに水をまく設備を設置したということで「40度を超えるといったことは経験したことがなかった。われわれにとっても牛にとっても厳しい暑さで適応していかないといけない」と話していました。

また、マランジュさんは家畜の飼料としてトウモロコシを栽培していますが熱波の頻度が増えているとして3年前から一部の畑では少ない水でも育つアフリカ産の穀物ソルガム」の栽培を飼料用に始めました。

ソルガムは今回の熱波や干ばつの被害をまぬがれたということでマランジュさんは「牛に与える飼料を変えていく必要がある」と話し栽培面積を増やすといった対策を検討しています。

フランス各地で農業指導にあたる専門家で、地球温暖化の問題にも詳しいフレデリック・レブロ氏は、温暖化によるとみられる農業への影響はすでにさまざまな形で出ていると指摘します。

レブロ氏によりますとフランスでは春や夏に年々、乾燥が強くなっていてことしは熱波と干ばつが重なったことで、トウモロコシなど家畜の飼料の栽培が厳しい状況になっているということです。

また熱波によって牛ややぎが体調を崩し、ミルクの生産量も減っているということです。

こうした状況を受け、トウモロコシの代わりにアフリカ産の穀物などを試験的に栽培する農家が出始めていることについてレブロ氏は「将来、さまざまな飼料を取り入れるようなことになればフランスの伝統的なチーズの味や質にも影響が出てくる」と懸念していました。

またレブロ氏は「赤ワインは20年前に比べて2度近くアルコール度数があがっているのではないか」とも述べ、平均気温の上昇がワインにも影響を与えているのではないかと懸念を示していました。

レブロ氏は現状では農業は変化に対応できるとしながらも「21世紀末にはフランスの気候のもとで今のような農業生産を行うのが難しくなりかねない」と心配していて、温暖化の進行を防ぐため温室効果ガスの削減を進める必要があると強調していました。

温暖化はフランスの伝統の食文化にも影響するのではという懸念も出ています。

パリ中心部にある老舗のチーズ専門店によりますと、今回の熱波と干ばつによって牛乳などの生産量が減ることで秋にかけてチーズの品ぞろえに影響が出るおそれがあるといいます。

専門店の店員は「チーズの選択が限られ種類が減ることは間違いない。少なくともチーズ全体の量がこれまでないほど減りかねない」と話していました。

そのうえで取り引きのある小規模なチーズの生産者について「気候が大きく変化するようなことになれば保管のしかたをはじめ新たな技術の導入が欠かせなくなる」として、伝統の食文化を守るためには温暖化への対応が必要になると話していました。