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今回の提言では感染状況に応じて全国の地域を「特定警戒都道府県」「感染拡大注意都道府県」「感染観察都道府県」の3つに区分するとしていますが、会見では、座長で国立感染症研究所の脇田隆字所長が緊急事態宣言が解除された39県については、新規の感染者数が少ない「感染観察都道府県」に当たるという見解を示しました。

3つの区分のうち、「特別警戒都道府県」は特別措置法に基づいてが指定しますが、「感染拡大注意都道府県」「感染観察都道府県」については各県の知事がいずれに当てはまるかを判断するということです。

脇田所長は「『感染拡大注意都道府県』は、感染が拡大してきたときに『特定警戒都道府県』になる前の段階で、知事の判断で、しっかりとした対応を取れるよう設けたエリアだ」と述べました。

また、尾身茂副座長は今後のイベント開催の考え方について、「全国的な大規模イベントは、そのものがリスクの低い場所で行われたとしても、イベントの前後に人が接触する機会を制限できない場合はリスクが高まる可能性がある。こうしたリスクへの対応が整わない場合は引き続き中止や延期など慎重な対応が必要だ」と説明しました。

そのうえで、「感染観察都道府県」については比較的小規模なイベントの開催は可能になるとしましたが、「海外のケースを踏まえつつ、イベントを開催する場合は例えば参加者の上限を100人以下としつつ、収容人数に対して50%以下に制限するなどを目安とすることも検討してほしい」と話しました。

そして、尾身副座長は「普通の生活というのはすぐには戻ってこない。当分の間、感染拡大防止策と社会経済のバランスを取って両立を目指すことになる」と説明しました。

緊急事態宣言の解除を判断する基準として、感染の状況、医療提供体制、監視体制の3点を踏まえて、総合的に判断するとしています。

このうち、感染の状況に関する判断基準では、「直近1週間の新たな感染者数が10万人当たり0.5人程度以下」になることを目安とするとしています。また、この目安とは別に「直近1週間の新たな感染者数が10万人当たり1人程度以下」の場合は、感染者数の減少傾向を確認したうえで、感染者の集団=クラスターや、院内感染、それに感染経路が分からない症例の発生状況も考慮して、総合的に判断するとしています。

医療提供体制については、重症患者の数や病床の状況のほか、患者の急増に対応できる体制が確保されているかどうか、監視体制は、必要なPCR検査が遅滞なく行える体制が整備されているかどうかを、判断基準にするとしています。

一方、解除したあと、感染が拡大して、再び宣言の対象にするか判断する際には、直近の感染者の数や、感染経路が不明な患者の割合などを踏まえて、総合的に判断するとしています。

また、変更された「基本的対処方針」では、宣言が解除された地域でも、基本的な感染防止策の徹底などを継続する必要があるとして、取り組むべき具体策を示しています。

この中では、人と人との距離の確保、マスクの着用、手洗いをはじめとした「新しい生活様式の定着を求めています。

また、不要不急の帰省や旅行など、宣言が解除されていない地域への移動は避けるように促しています。

さらに、これまでにクラスターが発生しているような場所や、「3つの密」のある場所への外出も避けるよう呼びかけるとともに、このような施設に対しては、地域の感染状況などを踏まえて、必要な協力を依頼するとしています。

また、全国的かつ大規模なイベントなどは、リスクへの対応が整わない場合は、中止や延期など、慎重な対応を求めています。

一方、職場への出勤に関しては、在宅勤務や時差出勤など、人との接触を減らす取り組みの継続を呼びかけています。

そのうえで、今後、感染状況などに変化があれば、各県がこれまでと同様、特別措置法に基づいた外出の自粛や休業の要請を行うことを検討するとしています。

そして、宣言が解除されない地域も含めた、今後の全般的な方針として、地域の感染状況や医療提供体制などを踏まえながら、各知事の判断で段階的に社会や経済の活動レベルを上げていくとしています。

そのうえで、将来、すべての都道府県で宣言が解除された場合も、「新しい生活様式」が定着するまで一定の移行期間を設けて、段階的に外出の自粛や休業要請などを解除していくとしています。

この中で、西村経済再生担当大臣は、引き続き、緊急事態宣言の対象となる8つの都道府県について、今月21日をめどに解除できるかどうか判断するとしたうえで、「例えば千葉だけを緩めると、東京から買い物などに行く人が増えることも考えられ、首都圏は1つの塊として考えるのが自然だ」と指摘しました。

また、「大阪・兵庫・京都も、生活圏を含めて密接な関係がある」と述べ、首都圏の1都3県と関西の2府1県については、一体的に判断する考えを示しました。

さらに、緊急事態宣言の期限となる今月末以降の対応も検討する必要があるとして、今月28日ごろにも、各地の感染状況などについて、改めて専門家に評価を求める考えを示しました。

一方、西村大臣は宣言が解除された地域について、「最初に緊急事態宣言を発出した時よりも厳しい目で見て、爆発的な感染拡大の兆しが見えてくれば再指定をして、大きな波にならないようにしたい」と述べ、感染経路が不明の患者の割合が30%を上回っているかどうかなど、より厳しい基準で判断し、再指定することもありえるという考えを示しました。

また、西村大臣は、解除された県のうち、医療機関での集団感染が確認された愛媛県について、「最初の1人が、東京などの大都市部に行って感染したのか、帰省した誰かからうつったのかなど、どこで感染したのかが重要だ」と述べ、愛媛県に感染経路を早期に調べて報告するよう求め、来週、改めて専門家に議論を依頼する考えを示しました。

緊急事態宣言が解除された39の県に対し、政府は、イベントの開催や施設使用の制限を緩和する際の留意点などを通知しました。

このうち、イベントの開催については、参加人数を屋内は100人以下で収容定員の半分以下とすること、屋外は200人以下とし、人と人との距離を十分確保できることを目安にするとしています。

そのうえで、マスクの着用などの感染防止策をとることを前提として、イベント前後の参加者の交流を控えるよう呼びかけることや、参加者の名簿を作成して連絡先を把握すること、それに、導入が予定されている濃厚接触者を把握するためのスマートフォン向けのアプリを周知することなどを求めています。

また、施設の使用制限については、マスクを着用していない客と接する理髪店や飲食店の従業員は、マスクやフェイスシールドなどを装着することや、飲食店では仕切りを活用したり、真正面での着席を避けたりすることなどを促すよう要請しています。

そして、こうした施設の管理者に対しても、利用者名簿の作成やアプリの周知を求めるとしています。

緊急事態宣言の解除が見送られた東京都は、長期戦も見込んで、休業要請の緩和や感染拡大の防止に向けた道筋を示すロードマップの策定を進めていて、このうち、要請の緩和にあたって目安とする具体的な数値が判明しました。

それによりますと、1週間の平均でいずれも1日当たり、新たな感染の確認が20人未満、感染経路が分からない人の割合が50%未満になるほか、感染した人の週単位の増加比率が前の週より低くなるかという3つの指標を満たすかを確認します。

そのうえで、入院中や重症の患者数、検査で感染が確認された人の割合を示す「陽性率」なども指標として考慮し、専門家の意見も踏まえて要請を緩和するということです。

こうした緩和は緊急事態宣言が解除された後に段階的に行われるということです。
一方、緩和したあと、3つの指標の1つでも超えた場合は、都独自の「東京アラート」を出し警戒を呼びかけます。

都は、15日午後、こうした数値や考え方を発表することにしています。

東京都の関係者によりますと、15日、都内で新たに9人新型コロナウイルスに感染していることが確認されたということです。

都内の1日の感染者が10人を下回るのはことし3月22日以来で、先月7日に緊急事態宣言が出されてからは初めてです。また15日までの13日連続で100人を下回りました。

これで都内で感染が確認された人は、合わせて5036人になりました。

仙台高等裁判所岡口基一裁判官は13日、KBS京都のラジオ番組に電話で出演し、検察庁法の改正案について、およそ45分間にわたって自身の見解を述べました。

この中で岡口裁判官は経緯を解説したうえで「検察官が内閣の顔色をうかがいながら仕事をするようになると危惧される。法解釈の変更を口頭の決裁で済ませるなど、まともな法治国家とは言えない」などと批判しました。

中立性を求められている現職の裁判官がメディアに出演し、政府を批判するのは極めて異例です。

岡口裁判官はNHKの取材に対し「法案が大変複雑なため、内容を正確に理解したうえで議論してもらいたかった。裁判官が積極的に政治運動に参加することは許されていないが、法案の問題点を説明することは禁じられていない」と話しています。

岡口裁判官はこれまでも著書やSNSで積極的に情報発信を行っていますが、おととしには、ツイッターへの書き込みで裁判官の品位をおとしめたとして、最高裁判所から戒告の懲戒処分を受けました。

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 事件の底流には政治的意図があり、その意図に沿って検察が動く。検察が作り上げたストーリーをマスコミが喧伝し、大悪党に仕立て上げられてしまう。それは私自身、09年の「郵便不正事件」で冤罪に巻き込まれかけたので、よく分かります。オヤジはまず外為法違反で逮捕された。別件逮捕もいいところです。そして、米国の関係者に罪を問わない「嘱託尋問調書」という司法取引で得た証言が裁判の証拠に採用された。この調書は違法収集証拠だとして、オヤジの死後にこっそり証拠から排除されています。だったら有罪判決自体が無効ではないのか。とにかく、ロッキードの捜査と裁判は不可解なことだらけです。

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この法案が、アメリカに嵌められた田中角榮先生の名誉回復につながるならば、大いに賛同したいです。

検察庁法の改正案に反対する意見書を提出したのは、松尾邦弘検事総長など、ロッキード事件などの捜査を担当した検察OBの有志14人です。

検察庁法の改正案は、内閣や法務大臣が認めれば検察幹部らの定年延長を最長3年まで可能にするもので、意見書では「改正案は、検察の人事に政治権力が介入することを正当化するもので、政権側に人事権を握られ、公訴権の行使まで制約を受けるようになれば、検察は国民の信託に応えられない」としています。

そのうえで田中角栄元総理大臣らを逮捕したロッキード世代として、検察を、時の政権の意のままに動く組織に改変させようとする動きは看過できず、定年延長を認める規定の撤回を期待する」と訴えています。

松尾氏は会見で「定年延長は、今までの人事の流れを大きく変化させる懸念がある。検察官にいちばん大事なのは自主・独立だ」と述べました。

松尾氏は平成16年から2年間、検察トップの検事総長を務め、ライブドア事件日本歯科医師会をめぐる1億円不正献金事件などの捜査を指揮しました。

検事総長経験者が、法務省が提出する法案について公の場で反対意見を表明するのは極めて異例です。

改正案は、すべての検察官の定年を段階的に63歳から65歳に引き上げるとともに、「役職定年制」と同様の趣旨の制度を導入し、検事正や検事長などの幹部は原則63歳で、そのポストから退くことが定められています。

しかし特例規定として内閣や法務大臣が「公務の運営に著しい支障が出る」と認めれば、個別の幹部の役職定年や定年を最長3年まで延長できるとしています。

このため内閣の判断で定年が65歳の検事総長は最長で68歳まで、役職定年が63歳の検事長は最長で66歳までそのポストにとどまることができるのです。

論点の1つは、検察人事への政治介入の懸念です。

検察庁法務省に属する行政機関で、検察官の人事権は内閣や法務大臣にあります。

一方、検察は捜査や裁判で権力の不正をチェックする役割も担い、政治からの中立性や独立性が求められるため、実際には検察側が作成した人事案を内閣や大臣が追認することが「慣例」となってきました。

日弁連=日本弁護士連合会などは、内閣や大臣の判断で個別の検察幹部の定年延長が可能になれば、検察官の政治的中立性を脅かし、捜査を萎縮させるおそれが強いなどと指摘しています。

個別の検察幹部らの定年延長を可能にする特例規定が改正案に盛り込まれた経緯も論点です。

法務省が去年10月末の時点で検討していた当初の改正案では「公務の運営に著しい支障が生じることは考えがたい」などとして、個別に検察幹部の定年延長を認める規定は必要ないとしていました。

しかし、ことし1月、政府が従来の法解釈を変更し、東京高等検察庁の黒川検事長の定年延長を閣議決定しました。

個別の検察幹部の定年延長の特例規定は、ことしになって改正案に盛り込まれていて、有志の弁護士の団体などは「法解釈の変更による黒川検事長の違法・不当な定年延長を法改正によって後付けで正当化するものだ」としています。

また、内閣の判断で検察官の定年を延長する場合の判断基準が示されていないことも論点になっています。

元検察幹部は「恣意的(しいてき)な人事の運用ができないよう基準をできるかぎり細かく、具体的に定めることが必要だ」と指摘しています。

検察官の定年延長を可能にする検察庁法の改正案について、現職の検察幹部からは、さまざまな意見が出ています。

NHKの取材に対し、現職の検察幹部の1人は「検察幹部が定年を超えても政府の判断で、そのポストにとどまることができるようになれば、政権の検察への介入を許すのではないかという批判は受け止めるべきだ。検察は巨大な権力を持つ組織で個別の定年延長を認めないことが、検事総長検事長への過度な権力集中を防ぐ抑止効果にもなっていたと思う。新型コロナウイルスの影響が広がる中、急いで審議を進める話ではないのではないか」と話しています。

また、個別の検察官の定年延長を可能にする特例規定が、去年10月末の時点で法務省が検討していた当初の改正案に盛り込まれていなかったことについて、別の幹部の1人は「昨年の秋に法務省が必要ないとしていた規定を、なぜ黒川検事長の定年を延長した後に加えたのか説明すべきだ」と指摘しています。

一方、別の現職の幹部の1人は「今回の法改正で、政権が人事を通じて検察に介入しやくなるという危惧はよく分かるが、検察は常に正義とは限らず、暴走するおそれもある。検察をどのように民主的にコントロールしていくかという視点も必要だ」と話していました。

また検察幹部の1人は「検察の独立性という問題があることは理解できるが、定年延長を使って事件に介入しようとする政治家が、本当に出てくるとはあまり思えない」と話していました。

東京地検特捜部検事でリクルート事件などを担当した高井康行弁護士は、今回の検察庁法改正案について「政治と検察の制度的なバランスを変える意味があり、国民の検察の独立性への信頼を揺るがすおそれがある」と指摘しています。

高井弁護士は、これまでの検察官の人事は、検察庁法に規定されている懲戒などを除いて罷免されないという「身分保障」と、定年が来れば一律に必ず退官するという「定年制」が政権の介入を防ぎ、2つの制度は検察の独立性を守る「防波堤」の役割を果たしていたと指摘しています。

このため、内閣や大臣の判断で個別の検察幹部の定年延長が可能になる今回の改正案については「一律の定年制という独立性を担保する制度の1つがなくなることになる。政治と検察の制度的なバランスを変える意味があり、検察の独立性についての国民の信頼を揺るがすおそれがある」と話しています。

また、内閣が個別の検察幹部の定年を延長する場合の判断基準が、現時点で示されていないことについては「恣意的な運用ができないような制度的な歯止めが必要で、基準をできるかぎり細かく具体的に定めることが必要だ」と指摘しています。

 東京高検検事長の定年延長についての元検察官有志による意見書

 1 東京高検検事長黒川弘務氏は、本年2月8日に定年の63歳に達し退官の予定であったが、直前の1月31日、その定年を8月7日まで半年間延長する閣議決定が行われ、同氏は定年を過ぎて今なお現職に止(とど)まっている。

 検察庁法によれば、定年は検事総長が65歳、その他の検察官は63歳とされており(同法22条)、定年延長を可能とする規定はない。従って検察官の定年を延長するためには検察庁法を改正するしかない。しかるに内閣は同法改正の手続きを経ずに閣議決定のみで黒川氏の定年延長を決定した。これは内閣が現検事総長稲田伸夫氏の後任として黒川氏を予定しており、そのために稲田氏を遅くとも総長の通例の在職期間である2年が終了する8月初旬までに勇退させてその後任に黒川氏を充てるための措置だというのがもっぱらの観測である。一説によると、本年4月20日に京都で開催される予定であった国連犯罪防止刑事司法会議で開催国を代表して稲田氏が開会の演説を行うことを花道として稲田氏が勇退し黒川氏が引き継ぐという筋書きであったが、新型コロナウイルスの流行を理由に会議が中止されたためにこの筋書きは消えたとも言われている。

 いずれにせよ、この閣議決定による黒川氏の定年延長は検察庁法に基づかないものであり、黒川氏の留任には法的根拠はない。この点については、日弁連会長以下全国35を超える弁護士会の会長が反対声明を出したが、内閣はこの閣議決定を撤回せず、黒川氏の定年を超えての留任という異常な状態が現在も続いている。

 2 一般の国家公務員については、一定の要件の下に定年延長が認められており(国家公務員法81条の3)、内閣はこれを根拠に黒川氏の定年延長を閣議決定したものであるが、検察庁法は国家公務員に対する通則である国家公務員法に対して特別法の関係にある。従って「特別法は一般法に優先する」との法理に従い、検察庁法に規定がないものについては通則としての国家公務員法が適用されるが、検察庁法に規定があるものについては同法が優先適用される。定年に関しては検察庁法に規定があるので、国家公務員法の定年関係規定は検察官には適用されない。これは従来の政府の見解でもあった。例えば昭和56年(1981年)4月28日、衆議院内閣委員会において所管の人事院事務総局斧任用局長は、「検察官には国家公務員法の定年延長規定は適用されない」旨明言しており、これに反する運用はこれまで1回も行われて来なかった。すなわちこの解釈と運用が定着している。

 検察官は起訴不起訴の決定権すなわち公訴権を独占し、併せて捜査権も有する。捜査権の範囲は広く、政財界の不正事犯も当然捜査の対象となる。捜査権をもつ公訴官としてその責任は広く重い。時の政権の圧力によって起訴に値する事件が不起訴とされたり、起訴に値しないような事件が起訴されるような事態が発生するようなことがあれば日本の刑事司法は適正公平という基本理念を失って崩壊することになりかねない。検察官の責務は極めて重大であり、検察官は自ら捜査によって収集した証拠等の資料に基づいて起訴すべき事件か否かを判定する役割を担っている。その意味で検察官は準司法官とも言われ、司法の前衛たる役割を担っていると言える。

 こうした検察官の責任の特殊性、重大性から一般の国家公務員を対象とした国家公務員法とは別に検察庁法という特別法を制定し、例えば検察官は検察官適格審査会によらなければその意に反して罷免(ひめん)されない(検察庁法23条)などの身分保障規定を設けている。検察官も一般の国家公務員であるから国家公務員法が適用されるというような皮相的な解釈は成り立たないのである。

 3 本年2月13日衆議院本会議で、安倍総理大臣は「検察官にも国家公務員法の適用があると従来の解釈を変更することにした」旨述べた。これは、本来国会の権限である法律改正の手続きを経ずに内閣による解釈だけで法律の解釈運用を変更したという宣言であって、フランスの絶対王制を確立し君臨したルイ14世の言葉として伝えられる「朕(ちん)は国家である」との中世の亡霊のような言葉を彷彿(ほうふつ)とさせるような姿勢であり、近代国家の基本理念である三権分立主義の否定にもつながりかねない危険性を含んでいる。

 時代背景は異なるが17世紀の高名な政治思想家ジョン・ロックはその著「統治二論」(加藤節訳、岩波文庫)の中で「法が終わるところ、暴政が始まる」と警告している。心すべき言葉である。

 ところで仮に安倍総理の解釈のように国家公務員法による定年延長規定が検察官にも適用されると解釈しても、同法81条の3に規定する「その職員の職務の特殊性またはその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分の理由があるとき」という定年延長の要件に該当しないことは明らかである。

 加えて人事院規則11―8第7条には「勤務延長は、職員が定年退職をすべきこととなる場合において、次の各号の1に該当するときに行うことができる」として、①職務が高度の専門的な知識、熟練した技能または豊富な経験を必要とするものであるため後任を容易に得ることができないとき、②勤務環境その他の勤務条件に特殊性があるため、その職員の退職により生ずる欠員を容易に補充することができず、業務の遂行に重大な障害が生ずるとき、③業務の性質上、その職員の退職による担当者の交替が当該業務の継続的遂行に重大な障害を生ずるとき、という場合を定年延長の要件に挙げている。

 これは要するに、余人をもって代えがたいということであって、現在であれば新型コロナウイルスの流行を収束させるために必死に調査研究を続けている専門家チームのリーダーで後継者がすぐには見付からないというような場合が想定される。

 現在、検察には黒川氏でなければ対応できないというほどの事案が係属しているのかどうか。引き合いに出されるゴーン被告逃亡事件についても黒川氏でなければ、言い換えれば後任の検事長では解決できないという特別な理由があるのであろうか。法律によって厳然と決められている役職定年を延長してまで検事長に留任させるべき法律上の要件に合致する理由は認め難い。

 4 4月16日、国家公務員の定年を60歳から65歳に段階的に引き上げる国家公務員法改正案と抱き合わせる形で検察官の定年も63歳から65歳に引き上げる検察庁法改正案が衆議院本会議で審議入りした。野党側が前記閣議決定の撤回を求めたのに対し菅義偉官房長官は必要なしと突っぱねて既に閣議決定した黒川氏の定年延長を維持する方針を示した。こうして同氏の定年延長問題の決着が着かないまま検察庁法改正案の審議が開始されたのである。

 この改正案中重要な問題点は、検事長を含む上級検察官の役職定年延長に関する改正についてである。すなわち同改正案には「内閣は(中略)年齢が63年に達した次長検事または検事長について、当該次長検事または検事長の職務の遂行上の特別の事情を勘案して、当該次長検事または検事長を検事に任命することにより公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由として内閣が定める事由があると認めるときは、当該次長検事または検事長が年齢63年に達した日の翌日から起算して1年を超えない範囲内で期限を定め、引き続き当該次長検事または検事長が年齢63年に達した日において占めていた官及び職を占めたまま勤務をさせることができる(後略)」と記載されている。

 難解な条文であるが、要するに次長検事および検事長は63歳の職務定年に達しても内閣が必要と認める一定の理由があれば1年以内の範囲で定年延長ができるということである。

 注意すべきは、この規定は内閣の裁量で次長検事および検事長の定年延長が可能とする内容であり、前記の閣僚会議によって黒川検事長の定年延長を決定した違法な決議を後追いで容認しようとするものである。これまで政界と検察との両者間には検察官の人事に政治は介入しないという確立した慣例があり、その慣例がきちんと守られてきた。これは「検察を政治の影響から切りはなすための知恵」とされている(元検事総長伊藤栄樹著「だまされる検事」)。検察庁法は、組織の長に事故があるときまたは欠けたときに備えて臨時職務代行の制度(同法13条)を設けており、定年延長によって対応することは毫(ごう)も想定していなかったし、これからも同様であろうと思われる。

 今回の法改正は、検察の人事に政治権力が介入することを正当化し、政権の意に沿わない検察の動きを封じ込め、検察の力を殺(そ)ぐことを意図していると考えられる。

 5 かつてロッキード世代と呼ばれる世代があったように思われる。ロッキード事件の捜査、公判に関与した検察官や検察事務官ばかりでなく、捜査、公判の推移に一喜一憂しつつ見守っていた多くの関係者、広くは国民大多数であった。

 振り返ると、昭和51年(1976年)2月5日、某紙夕刊1面トップに「ロッキード社がワイロ商法 エアバスにからみ48億円 児玉誉士夫氏に21億円 日本政府にも流れる」との記事が掲載され、翌日から新聞もテレビもロッキード関連の報道一色に塗りつぶされて日本列島は興奮の渦に巻き込まれた。

 当時特捜部にいた若手検事の間では、この降って湧いたような事件に対して、特捜部として必ず捜査に着手するという積極派や、着手すると言っても贈賄の被疑者は国外在住のロッキード社の幹部が中心だし、証拠もほとんど海外にある、いくら特捜部でも手が届かないのではないかという懐疑派、苦労して捜査しても造船疑獄事件のように指揮権発動でおしまいだという悲観派が入り乱れていた。

 事件の第一報が掲載されてから13日後の2月18日検察首脳会議が開かれ、席上、東京高検検事長の神谷尚男氏が「いまこの事件の疑惑解明に着手しなければ検察は今後20年間国民の信頼を失う」と発言したことが報道されるやロッキード世代は歓喜した。後日談だが事件終了後しばらくして若手検事何名かで神谷氏のご自宅にお邪魔したときにこの発言をされた時の神谷氏の心境を聞いた。「(八方塞がりの中で)進むも地獄、退くも地獄なら、進むしかないではないか」という答えであった。

 この神谷検事長の国民信頼発言でロッキード事件の方針が決定し、あとは田中角栄氏ら政財界の大物逮捕に至るご存じの展開となった。時の検事総長は布施健氏、法務大臣は稲葉修氏、法務事務次官塩野宜慶(やすよし)(後に最高裁判事)、内閣総理大臣三木武夫氏であった。

 特捜部が造船疑獄事件の時のように指揮権発動に怯(おび)えることなくのびのびと事件の解明に全力を傾注できたのは検察上層部の不退転の姿勢、それに国民の熱い支持と、捜査への政治的介入に抑制的な政治家たちの存在であった。

 国会で捜査の進展状況や疑惑を持たれている政治家の名前を明らかにせよと迫る国会議員に対して捜査の秘密を楯(たて)に断固拒否し続けた安原美穂刑事局長の姿が思い出される。

 しかし検察の歴史には、捜査幹部が押収資料を改ざんするという天を仰ぎたくなるような恥ずべき事件もあった。後輩たちがこの事件がトラウマとなって弱体化し、きちんと育っていないのではないかという思いもある。それが今回のように政治権力につけ込まれる隙を与えてしまったのではないかとの懸念もある。検察は強い権力を持つ組織としてあくまで謙虚でなくてはならない。

 しかしながら、検察が萎縮して人事権まで政権側に握られ、起訴・不起訴の決定など公訴権の行使にまで掣肘(せいちゅう)を受けるようになったら検察は国民の信託に応えられない。

 正しいことが正しく行われる国家社会でなくてはならない。

 黒川検事長の定年延長閣議決定、今回の検察庁法改正案提出と続く一連の動きは、検察の組織を弱体化して時の政権の意のままに動く組織に改変させようとする動きであり、ロッキード世代として看過し得ないものである。関係者がこの検察庁法改正の問題を賢察され、内閣が潔くこの改正法案中、検察幹部の定年延長を認める規定は撤回することを期待し、あくまで維持するというのであれば、与党野党の境界を超えて多くの国会議員と法曹人、そして心ある国民すべてがこの検察庁法改正案に断固反対の声を上げてこれを阻止する行動に出ることを期待してやまない。

 【追記】この意見書は、本来は広く心ある元検察官多数に呼びかけて協議を重ねてまとめ上げるべきところ、既に問題の検察庁法一部改正法案が国会に提出され審議が開始されるという差し迫った状況下にあり、意見のとりまとめに当たる私(清水勇男)は既に85歳の高齢に加えて疾病により身体の自由を大きく失っている事情にあることから思うに任せず、やむなくごく少数の親しい先輩知友のみに呼びかけて起案したものであり、更に広く呼びかければ賛同者も多く参集し連名者も多岐に上るものと確実に予想されるので、残念の極みであるが、上記のような事情を了とせられ、意のあるところをなにとぞお酌み取り頂きたい。

 令和2年5月15日

 元仙台高検検事長・平田胤明(たねあき)

 元法務省官房長・堀田力

 元東京高検検事長・村山弘義

 元大阪高検検事長・杉原弘泰

 元最高検検事・土屋守

 同・清水勇男

 同・久保裕

 同・五十嵐紀男

 元検事総長松尾邦弘

 元最高検公判部長・本江威憙(ほんごうたけよし)

 元最高検検事・町田幸雄

 同・池田茂穂

 同・加藤康栄

 同・吉田博視

 (本意見書とりまとめ担当・文責)清水勇男

 法務大臣 森まさこ殿

新型コロナウイルスの感染拡大で、東京オリンピックは史上初めて1年延期されたほか、それぞれの競技では国際大会が全面的に中止や延期となり世界のスポーツが中断を強いられています。

IOCは14日、大会の新たな日程を決めたあと最初の理事会をオンライン形式で開き新型コロナウイルスの影響に直面している東京オリンピックや各競技団体への支援について話し合いました。

理事会のあとバッハ会長が会見を行いIOCとして東京オリンピックの追加経費と国際競技団体などの支援に最大で合わせて8億ドル(日本円でおよそ860億円)を拠出すると発表しました。

このうち東京大会の延期に伴う追加の経費には6億5000万ドル(日本円でおよそ700億円)を見込んでいて、国際競技団体や各国のオリンピック委員会への財政支援に1億5000万ドル(およそ160億円)を予定しているとしています。

大会延期に伴う追加経費の総額は明らかになっていませんが、数千億円に上るとみられていて、組織委員会の森会長はIOCにも一定の負担を求める考えを示しています。

バッハ会長は会見で「コストを削減するためにあらゆる議論をしている。『タブー』はない」と述べ、東京大会に向け財政的な支援とあわせて経費削減にも厳しく取り組んでいることを強調しました。

このほかこの日の理事会では本来東京大会に合わせて日本で開催する予定だったIOC総会を7月17日にオンライン形式で行うことも決めました。

来月18日告示、7月5日投開票の日程で行われる東京都知事選挙をめぐって、自民党の下村選挙対策委員長は、15日党本部で、東京都連の鴨下会長と会談しました。この中で鴨下氏は、都連として現時点で独自候補を擁立するのは難しいと伝えました。

このあと下村氏は二階幹事長と会談し、小池知事が立候補した場合には党として独自候補を擁立しない方針を確認し、今後小池氏を推薦するかどうかなど、都知事選挙への最終的な対応を決めることになりました。

下村氏は記者団に対し「新型コロナウイルスの感染が拡大し、東京オリンピックパラリンピックも延期され、国と東京都が一体となるべきだという流れの中で、今月中にどう対応するか明確にしたい」と述べました。

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