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高野連などは、ことし8月10日から甲子園球場で予定していた夏の全国高校野球の開催について協議するため、20日午後、オンラインで運営委員会と高野連の理事会を開き、大会の中止を決めました。

高野連は、中止の理由として、地方大会を開催することが難しいことを挙げています。

具体的には、感染リスクを完全になくすことはできないこと、休校や部活動の休止が長期に及ぶため練習が十分ではなく選手のけがが予想されること、それに、夏休みを短縮する動きがある中、地方大会の開催は学業の支障になりかねないことなどとしています。

さらに夏の甲子園についても、全国から長時間かけて選手や関係者が移動することや集団で宿泊することなどを考慮すると感染のリスクは避けられないとしています。

一方、予選としての地方大会も合わせて中止となりました。

今後、各都道府県の高野連で地方大会を独自で行うかどうか判断をするということです。

高野連などは午後6時から会見を開き、中止に至った経緯などについて説明することにしています。

夏の全国高校野球の中止は3回目で、戦後では初めてです。

また、高校野球がことしのセンバツ大会に続き、春夏連続で中止となるのは今回が初めてです。

大会中止の決定を受けて高野連=日本高校野球連盟などは20日午後6時すぎから会見を開きました。

冒頭で、大会会長を務める朝日新聞の渡辺雅隆社長は「全国の球児の皆さんの夢を絶ってしまい、私自身も無念です。支えてきた家族、監督、関係者、高校野球ファンの期待に応えられず、心苦しく残念に思います。ギリギリまで検討しましたが、安全を最優先した判断で理解していただきたい」と話しました。

また、高野連の八田英二会長は「苦渋の決断をお伝えする悲しい日になった。開催中止は球児だけではなく高校野球をこよなく愛する方々にも痛恨の極みです。特に高校3年生にとっては暗くなるまで練習に励んだ集大成の場がなくなり、心が折れる思いかもしれません。しかし、甲子園出場を目指した球児という栄冠は永遠に輝いています。それまでの練習や試合で身につけた自信と誇りを胸に新たな第一歩を踏み出してください。アメリカのプロテストソングに『We shall overcome』『勝利を我らに』があります。新型コロナウイルスに人類が打ち勝つこと、そして皆さんがみずからの心の揺らぎに打ち勝ち、あすに向かって挑戦されることを信じています」と全国の高校球児にメッセージをおくりました。

高野連などが大会中止を決定した具体的な理由は以下のとおりです。

まず、甲子園につながる地方大会については、
▽全国各地でおよそ3800校が参加し、1か月後の6月下旬から8月初めにわたり、およそ250の球場を使って行われる地方大会の感染リスクを完全になくすことはきない。

▽休校や部活動の休止が、長期に及んでいて、練習が十分でない選手のけがなどの増加が予想される。

▽授業時間の確保のために夏休みを短縮し、登校日や授業日を増やす動きがある中、地方大会の開催は学業の支障になりかねない。

▽運営を担う役員や審判員を十分確保できず、治療や感染予防などに当たっている医療スタッフに対して、球場への常駐をお願いできないことが予想される。

▽公的施設の使用制限で、使用できる球場が限られる可能性があるとしています。

また、甲子園球場で行われる全国大会については、開催期間が2週間以上に及び、代表校の選手や関係者が全国から長時間かけて移動して、集団で宿泊することなどを考慮すると感染と拡散のリスクを避けられないとしています。

高野連などが夏の全国高校野球の中止に踏み切った背景には、選手や関係者の移動や宿泊での感染リスクに加えて、代表校を決める地方大会の日程の確保が難しかったという事情があります。

夏の全国高校野球の代表校を決める地方大会は例年、6月から7月にかけて行われますが、各地で学校の休校が長期化し、多くで部活動も再開のめどが立っていない状況です。

一部の高野連は地方大会の開幕を遅らせるなどしていますが、それでも選手たちが体力を回復し、実戦感覚を取り戻すには練習期間が短く、高野連の関係者からはけがや熱中症のリスクがあるとの指摘が出ていました。

こうした状況の中、8月10日開幕の夏の甲子園に向けて地方大会をすべて実施し、代表校を決めるのは日程的に厳しくなっていました。

また、夏の甲子園そのものについても、仮に無観客での開催で観客の感染リスクを無くした場合でも全国から代表校の選手や関係者が都道府県をまたいで鉄道やバスで移動し、長ければ3週間近く、宿舎での集団生活を送ることになり、選手などへの感染リスクは避けられません。

こうした事情を勘案した結果、大会の開催は困難と判断し、大会中止の結論となりました。

夏の全国高校野球の中止が決まったことについて、スポーツ評論家の玉木正之さんは「高校野球といえども教育の一環なので、部活動として可能かどうかを判断したと思う。全国高校総体も中止になっているので、高校野球だけを特別にやるわけにはいかないし、今まで経験したことのない事態が起こっているので、中止以外に選択肢はなく、しかたがない」と話し、中止の判断は妥当だという考えをしました。

そのうえで、「地域によっては、緊急事態宣言が解除されたところもあるので、開催できるなら、地方大会はやってほしい。甲子園に出場するのは一部の選手に限られているので、高校野球を考えるときは高校生全体について考えてもらいたい」と話していました。

夏の甲子園の中止が決定したことで、3年生の就職や進学といった進路への影響を懸念する声が上がっています。

ことしは夏の全国高校野球に加えて春のセンバツ高校野球も中止となっていて、3年生が甲子園球場という大舞台で実績を残す機会がなくなりました。

春と夏の甲子園には、プロ野球を目指す将来有望な選手が出場することから毎年、バックネット裏には多くのプロのスカウトが集まります。

秋のドラフト会議を見据えてほとんどのスカウトが出場校の対戦が一巡するまで視察し、選手の動きをチェックしています。

おととし夏の甲子園では秋田・金足農業のエースとして準優勝した吉田輝星投手が大きく評価を上げました。

吉田投手は当初、大学に進学する予定でしたが、夏の甲子園での活躍もあって、プロ野球を志望するようになり、その年のドラフト会議で日本ハムから1位で指名されました。

また、ヤクルトの奥川恭伸投手は、石川・星稜高校で2年生の春から4季連続で甲子園に出場し、去年の夏はエースとしてチームを24年ぶりの準優勝に導きました。

大舞台での豊富な経験が高く評価され、去年のドラフト会議では3球団から1位で指名を受けました。

ヤクルトの橿渕聡スカウトグループデスクは、「甲子園という大きな舞台で飛躍的に成長する選手もいる。3年生の最後の夏にどこまで伸びるかは僕らも気になるポイントでその過程が見られないのは判断が難しくなる」と話しています。

また、大学のスポーツ推薦では、春と夏の甲子園など全国大会の出場を選考基準の1つにしているところがあります。

このうち、去年の全日本大学野球選手権で優勝した明治大学のスポーツ特別入試では学業の成績に加え、競技成績の基準として全国大会出場や地区大会ベスト4以上などを設けています。

ことしは甲子園の2つの大会が中止になったことから、「これまでの競技成績や能力などを踏まえ、同じ程度の基準を満たす入学者を選抜したい」としています。

ただ、大学野球の関係者からはこの春以降、公式戦の中止が相次ぎ、高校3年生のプレーを見る機会が少なくなっていることから例年より実力の見極めが難しいという声が出ています。

東都大学野球に所属する大学の監督は「例年だとセンバツや春の県大会、6月の練習試合で選手の動きを見て、夏の甲子園は最終段階としてチェックする。実戦を見て決めたいが、ことしは映像だけで判断しなければならなくなるかもしれない」と話していました。

101回を数える夏の全国高校野球の歴史の中で大会が中止になったことはこれまでに2回あります。

初めての中止は大正7年で、この年は開幕直前に米騒動が発生して全国各地に暴動が広がったため、開会式前日に延期が発表され、その後、中止になりました。

また、昭和16年は、一部で地方大会が始まっていましたが、戦局が緊迫した影響で中止に追い込まれました。

その後、太平洋戦争のため、昭和17年から4年間、大会は行われませんでしたが、高野連では大会の開催を予定していなかったため、この期間は「中断」としています。

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