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「後払い現金化」と呼ばれるこの商法は、1万円から20万円ほどの商品を代金後払いで販売する一方、商品のレビューを書き込む謝礼やキャッシュバックの名目で利用者に現金を融通するものです。

扱う商品は風景写真や電子書籍などさまざまで、期日までに支払うことを条件に、販売代金の半額程度の現金が申し込んだその日のうちに振り込まれます。現金がすぐに手に入る手軽さから感染拡大の影響で収入が減った人などが利用しているということですが、関係者によりますと、商品の多くはデータで提供されるだけで、事実上、現金のやり取りのみが行われているということです。

現状では貸金業法などの規制の対象になっていないため、販売サイトには「借金の履歴が残らない」「ブラックでもOK」などといううたい文句が並んでいます。

しかし、利用者が支払う代金は受け取った額のおよそ2倍、年利に換算すると数百%にあたるため、期日までに支払えず業者から悪質な取り立てを受けるトラブルが相次いでいるということです。

「後払い現金化」の業者は新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年3月以降に急増したとみられ、販売サイトは12月25日現在、確認できただけで61に上っています。

ヤミ金融の相談に応じる各地の司法書士事務所には、2020年夏以降、利用者からの相談が合わせて700件以上相次いでいます。

このうち、大阪市司法書士事務所には、7月ごろから「代金が支払えず困っている」といった相談が寄せられるようになりました。8月に100件を超えてからは月を追うごとに増え続け、11月は262件に上ったということです。

ほとんどが「借金の履歴が残らない」といううたい文句にひかれて申し込んだものの期日までに代金を支払えなかったケースで、勤務先に電話がかかってくるなど悪質な取り立てを受けたり、別の業者を利用して支払いに充てるうちに、多重債務の状態に陥ったりする利用者も多いといいます。

また、秋から特に相談が増えたという別の司法書士事務所では、新型コロナウイルスの影響で収入が大幅に減り、当面の生活費を得るためやむなく手を出してしまったという人が多いということです。

司法書士前田勝範さんは「感染拡大の影響で家賃や光熱費も払えないという人が増える中、本当に困っている人は目の前の今、現金がほしいと思っている。『後払い現金化』の業者はそこにつけ込み、暗躍している形だ。また、借金ではないという認識で一般のサラリーマンなども利用しているが、実態は法律で定められた上限の数十倍にあたる金利で貸し付けを行っているのと同じで、結果的に多重債務の状態に陥るケースは非常に多い。安易に手を出すのはやめてほしい」と話していました。

「後払い現金化」の利用者の中には、新型コロナウイルスの影響で減った収入を補おうとした結果、事実上の借金が膨らんでしまったという人もいます。

運送会社に勤める30代の男性は、感染拡大の影響で残業がなくなり、毎月の収入がおよそ8万円減りました。残業代を含めて家族4人をなんとか養っていた男性は生活が立ち行かなくなり、食費などの足しになればと7月に「後払い現金化」の業者を初めて利用しました。「借金の履歴が残らない」といううたい文句にひかれたといいます。

この業者は、SNSで収入を得るための情報を2万円で販売するとしていて、購入してレビューを書き込めばすぐに1万円をキャッシュバックするという内容でした。収入が大幅に減り困っていた男性は、その手軽さから迷わず申し込んだといいます。

商品はLINEに送られてきたPDFファイルだけでしたが、サイト内に「役に立った」というレビューをひと言書き込むと、すぐに1万円が振り込まれたということです。

男性は「当時はなんとか食べていかなければという思いが強かったので、現金が振り込まれた時は安どした」と話しています。

しかし、収入が回復しない中で倍の額の2万円を支払うことは難しく、1か月後の期日を迎えてしまったという男性。するとその翌日、勤務先にいきなり、業者から電話がかかってきました。貸金業の場合は法律で禁止されている行為です。

会社や家族に知られてしまうとあせった男性は、支払いを済ませるために別の業者を利用し、金を工面します。その後は、支払い期日が来るたびに別の業者を利用する悪循環に陥り、支払い額はわずか3か月間で2万円から13万円にまで膨れ上がったということです。

さらに、深夜・早朝を問わずLINEで「刑事告発する」などというメッセージを送りつけたり、個人情報をネットにさらすと脅したりする業者も現れ、男性は精神的に追い詰められてしまったといいます。

相談を受けた司法書士が業者と連絡を取ったところ取り立てはなくなったということで、男性は「はじめは『助かった』という思いでしたが、途中から借金と同じだと気付きました。家族に心配をかけたくない一心でしたが、手を出してしまったことを後悔しています」と話していました。

「後払い現金化」の業者が運営するサイトは、12月25日現在、確認できただけで合わせて61に上っています。

サイトの開設に必要な、インターネット上の住所にあたる「ドメイン」の取得時期をNHKが調べたところ、1つを除く60のサイトはいずれも2020年3月以降で、新型コロナウイルスの感染拡大後に急増したとみられることが分かりました。販売サイトで扱う商品は風景写真や電子書籍、絵画などさまざまで、最も多かったのは「収入を得るための情報を有料で紹介する」というものでした。

価格は1万円から20万円ほどで、いずれもその半額程度をキャッシュバックするとしていますが、関係者によりますと、商品はPDFファイルなどのデータで提供されるだけで、価格に見合う価値はないものがほとんどだということです。利用者が実際に商品として購入したPDFファイルの中には、別のサイトの文章やイラストを切り貼りしただけのものや、ネット上で誰でも閲覧できる状態になっているものもありました。

NHKは今回、販売サイトを運営する複数の業者に電話で取材し、ヤミ金融の認識について聞きました。このうち、風景写真を販売しているという業者は「商品を購入し、宣伝に協力してくれた利用者に早い段階で協力金を支払っているだけだ」として、ヤミ金融にはあたらないと主張しました。

一方、別の業者は「携帯電話でダウンロードできる商品を販売しており、貸金業ではない」としながらも「金融庁などから指導や指摘があればすぐに対応したい」と話していました。

ヤミ金融の問題に詳しい東京情報大学の堂下浩教授は、「『後払い現金化』は商品の売買という形をとっているが、実質的には金銭の貸し付けと回収という、貸金業を構成する2つの要素で成り立っている。また、利用者が受け取る現金と商品の代金の差を年利に換算すると法律で定められた上限を大幅に上回ることから、こうした商法は事実上のヤミ金融と考えられる」と指摘しています。

そのうえで「行政が具体的な手口や取り立ての実態を早急に把握したうえで、国民に注意を呼びかけていくことが必要だ」と話していました。

「後払い現金化」の業者が急増していることについて、金融庁は「売買の契約であっても実態からみて貸金業にあたる可能性は十分にあり、現在、手口や被害の状況について把握を進めている。今後は捜査当局とも連携して対応していきたい」とコメントしています。

そのうえで「目先の現金を得るため安易に手を出してしまうと、トラブルに巻き込まれるおそれがあるので注意してほしい」と話していました。

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