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日本銀行は、新型コロナウイルスパンデミック(世界的な大流行)対応の支援策縮小や資産買い入れの減速を市場の混乱を招かずに進めるため、他の主要中銀よりも目立たないアプローチを取っている。

  今週は日銀のほか、米連邦準備制度理事会FRB)や欧州中央銀行(ECB)など主要中銀が金融政策の会合を開く。日銀が上場投資信託ETF)の買い入れを大幅に減らし、社債購入も減っていることを踏まえると、日銀は幾つかの点で既に主要中銀に先んじている。

  日銀は3月にETFの買い入れ方針を変更。社債コマーシャルペーパー(CP)の買い入れ枠の縮小については、17日終了する決定会合で発表される可能性がある。

  FRBは、2013年の「テーパータントラム(市場のかんしゃく)」再来を避けるために前もって慎重に市場と対話し、政策予見性を高めるよう努めている。対照的に日銀は、物価目標が遠い中でまず行動を調整して市場にほのめかし、説明は後からというスタイルだ。

  黒田東彦日銀総裁のアプローチは、市場を混乱させずにより持続可能なコストで対処するための政策運営余地を最大化することにつながっている。

  第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、「日銀はそもそもテーパリング議論に関しては避けてきたし、必要ないとしてきた」と指摘。「ここまではうまくやったと言うこともできる」と述べた。

  黒田総裁は13年にデフレ脱却を目指し強力な金融緩和策を導入。この異次元緩和以降、日銀の資産は拡大し、経済規模を上回る水準に膨らんだものの、当初見られた積極的な姿勢は和らいでいる。

  日銀は20年4月、国債買い入れについて「年間約80兆円」の保有残高増のめどを撤廃した。それ以降買い入れ額はさらに減り、11月末までの日銀のデータによれば国債保有残高は今年減少傾向にある。  

  コロナ感染拡大による市場の混乱時に日銀によるETF購入は急増したものの、今年3月に年間約6兆円としてきた購入額の目安を削除した。社債購入も20年12月以降減少傾向をたどっている。

  黒田総裁は、日銀はテーパリングを行っているという見方を繰り返し強く否定している。これは他の主要国・地域とは異なり、国内のインフレ率が2%目標からはるか遠い状況にある中で、政策正常化への過程であるテーパリングは論ずるに値しないということを暗に示している。 10月の全国消費者物価指数(CPI)で生鮮食品を除くコアCPIは前年同月比0.1%上昇にすぎない。

  日銀の資産買い入れに対するより柔軟なアプローチは副作用の緩和につながっており、より長期にわたる買い入れを可能にしていることを日銀は示唆した。市場は日銀の説明を額面通り受け取っている訳ではないものの、日銀の戦略は市場を混乱させることなく続いている。

  TSロンバードのマクロ調査責任者、フライヤ・ビーミッシュ氏は、日銀は他の主要中銀よりも政策アプローチで柔軟性を備えていると分析する。「これにより密かな早期撤退が可能となった。対照的にFRBはテーパリングを加速する姿勢を示し、株式市場を混乱させないようコミュニケーションを取っている」と語った。

  結局のところ市場参加者は「行動は言葉より雄弁」であることに気付いている。

  元日銀理事で東京財団政策研究所の早川英男主席研究員は、日銀の政策は「言葉ではなくて行動の上で非常にクリアになっている」と指摘。「そういう意味ではテーパリングはとっくにやっている。去年の春はかなり増やしてそれで良かったが、それから国債を増やし続ける理由がないのですぐにやめてしまった。それで良いのではないか」と語った。

原題:Bank of Japan Tapers by Stealth First and Explains Later (抜粋)

#日銀#金融政策