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名古屋市の奥田恭正さん(65)は、マンション建設に反対する住民グループの代表を務めていた平成28年、現場監督を突き飛ばしたなどとして暴行の罪に問われましたが、刑事裁判で無罪が確定しました。

奥田さんは、警察が捜査の過程で集めた指紋やDNA型、顔写真について「無罪確定後も保管される理由はなく、プライバシー侵害だ」として国にデータの抹消などを求める訴えを起こしていました。

これに対し国側は「規則にもとづき犯罪捜査に資することを目的として管理・運用されている」として無罪となった人のデータも保管することは正当だと主張していました。

18日の判決で、名古屋地方裁判所西村修裁判長は「無罪となった場合、DNA型などのデータを保管するには、犯罪捜査に資するというだけでなく、余罪の存在や再犯のおそれなど具体的な必要性が示されなければならない」という判断を示しました。

そのうえで「原告に再犯などの可能性を認めるのは困難で、データを保管する必要はなくなった」と指摘して国にデータの抹消を命じました。

原告の弁護団によりますと、国に指紋やDNA型などの抹消を命じる判決は初めてとみられるということです。

警察庁は去年5月、参議院の委員会で答弁し、おととし末の段階で、指紋をおよそ1135万件、DNA型をおよそ141万件、写真をおよそ1170万件、保管していることを明らかにしています。

指紋やDNAの採取、それに顔写真のデータの保管などについては、国家公安委員会の規則のほか、警察庁の通達などで運用されています。

国家公安委員会の規則では、いずれのデータも抹消する要件として、対象者が死亡したとき、または、保管する必要がなくなったときとしています。

この「必要がなくなったとき」について、警察庁は国会で「保管する必要がなくなったかどうかは、個別具体の事案に即して判断する必要がある」などと答弁しています。

これについて名古屋地方裁判所は、18日の判決で「いかなる場合に抹消されるのかが甚だあいまいと言わざるをえない。『犯罪捜査に資すること』を保管の目的とすれば、『必要がなくなったとき』というのはほとんど想定できなくなり、運用次第では、抹消されるべき場合がほぼ存在しえなくなる」などと指摘しました。

裁判のあと原告の奥田恭正さんは、弁護団とともに名古屋市内で記者会見を開き「無罪となったのだからデータの保管についても、元に戻してほしいという思いだったので、非常にいい判決だったと思う」と述べました。

また國田武二郎弁護士は「指紋や顔写真、DNA型の各データを抹消せよと明確に判断されたのは日本で初めてで、画期的な判決だ。無罪になっても一度採取したものを保管し続けるというのは国民が常に監視されている社会であるともいえるので、各データの利用・保管について明確な根拠がある法律を作ってもらうなど、国民に安心感を与える設計を国に求めたい」と述べました。

警察庁は「判決内容を精査して、今後の対応を検討したい」とコメントしています。

判決について、憲法が専門の日本大学法学部の玉蟲由樹教授は「無罪が確定した人のDNA型を警察がその後も保有し続けるのは全く正当性がないので、そういった意味で常識的な判決だった」と指摘しました。

またDNA型をデータベース化することに根拠となる法律がないと指摘し「現在は詳しい手続きやどんな罪名だとDNA型を保管するのかなど決められていない状態だ。DNA型のデータベース化は憲法上の自由を制約することなのでまずは法律で定め、警察の行動をある程度制限していくことが重要だ」と話しました。

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