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海外で事業を展開する大企業などにとっては、海外で稼いだドルなどの外貨をより多くの円に換えることができるため、日本経済にとって「円安」は、「追い風」になるとされてきました。

SMBC日興証券が、旧東証1部に上場していた企業のうち今月12日までに決算を発表した891社のことし3月期の決算を分析したところ、消費の持ち直しや円安を背景に前の年度に比べて最終的な利益が増加した企業がおよそ7割に当たる631社に上りました。

トヨタ自動車三菱商事三井物産など、輸出に強みがある企業を中心に最終的な利益が過去最高となるケースが相次いでいます。

しかし、「円安」で得られるメリットは以前より期待できなくなっていると指摘されています。

日本企業は、長く続いた円高の局面の中で為替相場の影響を受けにくくするため生産拠点の海外移転を進めてきました。

日本政策投資銀行が毎年、大企業を中心に行っている調査によりますと、製造業の企業が設備投資した拠点のうち、海外拠点が占める割合は20年前の2002年は31.6%でしたが、去年は52%に増えています。

海外での生産比率が高まって日本からの輸出が増えず、輸出大国だった以前と比べて直接的な円安のメリットは薄れてきています。

また、国内で事業を展開するケースが多い中小企業にとっては「円安」が原材料価格を一段と押し上げ負担が増す形になっていて、日本商工会議所の先月の調査では、円安について「デメリットのほうが大きい」と回答した中小企業が53.3%と半数以上に上っています。

海外に拠点を持つ日本企業は、このところの「円安」で現地で雇用する従業員の人件費などが高騰し経営に影響が出ています。

都内のIT企業は、7年前にベトナムハノイに子会社をつくり、家計簿アプリなどの開発拠点にしています。

現地でベトナム人のエンジニアを採用し、ハノイの拠点ではおよそ10人が働いていて、開発拠点の運営費や人件費などは日本から「円」で送金し、現地通貨の「ドン」に交換されます。

しかし、円はアメリカのドルだけではなく、さまざまな通貨に対しても値下がりしていて、去年は1円=200ドン~210ドン台で主に取り引きされていましたが、先月以降、一段と円安が進み、今月頭には1円=173ドン台に下落しました。

このため、人件費やベトナムの拠点で使う設備費、オフィスの賃料などの運営費が去年よりおよそ20%上昇しています。

銀行に為替予約をして変動の影響を抑える方法もありましたが、予算が限られる中で手数料の負担が高くなるため、対策を講じることができなかったといいます。

このため、会社はことし計画していた現地での新卒採用の人数を減らすことを検討していますが、経済成長が続くベトナムでは各国の企業の間でITエンジニアを奪い合う状況が続いているため、このままでは海外の企業に採用力で負け、競争力低下につながるおそれがあると懸念しています。

スマートアイデアの江尻尚平社長は「ベトナム国内で物価が上がっているのでその分、従業員の給与を上げなければならないが、円安の影響が重なって非常に悩ましい状況だ。欧米の企業がどんどん進出してきているが、ドルが高くなる中で給与水準で競争していくのが難しくなってきている」と話しています。

マクロ経済が専門の日本政策投資銀行の宮永径経済調査室長は「円安によって日本への渡航や不動産投資を押し上げる効果が期待できるほか、海外でもうけたドルを円に換算してリターンを得るという構造が定着しているので、円安によって収益が増え全体としてみれば日本経済にとってプラスの効果がある。ただ、恩恵を受けるのは輸出・製造業などの大企業が中心で、経済全体でプラスだったとしても各企業や消費者に均等に恩恵が行き渡るわけでない。円安の恩恵が下請け企業に波及し、賃金の引き上げなどのプラスの影響をもたらすことが重要だ」と指摘しています。

一方で、宮永氏は「日本企業が海外への展開を進めて輸出基盤が前と比べて小さくなり、日本はかつてのような貿易黒字の国ではなくなっているので、円安のプラスの効果は年々縮小しているのも事実だ。日本企業は近年、M&Aを含めて海外への投資を増やしてきたが、円安になれば海外のモノを買う力も相対的に小さくなってしまう」としています。

そして、日本経済の先行きについては「コロナ渦を抜けて明るい兆しが出てくるかと思っていたところに、世界的なインフレと円安が重なって原材料価格の高騰が大きな波になり、企業活動において円安のマイナスの面が意識される機会が多くなっている。この円安水準は続く可能性があるので、高付加価値化を一段と進めて、利益率を下げない工夫をするなど、単なるコストダウン以外の対応も考えなければいけない局面がきている」と話しています。

#アベノミクス#リフレ#金融政策#円安政